先行きが読めないカナダ生活
ずっと心配されていたエアカナダのストが回避されました
4年間で30%の昇給とBenefitの向上を条件に労使が闘っていたようですが、合意内容は発表されていません
ストが回避できたということは、少なくとも納得できる内容で落ち着いたのだろうとは推測しています
またカナダとは関係ありませんが、アメリカBoeing社もストを予定しているようです
ストは労働者の権利なので、労働条件が折り合えないならストに入ることは仕方のないことかなと思っています
何より最近の北米におけるインフレの体感は数字以上に大きく、給料が上がらないと同レベルの生活が維持し難いという風に感じることは同じ北米に住んでいる私には容易に想像できます
なので、給与を上げて欲しいという気持ちになるのは自然と言えるでしょう
反対に組合等で守られていない人達は自分で給与交渉するか、生活レベルを下げるか、ダブルワークをするしかない訳です
しかし、カナダは今年高い失業率を叩き出していますから、これからダブルワークをして生活レベルを維持することも困難になるかもしれません
また、各社がストに応じて社員の賃金を上げるとします
賃金=人件費ですから、会社のコストが上がる訳です
会社のコストが上がる状態で利益を維持もしくは向上させる場合、取れる策の代表は「他のコストカットを試みるか」「売値価格を上げるか」です
コスト削減の努力をしても利益が上がらないなら、値段を上げるしかない
結局消費者に返って来て、インフレは進む
つまり、悪循環に陥る可能性がある訳です
今のカナダを見ているとこの悪循環から好循環にひっくり返すことってできるのかな?と不安になることが多々あります
今回はカナダに住んでみて感じる「この先どうなるんや?」という不安のお話です
不動産高と家賃高
カナダの悪循環の原因の一つは「不動産高(家賃高)」
カナダの不動産高が始まったのは最近の話ではありません
昔は「投資移民」という移民カテゴリーがあり、永住権目当てで多くの外国人(特に中国人)が不動産投資をした経緯があり、多くの外国人がカナダ(特に都市部)の不動産を購入したことで家の価格が上がった経緯もあります
政策として実施されていたことで、投資をした人は政府が用意した機会に乗じただけなのですが、バンクーバーに住んでいると大きな声では言わないものの、未だにその時代に対する恨み節に似た気持ちを吐き出す人もチラホラ見かけます
また日本とは違って、カナダは家の価格が落ち難いという傾向もまたカナダの不動産投資が収まらない理由の一つと言っていいでしょう
日本は新築の家が好まれることもあり、余程その土地の地価が上がらない限り、築年数が上がれば上がるほど家の価値/価格は下がる傾向が強いですが、カナダの場合、継続的に移民を受け入れていることもあり需要が落ちないこと、そしてRenovationして古い家も再活用する文化が下地としてあることから、既存の家の価格は落ち難いどころか、益々上がる傾向にあると思います
何十年も前に建てられた家がバンクーバーでは1億円越えなんて、ザラにある話です
また移民だけではなく、留学生やtemporary worker等も年々入国して来ますから、その人達も住む場所が必要で、不動産投資できる人は家を買って、人に間貸しする賃料でローンを返すという人もカナダでは沢山見かけます
更にそれをビジネスにする人もいます
簡単に言うとtemporary residentに貸す前提、もしくはAirbnbのように旅行者も含む短期の間貸しとして部屋を貸す前提で家を買って、テナントが払う賃料でローンを払うという方法
私が今まで借りたシェアハウスのオーナーはほぼ全員がこの方法を取ってました
特にAirbnbやVRBO等は個人投資家だけではなくディベロッパーまで参画していることもあり、BC州では不動産購入が相次いで、州政府が規制に入るレベル
「いつかカナダの不動産バブルが弾けるのでは?」というような声も聞かれますが、純粋にカナダで家を買いたいと思っている永住権持ちの人もまだまだ沢山いるし、これからもカナダ永住権目当て、カナダ留学/就労目当てで入国する外国人は後をたたないでしょうから、バブルが弾けるレベルで需要が落ちることは想像し難いにように感じます
