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ノトコレブック My Curations🍊

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「文学フリマ東京」(2023年5月21日開催)にて出品の『noter Collection Book(ノトコレブック)』のうち、私がお迎えした作品を収録させていただきました。
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#ミムコさん

端っこに灯るあかり【ノトコレ応募版】

 私は二十一の時、前のめりで片思いをしていた。朝起きてから眠るまで、ずーっと好きな人のことを考えては悶々としていた。  最近、なぜか思い出す。その好きな人のことではなくて、好きな人の親友のことを。   その日は、炉端焼き屋の片隅で、シシャモを一心に焼いていた。お腹の弾力を箸の先っぽで心ゆくまで確認しながらも、頭の中では好きな人のことでいっぱいだった。今後、好きな人のことはミヤモトと呼ぶ。 「おう。待たせたね」  そう言いながらドシンと横に座ったのは、セナ君だった。ミヤモト

パーフェクトレモン 《ミムコさんノトコレ応募 フィクション作品》

「お、塩レモン」  冷蔵庫に顔を突っ込んだ夫が嬉しそうに言う。 「国産レモン売ってたからね」  ふふんと誇らしげに答えると 「パーフェクトレモン」  夫が、塩レモンのガラス容器を持ち上げて言った。 「あのね、レモンって完璧なのよ」  力強くそう言われてもピンと来ない。 「じゃあ聞くけど、レモンでホラーとか考えられる? 爽やかでしかないでしょう?」  いやいや爽やかなんてたくさんありますよ、おろしたてのスニーカーとか、ラムネとか。  そういう反論を、一切受け付けないのがモナミ

旅行先の一杯【短編小説】

 天井近くまで張られた巨大なガラスの窓辺には、二人がけのソファーとテーブルが均等に並んでいた。昼間は賑わっている場所も、早朝の五時五十分という時間に、人の気配は一切感じられない。  有名な老舗旅館のロビーは、華美すぎない調度品が設置されていて、穏やかに過ごせる空間が演出されている。知る人が見ればわかるであろう豪華な品も、深みを増した木造の旅館にとてもよく馴染んでいる。  歴史の重厚感を肌で浴びながら、私は座る面が冷えたソファーに腰を下ろした。手には携帯電話と小銭入れ、それに温

小町日記「ねことおむすび」ノトコレ版

ミムコさんのノトコレブック申し込み用に 以前書いた小さなお話を少し改稿しました。 主人公、小町(こまち)さんの 日記のような物語集の中のひとつのお話、という イメージにしました。 これから、また小町さんのお話を 増やして行けたらいいなあなんて思っています。 🍙 小町日記「ねことおむすび」 登場人物  小町(こまち) 19歳 大学一年生  ママ      小町の母親  オセロ     のら猫  初恋はジブリ映画「猫の恩返し」のバロンだった。生まれて初めて「かっこいい

フルーツサンドは、おやつですか【ノトコレ応募用短編小説】

「翔ちゃん、別れよう」  ひとつ年上の彼女、莉子に突然別れを告げられたのは、文化祭の最終日。莉子にとっては、高校最後の文化祭だった。 「え、なんて言った?」 「だから、別れようって言ったの。今までありがと」  莉子の言葉の意味が理解できない。いや、言葉の意味は分かっている。だが、頭がうまく言葉を処理してくれない。 「なに、嫌なの?」  口をあんぐりと開けたきりの俺を、莉子は横目で睨みつける。 「そりゃ、嫌だ……」と言いかけたけが、「いや、わかった」と言って本心を飲み込んだ。