2025-2027カナダ永住権承認規模の発表
10月24日、カナダ政府はついに2025〜2027年のImmigration Levelを発表しました
今年になってから、Study PermitやTemporary Foreign Worker Program、Post Graduate Work Permit等いろいろな滞在ステイタスの要件改定を行っており、変更の度に2025年以降の永住権承認数を減らす示唆を繰り返して来ました
焦らしに焦らして、やっと発表されました
カナダ在住の方、これからカナダ渡航予定の方、記者会見見られましたでしょうか?関連公式サイト確認されましたでしょうか?
正直もうお腹いっぱいと思うぐらいご丁寧に説明されています
計画変更の意図や数字の裏付けを数字を元に説明して、公式でここまで発表していることに個人的には感動しました
現カナダ政府の会見も好印象を受けましたが、上記に貼ったこれらの公式発表を見て、現政権のみならず、政府事務方のクオリティの良さを感じました
今回は私のような素人オタクが分析する必要はなく、政府から細かく説明がなされてますから、私は自分が気になった部分のみをピックアップして、自分なりの思いを語ってみようと思います
ちなみに度々お伝えしていますが、ご自身の永住権取得に関わるご相談は政府公認の移民コンサルタントもしくは移民弁護士の方にお願いします
発表の中の気になった点
2024 Annual Report to Parliament on Immigrationの説明が丁寧
ビックリするレベルで丁寧に説明されていました
今回の変更にはよくニュースでも紹介されている「住宅供給や医療システムに人口増加が追いついていない」とかだけではなく、今後の現役世代の定年等も含めて計画された数字と分かりました
また、現政権(特に現移民大臣)がカナダで起こっている問題の責任を移民に押し付けるような発言をするリポーターとかに厳しく反論する通り、このAnnual Reportにもカナダは移民で成り立っている国であるという政権の意思を表す箇所がちょこちょこあって、好感度が高いです
また、カナダにいて感じる「母国での経験・資格がカナダで活かされていない」という現実も政権が把握できていることが分かったこともこのレポートを読んで良かったと思える点ですね
簡単には解決できないかもしれないですが、気付かない振りではなく、きちんと気づいて対応を進めている報告があったことは安心に繋がりました
あと、最近Francophone immigrationが優先されている部分にも触れているので、最近のカナダの永住権傾向や国としての動向をきちんと把握したい人は長いけれども一度目を通すことを強くお勧めしたいレポートでした
昨年発表計画からのEconomy Class承認数変更概要
公式ページに以下の通り書かれている通り、2023年に発表された2025、2026年のeconomy classでの永住権承認数が削減されます
2025年は以前の計画より21%減、2026年は24%減となりました
「減った!減った!」と伝えられているので、めちゃくちゃ減らされているように聞こえていましたが、減少幅は実際30%にも届かないレベルなんだなと感じました
コロナ前の2019年の341,000名の永住権承認数なので、2025年はそのときに比べても多い人数の承認者数となり、やはり今後の労働人口維持を見据えての計画なんだなという見方ができます
2019年の承認者数は以下で確認できます
じゃあ、なぜ今「カナダの永住権取得が難しくなった」と言われるかというと、永住権を狙う人が増えたからに他なりません
もっと簡単に言うと「分子も増えたが、分母が増え過ぎた」ということです
2024 annual reportの中にも図解がありますが、特に22年と23年に異常に増えています
IMP (International Mobility Program)にはワーホリ、Spouse Open Work Permit、PGWPも含みますから、過去とは比べ物にならないぐらい分母が増えていることを実感できる図です
ワーホリは二国間協定ですから、カナダの都合だけでは変えられません
なので、それ以外のTFWP、PGWPやSpouse Open Work Permitに変更が加えられたのはなるほどと思えます
Temporary resident数が計画の中に新設
上記にも書いたように異常と表現されるぐらいにTemporary residentが増えているのを受けてか、Annual Report to Parliament on Immigrationの中にtemporary residentsの数が計画されることになりました
今年になって発表されてきた数々の政策変更はこの数字に近づける為ということでしょう
またご丁寧にそれぞれの都市に何人の人がカナダのtemporary residentとして入国し、また何人の人がTemporary residentではなくなる(永住権を取る、もしくは帰国する)かまで数字化されています
カナダ政府は今年になって向こう3年間でカナダのtemporary resident人口を5〜7%削減することを公言していますから、その計画を数字で示すものですね
Outflowがtemporary residentじゃなくなる人数