一時は中国国内のバブルが弾けて、海外不動産投資をしていた物件を中国人が急に売りに回してカナダの不動産バブルも弾けるのでは?という噂も耳にしましたが、海外投資先として人気のカナダやオーストラリアは需要が落ちないので、不動産を手放す必要がないというところでしょうか、、、
それどころかバンクーバー等では高くても入居を希望してくれる人がいる状況なので、大家は家賃を下げる必要がない
特に今は政策金利を上げている状況なので、大家によっては高い利率のローンを返さなければならなくなっている人もいて、大家が損したくないという発想になれば借りている人にその分を還元して欲しい(家賃を上げたい)という方向に考えがちと言ってもいいでしょう
この不動産高と家賃高に対する策としてあげられるのが「需要を下げること」と「供給を増やすこと」です
来年の選挙の争点にもなっているカナダ住宅問題
政府によって建てられるaffordable housingの増加が叫ばれており、政府も必死に増やそうとはしていますが、そんなに簡単に増えないのがカナダあるある
(建設業に関わる移民を優先しているのもこの関係から)
残念ながら、供給は魔法のように増えないことから、需要を減らすしかないということで、最近留学生の数に上限を加えたりしている訳です
(とは言え、留学生を減らしたところで雀の涙でしかなく、単なる選挙向けの政治的アピールレベルにしか効果はないかもしれません、、、)
ちなみに痺れを切らした若い世代が家庭を持つタイミングでまだ比較的手に届きやすい不動産価格帯の州に移動するケースと都市部で永住権が取り辛くなってきたことから一部のtemporary residentsが都市移動や州移動をしていることで若干都市部にも需要が減る流れは生まれつつあるとは言えます
しかし、こういう都市部は留学生やワーホリ等の短期労働者に好まれる傾向があるので、どこまで需要が下がるかは未知数ですが、、、
人件費高
カナダの悪循環のもう一つの要素は上でも述べている「人件費」
上にも書いた通り、家賃という省けないコストが上がっている以上、収入も上がらないと生活レベルは保てない現実があります
なので、組合が賃上げ要求を盾にストをするという流れは容易に想像できます
近年カナダの最低賃金は一部の州を除いて上がり続けていて、BC州は2015年から毎年上がり続け、2024年6月には17.40ドルに上昇
同じくオンタリオ州も2020年から上がり続けて、2023年に16.55ドルに
これらの州の不動産価格や家賃価格は驚くほど上昇しているので、州が対策として最低賃金を上げるのも無理はないと言えます
しかし、経営側から見れば人件費高騰という更なる固定費の増加になるという現実も
主に最近賃金で雇用しているケースが多いスモールビジネスにとっては痛い固定費の増加と言えるでしょう
以下の記事でも触れた通り、カナダでは仕事を見つけるのが難しくなって来ています
最低賃金上昇が失業率に直結してしまうのはやはり雇用主からすれば近年の家賃高に加えて人件費高を強いられれば、経営維持のためにシフトを削ったり、経験者を残して人を減らす等の対策を取らざるを得ないから、、、
結果、家賃や物価は高いのに仕事を得られない人がどんどん増えているという結果に
経営側から見ると人件費を減らさないと経営が難しい状況も理解できるし、労働者側から見ると今の状況下で生活が苦しくなるのも理解できるし、非常に困った状況に陥っているように感じます
止まらない悪循環
上であげたエアカナダのように組合があって、昇給交渉に成功する人達はまだ良いんですが、こんなインフレ状況でも給与が上がらない人や仕事が見つからない人がいる訳です
結果、、、
家賃/物価高 & 給与上がらない/仕事見つからない
→消費を控える
→企業や個人事業主の収益減る
→固定費を減らす対策をする
→給与上がらない/Lay offする/仕事見つからない
もしくは
家賃/物価高 & 給与上がらない/仕事見つからない
→消費を控える
→企業や個人事業主の収益減る
→値上げする
→もっと消費控える
という悪循環
もし今後も物価が上がるようなことになれば給与が上がっている人でさえまた生活が苦しくなることに、、、
9月のTemporary Foreign Worker Program の制度変更の記者会見で移民大臣が口にしていた「depressionを避ける為」という言葉
すでにカナダ国内にいる人はカナダ人だろうが、temporary residentだろうが仕事を見つけ難い状況は変わりない訳であり、このままLMIAがまともに機能していない状態で外国人労働者を受け入れ続ければ状況の悪循環は更に悪化することは明白
