テキトーを重視して─────────────

⚠ピンポンパンポーン
初めに、この物語はとてつもなく汚い話となっております。苦手な方はブラウザバックをオススメします。
また、ご飯前・ご飯中などに見るのは辞めたほうがいいです。
トイレ前・トイレ中・トイレを済ました後に見るのをオススメします。
ここまで読んでいて、ホントに見てもいいよ~という寛容な方は、どうぞ最後までご閲覧ください。⚠

※約8600文字あるため、トイレ前なら漏らさないよう注意し、トイレ中なら便を出しすぎてトイレを詰まらせないよう気を付けてください


便秘に困っている主人公
そんな中現れた変な妖精にささやかれ、サイコパスだけどお金持ちな友達寸也斗と共に、便秘に迫る!
物語である。
……多分。


自己紹介

 俺は昴。高校を二回留年しただけの、ただの高校三年生だ。
そんな俺には今、困っていることがある。
それは……便秘だ。
なにを大げさなと思うかもしれない。
だが、本当に辛いのだ。

どれだけ気持ちよく便をしたとしても、お腹がスッキリせず、モヤモヤが残ったまま。おかげでストレスもたまる。
また、お腹が痛く、出た後もおしりが痛く、常にどこかが痛い状態なのだ。
しんどいったらありゃしない。

そんなとき、俺の前に突然現れた妖精がいた。

「君は、便秘を治したいの?」

あれは、今日の11時頃、俺がトイレに今すぐ篭りたいときだったかな。

トイレの扉を開けると、便器がキラキラと光り出して、夢かと瞼をこすっているうちに黄色い髪をお団子ヘアーにした小さな女の子が出たのだ。

「ぎゃーっ、出た~!」

うちの家賃はそこまで高くなく、でも、事故物件の値段よりは高かった。
だから、出る方ではないんだと思う。
でも現に……。

「出たとは失礼ね!私はトイレの精霊、トレージョよ」

居るのだ、目の前に。
俺は妖精とかの類はあまり信じていないのだが、目の前にいるのだから信じるしかない。

「君は、便秘を治したいのよね?」

確認するように、便秘の精は言った。

「治して、くれるのか?」

俺は聞いた。

「さぁね。結果は君の努力次第よ。そんなことより、治したいのよね?」

便秘の精は圧をかけてくる。

「いや、本当に治してくれるのか?」

俺は聞く。

「な・お・し・た・い・の・よ・ね?」

なんとも言えない圧が漂う。

「だから、本当に治してくれるのか?」

俺は再び聞く。

「な・お・し・た・い・の・よ・ね?」

なんだよ、話聞かないチュートリアルかよ。
なら、断ってもまた圧かけてくるんじゃ?
好奇心が勝った。

「いや、別に」

便秘の精はスゥーッと消えかけていく。

「嘘嘘嘘嘘!治したいです!」
「本当に?」
「ハイ!」
「じゃあ、土下座して」
「ハイ!」

……反射で言っちゃったけど、土下座?
トイレで、土下座?

「はやく」
「ひぃっ、ハイィィ」

俺は言われたとおりに土下座した。

「そのままで聞いててね。便秘を君は治したいんでしょ?便秘に関して私が手を貸すことは禁じられてるから、すぐにってわけにはいかないんだけど、アドバイスはできるから、困ったら呼んでね」

なんだよ、思わせぶりかよ!俺は土下座したまま聞いていたが、どうやら、すぐ便秘が治るわけでは無さそうだ。

「じゃあまず、便秘について知るのよ。それじゃ、私は帰るわね」

便秘の精は今度こそ、スゥーッと消えていった。
……なんだったんだ、今の。
便秘について知れって言ってたよな。
ちょっと調べてみるか?
そう思っていると、尿意を思い出した。

「やっばっ、漏れる漏れる!」

””ジャー””