この中に永住権取得者も含まれるので、2025年については1,262,801-395,000=867,801名がカナダから離れる想定を政府がしていることになります
26年の同じ想定者数は445,622名ですから、いかに25年にビザが切れる人の永住権取得が難しい状況かが見て取れると思います
ただし、25年にワーホリビザが切れる人がRO(第二ワーホリ)を取る、Study Permit保持者がワーホリを取得する等Outflow想定者がInflowに流れることも想定しての数字なので、上記の人数が必ずカナダを離れる訳ではないですし、25年にビザが切れる人全員が永住権が取れないという訳ではないという理解です
(つまり、今とは別の手段で就労Statusが保てれば可能性があるという理解)
PGWPの制度発表の前、「在学生は救ってあげてほしい」という声をXでよく見ましたし、実際2024年秋現在の在学生は救われた形です
しかし、政府はtemporary resident人口5〜7%削減を公言していますから、PGWP在学生を守った皺寄せをTemporary Foreign Worker Programがかぶる結果となったと私は理解しています
恐らく学校関係者や留学ビジネス関係者はPGWPを優先して欲しかったでしょうし、Closed work permit保持者を抱えるビジネスオーナーはTFWPを優先して欲しかったはず
カナダのTFWPは国連からModern slaveryと称されるほどひどい労働環境を強いられているところもあり、政府としても対策が急務でした
私のような素人が見ても今のLMIAの制度は当初の目的である「カナダ人/永住権保持者の雇用を守る」という目的は果たせていないことは明白でしたし、安価な労働力として利用されていると見られてもおかしくない状況でしたから、PGWP取得予定だった在学生を対象外にするより、ここでTFWPにテコ入れをしようと考えたのだろうという推測です
PGWP生は少なくともカナダのpost secondary education以上を取っている人達ですから、Skilled workerとして活躍する期待も持てますし、すでにカナダ国内にいますから外国からわざわざ労働者を入れるより、PGWP生を救おうと考えたのだろうなと思います
もちろん学生やワーホリ等のステイタスでカナダにいて、そこからLMIA→closed work permit取得想定で動いていた人からすれば、想定が狂ってしまうので、ショックが大きいと思いますが、カナダ政府としては現状維持はできず対策する上で「greater good」の観点からPGWP取得予定だった在学生を救ったんだろうと推測しています
また今日Vancouver Community CollegeでいくつかのHositality ProgramがPGWPの対象になるというポストを見ました
正直これも驚きません。
なぜならバンクーバーのHospitality Industryには多くのClosed Work Permitがおり、今秋発表されたTemporary Foreign Worker Programの制度変更によりそれらの労働者が減ってくることが予想されるからです
せっかく厳しくしたTFWPを早速緩和するぐらいなら、専門課程の学校を卒業した人にその後を担ってもらえばいいという考えではないかと推測しています
教育は州の管轄なので、州に割り当てられたStudy Permit発行数内で州がうまく帳尻を合わせればよい訳で、国としても今回発表したImmigration Planを超えない範囲で州が管理できるのであれば、そこまで目くじらを立てない可能性は高いかなというのが私の想像です
この点を見ても、これから数年はClosed Work Permit取得を期待したカナダ滞在プランは個人的には危険なような気がします
カナダ政府が記者会見でも言っていますが、TFWP制限の理由の一つにカナダ人および永住権保持者の雇用促進があると思います
賃金の安い外国人を安易に選ぶのではなく、カナダ人や永住権保持者を雇って欲しい、育ててほしい
それが明確にカナダ政府が出しているメッセージです
カナダで働いている人からは「カナダ人より外国人の方がしっかり働くから外国人を雇いたいと雇用主が思うのは当然」という声を耳にします
私も個人的にはその気持ちはよく分かります
しかし、逆に「使い物にならなかったら辞めされられる(生きていく金がねぇ!)」ぐらいの危機感のある今のようなタイミングこそ、カナダ人にもきっちり働いてもらう習慣をつけるチャンスとも言えます
実際、私のカレッジの先生は生まれも育ちもカナダですが、働く上での守るべき重要なポイントとして教えられたのは日本とほぼ変わらない内容でした
始業時間に到着ではなく仕事が始められる状態でいること
メモを取ること
同じ失敗を繰り返さないように工夫すること等
思わず「ここは日本か?」とさえ思った記憶があります
つまり、昔はカナダでも「きちんと働く文化」の下地はあったのかな?と
安くてもきちんと働いてくれる外国人の存在がカナダ人を怠けさせてしまった可能性もあると思うので、政府がこの機会を利用してカナダ人を雇って育ててあげてほしいと思うのは私としては納得です
それで「アイツらみたいにちゃんと働くなんてやってらんねーよ」となればそれは個人の責任
