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『遺影の写真を、撮ってほしいの。』 突如入った母からの連絡に、しばらく連絡を取っていなかったバツの悪さと共に、淡々と書かれた一文に心が冷え切るような感覚がした。 母が遺影の撮影を依頼したのは、きっと私がフォトグラファーだからだろう。全国どこでも、依頼があれば駆けつけるライフスタイルから、実家に顔を出すのはおろか、連絡すらおざなりになっていた矢先のことだ。 3年前、父が亡くなった。その葬式以来、実家に足が向かなくなっていたのは事実だった。 父の容態が良くないと聞
白だ。どこもかしこも白だ。 見渡す限りどこまでも白が広がるこの空間には影すらもなく、壁と天井の区別もつかない。当然足元も真っ白で、僕が寝かされていたベッドはまるで宙に浮かんでいるようかのようだ。立ち上がったら落ちるのではと不安になってベッドから足だけをそろりと下ろしてみると、素足の爪先はすぐに固い感触とぶつかった。どうやら落ちる心配はないらしい。ゆっくりと立ち上がって、さてこれからどうするかと考えた始めたときだった。 「お目覚めですか」 背後からの声に振り返ると、確かに
ミムコさんのノトコレブック申し込み用に 以前書いた小さなお話を少し改稿しました。 主人公、小町(こまち)さんの 日記のような物語集の中のひとつのお話、という イメージにしました。 これから、また小町さんのお話を 増やして行けたらいいなあなんて思っています。 🍙 小町日記「ねことおむすび」 登場人物 小町(こまち) 19歳 大学一年生 ママ 小町の母親 オセロ のら猫 初恋はジブリ映画「猫の恩返し」のバロンだった。生まれて初めて「かっこいい