便秘になる原因

 ということだ。
まずは、便秘の原因を探ってみようと思う。

「パッソコン!」

パッソコンは俺が何十万何百万かけてかったパソコンで、

「ツーン」

プライドが高く、

「ジュース買って来たぞ!」
「それ、私のよね?くれるのよね?」

がめつくて、
「やるから検索させてくれねーか?」
「しょうがないわね!」

お菓子やジュースが無いとやる気を出してくれない、なんとも人間らしいパソコンだ。

一応♀らしく、
「それより寸也斗君はぁ~?」

俺の友達、寸也斗に恋している。

寸也斗は顔良し、頭よし、運動神経よし、お金持ちと、ハイスペック男子なのだが、実はサイコパスだったりと、ちょくちょくおかしな面が見られる。

「はいはい。調べ物が終わったら遊びに誘いますよ~と」

俺はパッソコンで『便秘 原因』と調べた。
あ、引っかかった。

水分はきちんととってるし、ご飯もちゃんと食べてる。
ストレスは便秘が無かったらほとんどないし、尿意は我慢してない。
加齢は……ないと思うが、運動不足は当てはまるかもしれない。
女性ホルモンはない。絶対に、無い。

「女装好きなくせに?」
「好きじゃねーよ!」
「照れちゃって♡」

今、ストレスが溜まったのを感じた。これもパッソコンのせいだからな!

「でも意外ねー。あんたが便秘に悩まされているなんて。加齢のせいだと思うけど、寸也斗君は元気そうだし……」

は?
「お前、寸也斗に連絡取ったのか?」
「うん、今から昴んちしゅうごー♪って、寸也斗君に送っといた」
「お前……プライバシーってのはないのか!」
「昴くん、プライバシーなんてむじゅかしいことばつかっちゃってもだいじょうぶでちゅかー?あたまいたくならないでちゅかー?」
「うっぜー……」

全く、このパソコンにはやられてばっかりだ。
俺が頭を悩ませていると、家のチャイムが鳴った。
寸也斗が来たのだ。来るの速くね?

「はぁーい♡」

パッソコンは、自分が出るわけでもないのに返事をしている。
その後、ガチャリと扉の開く音。

「お邪魔しまーす」

寸也斗、お前、勝手に……。
俺は顔をしかめる。

「まさか合鍵作ったのか?」

俺が茶化すと、寸也斗はううん、と首を横に振った。
え、まさか元から開いてた?
それ以外にないぞ、入ってくる方法なんて。

「私が開けたの~、ね、寸也斗君♡」

と意思をもったパソコン。

一回振られてるのに、よくそんな神経で居れるよなと感心する。
そこが、人間とパソコンの違いなんだろうな。

「ありがとうな、パッソコン」

と言って、寸也斗は目を細める。
その優しい表情を見て、俺の心はトゥンク・・・・・・と

……なるかボケィ!なんで俺が寸也斗を好きになるんだよ……。

「あれオートロックだったから、開けちゃったの~♡そんなことより寸也斗君♡最近ね、昴が便秘みたいで、不機嫌で怖いのぉ。避難したいなぁって、思ってるんだけどぉ」

パッソコンは俺が便秘なことをいいことに、寸也斗の家に行こうとしている。ウン十万ウン百万のパソコンを他の人んちに置くとか、そんな奴いるか!神経どうかしてんだろ。

「どうしたんだ、昴?」

寸也斗。。。
聞いてくれ、俺の悩みを!