それがdepressionに繋がり得るという見方はまともであり、そこにメスを入れるのはまともな対策に見えます
現行カナダ政府は今秋に更なる制度変更を発表すると言っていますから、ポスグラの変更や25年以降の永住権承認者数等にも切り込んでくると予想されます
ここまで悪化している状況で果たして効果は出るのか、、、読めないところです
望まれる対策
次の国政選挙で争点となっている住宅問題
これの解決が一番急務だと思います
バンクーバーの不動産屋が実はディベロッパーが物件を隠し持っているという話をポストしているので、これが本当の話で、こういう物件が流れ込めば少しは価格が下がるかもですね
このポストが事実なのであれば、ディベロッパーがまだ売り出さずに隠し持っている物件等を速やかに市場に出して供給を上げることは大切
こういうことは政治的に切り込めることだと思うので、やってもらいたいなと思います
あとは供給に対する需要調整も重要
私は自分自身temporary residentで永住権も視野に入れていますが、カナダ国内の情勢が崩してまで自分達外国人を入れるべきとは思っていません
カナダも少子化が続いているので、移民政策を引き締めがちなconservative partyでさえ移民を継続的に入れる必要があると分かっている
重要なのはバランスです
国内情勢を無視して外国人を入れたところで、今のように経済的に不安定にもなるし、その環境が人と人を分断してしまうことも
(アメリカのトランプ支持者が良い例です、、、)
少なくとも今のカナダ政府の政策(留学生数の調整、外国人労働者は失業率の高いエリアで制限、カナダ国内で必要な職種には制限を掛けない等)は理に適っていると思うので、引き続き理に適ってバランスの取れた政策をお願いして、移民に寛容な国の雰囲気を維持していただきたいなと思ってます
自分の現状と独り言
私の場合、現状は仕事があるだけありがたいものの、QOLは底辺に近い状態
永住権狙いでこの環境を受け入れたのは自分自身の選択なので、そこは文句はないのですが、この職業をしている限り、どこかで年収も頭打ちになる(その頭打ちを越えようとすると、ある一定下の条件の雇用環境になる)ことも見えていることもあり、永住権がもし取れたとしても将来は不透明だなと感じています
今は「やりたかった職業だし、日本でこの年齢からこの職業に就くのは難しいから」という点で納得はしていますが、明るい未来を想像できているかと聞かれると答えに窮する状況です
もっと具体的な話をすると
「今のカナダの家賃相場で一人暮らししようとすると給与の半分以上を家賃として支払うことになる。今のカナダにいる限りQuality of Lifeを優先して将来の蓄えを諦めるか、将来の蓄えを優先してQuality of Lifeを諦めるのかの二択」
という現実が重くのしかかっているという実感があります
実はこの話題、最近カナダにいる同世代の永住権を持つ独身女性と話をするとよく持ち上がる話題なんですよね
QOL向上の解決策として、パートナーを作るという案を上げる人を多く見かけるのだが、私ぐらいの年齢になるとパートナーを作ることで逆に苦労している人も多く見るので、「この国でまともな生活をするため」にパートナーを得ることで必ずしも幸せになれるかは未知数だなと思ったりもする訳です
逆にこれぐらい厳しい環境だからこそ、永住権への執着が薄れたことは本当に良かったなとは思っていますが、今の目下の悩みはどこまで頑張って、どこで諦めるのかという具体的な線引きだったりします
一番ありがたいのは永住権も取れて、カナダで明るい未来が見えることなんですが、急に状況の好転はあまり期待もできない状況です
この時代に渡加したのも自分の運
国の情勢にも自分の未来にも不安はありますが、様子見しながらやっていきつつ、どこで見極めするかの線引きも考えていきたいと思います
全くオチのない暗い話になりましたが、少なくともカナダはまだアメリカのような分断までには至ってないし、景気が持ち直す可能性だってゼロではないので、あまり悲観し過ぎず、期待し過ぎず、ひとまず年内は過ごしていこうと思います
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