政府としてカナダ人雇用の為にできる対策はしたとは言えるかなと思います
私のような永住権を視野に入れてカナダに滞在しているTemporary residentとしては厳しい内容ばかりですが、変更の内容はきちんと説明されているので、納得する他ないなというのが本音です
永住権枠の内訳
2025年~2027年におけるカナダ永住権承認予定者数内訳で、一番衝撃が大きかったのは州推薦枠(Provincial Nominee Program)の半減ではないでしょうか
2023年に発表された計画案では2025年にPNPで承認される予定だったのは120,000名だったので、今回の発表の55,000は半数以下となります
同じく2023年に発表された計画案でFederal High Skilledと分類された117,500名は今回の発表でFederal Economic Priorities(優先カテゴリー)とIn- Canada Focusに分かれ、それぞれ41,700名、82,980名となり合計は124,680名で増えていることになります
これはどういうことかと私なりの理解を説明すると、、、
優先カテゴリーの人は今カナダ国外にいてもスコアによっては歓迎するよ
優先カテゴリー以外の人は今カナダ国内にいる人にFocusしたいよ
ということかなと
また、実は多くの州が国と優先職種が被っているケースがある(特に医療従事者やTrade等)ので、それらの人達はFederal Economic Prioritiesに集約ということではないかなと推測しています
(あくまで推測であり、どちらかと言えば希望でもあります)
正直なところ、PNP枠が減り過ぎているので、優先職種をPNP枠で永住権を取らせると優先職種以外は手詰まりになるので、何卒ここは私の理解通り枠の利用をお願いしたいなとは思っています
とは言え、実質Ecconomy Classで23%減ですから、Federal Epress Entryのスコア足切りは高くなることは予想できます
また、PNP枠が減っていることもあり、PNP加点のみを当てにしていた人は加点を取れないままビザ期限を迎えるようなことも起こりそうです
(→まぁ、私みたいな人ですよね、、、はい、覚悟してます)
また、PNPの配分がStudy Permit同様、州の人口比で決まるのか、そうではないのか?も非常に注目されるところです
特に最近一部の保守党所属の知事がいる州がAsylumの受け入れで国と揉めています
Asylum受け入れを拒否したいがためにした言い訳を理由にこれらの州のPNPの配分数が減らなければいいのですが、、、
どの州がどれぐらいの配分になるかは全然想像できないこともあり、各州の配分には注目していこうと思っています
ざっくりですが、今回発表された2024 Annual Report to Parliament on Immirationに目を通してみての、自分なりのまとめを書いてみました
あえて細かくは書いてないですが、どういうカテゴリーであれば今でも永住権が取りやすいか分かる内容になっていますから、どうしても永住権を取りたい!という方は読み込んでみられることをお勧めします
何度も書いていますが、やはり永住権の難易度が上がっている理由はひとえに「永住権を狙っているTemporary residentが多過ぎる」ことです
実際永住権承認予定者数が全体的に激減している訳ではありませんから、鍵になるのは「自分の持っているWork Permitの期限内に永住権が承認されるか」もしくは「永住権を待つ為に新たなTemporary Residentの合法就労Statusを獲得できるか」が運命の分かれ目になるかなと思います
事実上、一番難しいのが「永住権を待つ為に新たなTemporary Residentの合法就労Statusを獲得できるか」になるのかなと思います
私自身、すでにそこまでカナダ永住権の取得に血眼にはなっていないので、「どこまで頑張るかなー」ぐらいに思っていますが、永住権取得の重要度が高い人は今のビザが切れた後にどう対応できるかを政府公認の移民コンサル等と話し合っておくといいかもしれませんね
また、相談する前に自分なりにきちんと政府公式サイトを確認して、どういう手段が取れそうかも把握しておきましょう
人の言いなりになるのではなく、自分の選択の舵は自分で取る意思を持ち、専門的な部分のみプロの助言を借りるようにしたいものです
また2025年にはカナダ国政選挙を予定しています
今回の政府発表の後の野党 保守党党首の会見見られましたでしょうか?
与党を強く批判していますが、対策は「住宅建設と医療システムの状況に紐づける」とほぼ与党と同じことを言っています
しかし万が一政権交代になった場合は与党案を批判する為のアピールとして2026年以降の数字を厳しい方向に変更する可能性もありますから、その点は覚悟しながら政局を見守りましょう
私はPNP狙いの一人で、州プログラムの内容を見る限り今回の変更は非常に不利な訳ですが、変わるものは仕方ないので、自分なりの身の振り方も含めて検討していこうと思っています
今、カナダ国内で永住権狙いで暗い気持ちになっている人もいると思いますが、本当に方法によっては永住権が近づく人もいますから、もう一度2024 Annual Report to Parliament on Immirationを読んでみてくださいね