「……ふーん。そういうわけなんだ。つまり、便秘の精が便秘を治してくれるかもってことなんだね。
もし成功したら、は俺にも教えて。もしかしたら人体の事がわかるかも……じゃなくて、お父さんがそうだから、治してやりたくて」

一瞬、寸也斗の本音が見えた。

「寸也斗って、人間を生き返らせる方法について研究してるんだよな」

俺のイタズラ心がくすぐられ、引っ掛けてみる。
寸也斗は顎に手を当てると、

「んー?俺はそんなことしてないけどなぁ。だって俺、今怪我した時に血が出ない方法……じゃなくて、なんも研究してないから~」

俺は黙り込んだ。
怪我した時に血が出ない方法ってことは、誰かを、ここ、殺そうとしてるってわけだよな?
よし、深堀しないでおこう。

「それより昴、便秘なんだけど、放っておいたら治るんじゃないのか?」
「いや、根本的に解決したいんだ!」
「なら、姉さんのストレッチに付き合えば?いい運動になるよ」
「やってみようかな」

俺は寸也斗のアドバイスを受け、寸也斗のお姉さん__私さんの所に行くことにした。

便秘を解消しよう!~筋トレ~

「え、無理」

私さんの冷たい声が、寸也斗の家の中にジムに響き渡る。
なんでだよぉと、俺は膝から崩れ落ちた。


寸也斗の家に着くと、ひたすらに長い階段を上らせられた。
上り終わったそこには、ガラス張りの部屋があった。
中には色んな筋トレ用グッズのようなものが置いてある。

「す、すげー……」

俺の声が反響した。
寸也斗、家の中にジムがあるとかどんだけお金持ちなんだよ……。
心の中では呆れているが、実際の俺は目を輝かせ、ガラスにキスするぐらいの近さでジムを覗いている。

「だろ?」

声のトーンは喜んでるのに、寸也斗の表情は全く嬉しく無さそうだ。
嬉しくないどころか、ムスッとしている。

「寸也斗?どうしたんd─────」

寸也斗に左手で口を塞がれる。そして、寸也斗は右手の人差し指をピンッと立て、シーッと空気を吐き出す。
それから、少し経つと寸也斗は深く深呼吸をし、

「姉さーん」

とジムの扉を開けて言った。
私さんはこちらを振り向いた。
私さんは珍しく、髪の毛をポニーテールにくくっていて、少しの動作でもポニーテールが揺れる。

「あぁ、寸也斗。帰って来てたんだ」
「うん」
「……」

沈黙が続く。

つれぇぇぇぇぇぇ!

え、姉弟ってこんなもんだっけ?

俺、妹居たけどこんなに気まずくなかったぞ?
いや、年齢の差とかもあるんだろうけど。
私さんってブラコンだったはずなんだけどなぁ。

「あの、さ」

寸也斗が重々しく口を開いた。

「なに?」

それに対して私さんは素っ気ない返事をする。

「昴の便秘解消のためにさ、ストレッチ一緒にやってくんない?」

__と、言うわけだ。

「そこをなんとか!」

ガバッ、と身体を倒す。

「俺からもお願い、昴の便秘を治してほしいんだ!」

寸也斗も言う。
俺は感動した。

あの寸也斗が、人のために頭を下げるなんて!あの寸也斗が!!

声に出したら殴られそうだが、この出来事は、それぐらいの覚悟があるぐらいの感動だ。

「……明日」

絞り出したような声が、私さんの口から発される。

「明日?」
「明日、寸也斗の時間を私にくれる?」

寸也斗は唇をかみしめた。

「わかった」
ぶっきらぼうにそう告げた寸也斗。

「やったぁっ!じゃ、明日ね!」

私さんはさっきまでの暗い様子が嘘のように、声が弾んでいた。
そんなに寸也斗と遊べることが嬉しいのだろうか。
そして、寸也斗は私さんとどれだけ遊びたくないのだろうか。
2人の遊びたい欲を足してわけあったらちょうどよくなりそうなのに。
なんて、勝手なことを考える。

「私は自由気ままにやるから。昴君はまぁ適当についてきな。それで寸也斗、今日これからマイラ来るから来たら鍵開けてあげてね」

私さんはそう言うと、寸也斗に冷たい目を向けた。
目にはハイライトがのっていなく、代わりに黒いグルグルのような模様が入っていた。

え、病んでる?
さっきのテンションとの差に、俺は驚く。

質問する間もなく、私さんはジムの中に転がっている真っ黒なダンベルを一個、軽々と持ち上げた。

俺もそれを真似して水色のダンベルを持ち上げようとするが、床に接着剤で付いているのかと思う程、持ち上がらない。

「私さん、すごいですね……」
「まぁ、こういうのは人によるからね」

私さんはいとも簡単にダンベルを上下させる。
俺は別の落ちてある黄色のダンベルを持ち上げることにした。
そしたら、ダンベルが床から離れ、俺の手の中にすっぽり収まった。
さっきのより全然軽い。

上下に振り回しても、軽く投げても、なんてことはない。
ちょっと調子に乗っていると、私さんが移動し始めた。

あ、あれは・・・・・・。
一部の筋トレマニアしか持ってないと言われている、ぶら下がり健康器!
そのぶら下がり健康器にぶら下がり、二分ほど耐えれたら、どんな仕事の憂鬱も吹っ飛び、掴むのに使う筋肉がモリモリ出来上がってくると言われていて、俺もお金さえあれば買いたかった。

そんな夢にまで見たぶら下がり健康器が、今俺の前に、三台もある。
俺は早速ぶら下がってみた。

つるっと、手が離れてしまう。
あれ、汗はそんなにかいてないはずなのにな・・・・・・?

疑問に思いながらも、俺はもう一度TRY!トライしてみた。

かっこつけんなという声が四方八方から聞こえた気もするが、まぁ聞こえなかったことにして。

ぶら下がるが、やっぱり掴むところが手から離れてしまう。

え、俺触りたくもないほどに嫌われてる?
物のはずなのに……。地味にショックを受ける。

ま、まぁたまたまだよな!
俺は諦めずにTRY!トライした。
三度目の正直とかいうし、さすがに今回は成功するだろ。

「うわっ」

高を括っていたのがまずかった。
またまた手がつるっと離れてしまったのだ。
受け身もろくに取れないまま、俺は落ちて行く。
おしりに激痛が走った。

「いっつっ」

痛くて痛くて、泣き出しそうなほど痛かったが、意外と冷静で、

(そう言えば二度あることは三度あるとかいうことわざもあったな)

と思い出す余裕もあった。
そうか、掴むのに使う筋肉ってそういうことなのか。
でも、それより痛い!痛くてたまらない。

「昴ッ!?」

寸也斗が駆け寄って来た。

「寸也斗が2人にみえ」

目の前が暗くなった。


……。


次に目に入ったのは天井。
しわ1つ無いシーツを見て、俺はここがベッドだと気づく。
どうやら俺は、痛みに耐え切れず気絶していたらしい。
寸也斗家、こんな寝室まであるなんて広すぎじゃ?

「昴兄!大丈夫?」

ドアがバンッと勢いよく開かれ、血相を変えたマイラがドタバタと入って来た。
その後ろには、笑っている寸也斗と、遠慮がちにこちらを覗いている私さんがいる。

「ああ……。大丈夫」

返事をすると、マイラはパァッと顔を輝かせた。

「よかった、昴が死んじゃったらどうしようかと思った」
「心配してくれてたのか?」
「そりゃもちろんするでしょ!だって、水✖がいいかな、焼✖がいいかなって、妄想できなくなるじゃん!」

よし、最初の一言しか聞かなかったことにしよう。
思っていると、部屋の温度が熱くなってきた。
暖房がついたわけでもないのに、なんでだろう?

寸也斗に聞こうと思ったが、その必要はなさそうだった。
何故なら、寸也斗から赤いオーラが出ていたからだ。
絶対アレが原因じゃん。

「ばか」

と寸也斗。
マイラの耳がピクッと動き、

「なに、アホ」

と返事をする。
その途端、寸也斗はマイラの首根っこを掴んで扉の外へ走り出した。
あまりにもスムーズな動作で、俺は動けないでいた。

「ま~た始まった」

私さんの呆れた声を聞いて、頭が現実に引き戻される。
私さんは続けた。

「そう言えば昴君、便秘の運動の事なんだけどさぁ、病院で薬貰ったほうがいいと思う。
幻覚が見えるって、多分相当だから……」

幻覚と端から決めつけられ、少しもやっとする。
でも、そうだよな。あんな妖精みたいなの、居るはずないもんな。

「あの、トイレ借りてもいいですか?」
「廊下の突き当りにあるから、寸也斗とマイラに注意してね。絡まれたらめんどくさいから」

私さんはそう言うと、俺を通してくれた。
寸也斗とマイラはどこにもいない。

私さんに言われた通りに行くと、トイレがあった。
トイレの蓋を持ち上げると、キラキラと光る粒が舞う。
思わず見惚れ、口がポカンと開いていく。

””クスックススッ””

小さな笑い声が聞こえた。

トイレの中を覗くと、前に見た黄色い髪をお団子ヘアーにした小さな女の子がいた。

「アッ、便秘の精!」
「便秘の精じゃなくてト・イ・レ・の精霊!便秘だなんて、失礼ね」
「変わんないじゃん。でも、なんで寸也斗んちに?」
「へへん、私はトイレだったらどこでも出て良いことになってるのよ。だから、君がどんなトイレに逃げようと意味はないわ」

ぱたんと、トイレの蓋を閉める。
が、すぐにゆっくりと持ち上がってきて、

「辞めなさいよ!」

と文句を言いながら便秘の精は出てくる。
いや、こっちの方が辞めて欲しいわ。

「いやそれこっちのセリフだから!ストーカーかよ!」

思わず声を張ってしまう。

「あらそう。じゃあこれで会うの終わりにするわ」

そう言った便秘の精の姿がすぅぅっと薄くなっていく。
これで精神科に行く必要がなくなったぜ。

「それと、私はトレージョ!トイレの精霊よ!ト・イ・レ・の精霊だから!覚えておきなさい」

便秘の精が完全に見えなくなると、尿意を思い出す。
やっべ、ここ人んちだから漏らさないようにしねーと!
俺はトイレに急いで座った。

病院~肛門科~

「はいこれ、お薬出しておきますね」

寸也斗の紹介で、とある肛門科にやって来た俺。
そこでは綺麗な女の人が診察をしてくれた。
声は女の人にしては少し低めで、細い声。聞いていて安心する。

「なにかトイレに行くときに、変わったことありますか?」
「あっ、それなら」

聞かれたから、便秘の精の話をしてしまう。
……信じてもらえるのかなんて、わからないのに。
話し終わると、女の人はひどく驚いた様子で、

「えっ、私もそれ、見たことあります。私の場合は、トイレの精霊と名乗る、トレージョという名前なんですが。よろしければ、今日の1時頃、○○ってところでお茶でもしませんか?その便秘の精の話、聞かせて欲しいです」

と言った。

もしかして俺、逆ナンされた?
え、病院から始まる恋とかあっていいんですか!?

俺はこくこくと勢いよく頷いた。

最寝さん

 俺は約束を守り、〇〇というところで医者の人が来るのを待った。

俺が店前でメニューを見ていると、後ろから声をかけられる。

「ごめんなさい、待ちましたか?」
「いっ、いえ、大丈夫です。お店、入りましょうか……」

驚いて肩がビクゥゥとなったが、なんとか取り繕って俺は言った。
女の人とうまく話せないこともあり、少し不自然な話し方になったが、いつもに比べれば全然だ。

医者の人の服装は、白いボタンの付いたシャツに薄い緑の色がついた膝下まであるスカートは、春を感じさせる。
タイプで言うと清楚系だ。

お店の扉を開けると、チリンチリンと鈴が鳴り、席に案内される。
店の席で向かい合って座ると、女の人は首を傾げた。

「えっと、昴君?だよね。私は栖知音すちね。栖知音でも、栖知音さんでも。
昴君の見た便秘の精について、もっと詳しく聞かせてくれる?」

俺は便秘の精について詳しく、鮮明に説明した。
栖知音さんはうんうんと頷いて、聞いてくれた。

その後、栖知音さんは見た精霊について話し始めた。


あれは、私が便秘に悩んでいたころのこと。

いつものようにトイレに行くと、トイレが輝いていて、蓋を開けてみたらなんと、トレージョと名乗る小さな女の子が出て来たの。

「私はトレージョ。トイレの精霊よ」

って。

便秘を治してくれるっていうから、たびたび相談に乗ってもらってたんだけど、ある時全く出てこなくなって。
あ、でも、その代わり便秘も治ったわ。

だからこれは私の自己解釈なんだけど、便秘に悩んでいる人の前に現れて、手を差し伸べてくれる妖精なんじゃないかなって。

話を聞いた限り、昴君はトレージョの事を追い払ったっぽいけど、普通にいい人……?いい妖精だから。
また会ったら私の分、お礼伝えといて欲しいな。


「わかりました、栖知音さんの思い、また会えたら伝えておきますね」

俺がそう言ったら、栖知音さんは顔を輝かせて俺の手を両手で取った。
大きくて、ごつごつとした手だった。
絆創膏が指のあちこちに巻かれていて、大丈夫なのか不安になる。

「絆創膏、いっぱい張ってますけど、大丈夫ですか?」
「ああ、これのこと?全然大丈────────────────「わー!!」

栖知音さんの声が遮られ、大きな声が店内に響く。
この声って、寸也斗……。

嫌な予感がして振り向くと、予想通り、そこに居たのは寸也斗だった。

「え、なんでここに居るの⁈」

寸也斗が私さんと一緒に、こちらへ駆け寄ってくる。

やばい、手を握られたままだ。
手を離そうとするが、ガッチリと掴まれていて離れない。

なんと言い訳しようかと悩んだが、寸也斗が見ているのは俺じゃなかった。

「父さん、仕事は?秘書さんが探してたよ」

……父さん?
俺はフリーズする。
え、栖知音さんに言ってるわけじゃないよね?
確かめようと栖知音さんを見るが、栖知音さんは寸也斗を暖かく見つめている。

その暖かさは、恋とかいうレベルじゃなく、愛に近い暖かさだった。
見ているだけなのに分かる。
これは、愛なのだ。
それも、家族に向けるような。

「ああ、寸也斗」

声が一気に低くなる。
大人の男の人の声だ。
俺は固まった。

一回頭で理解したとはいえ、恋が始まるかもと期待していたのだ。
こんな結末なんて望んでない。

「ってか相手昴じゃん、変なことしてないよね?」
「いやー、まだしてないよ」
「でも手握ってるじゃん。それに何その女装?」
「これは暇つぶし~。てか、もう帰んないとダメ?」
「ダメ、仕事だろ」

どっちが年上なのかわからない会話だった。
手はガッチリ握られてるし、私さんはケータイいじってるし、この状況はどうすればいいんだ?

誰か、助けてくれ……。

藁にも縋る気持ちになったその時、栖知音さんがパッと俺の手を離した。

「昴君。楽しかったよ。このウィッグあげるから、騙したこと許してちょ♡
それにしても、驚きだったなぁ。
この年になっても男の子釣れるとか」

ルンルン気分で帰っていった栖知音さん。

……。

「なぁ、寸也斗」
「大丈夫、またあとで父さんと話すわ。なんかわかったら連絡する」

寸也斗からの連絡

<寸也斗>

           
<お父さんの事なんだけど。お父さん、男の子引っ掛けたかっただけなんだって。
<昴は、遊びだったんだって
                                     つら>

せっかく、青春がキタァァァァって思ったのに、その相手は友達のお父さんで、しかも遊びで。

俺、不幸過ぎない・・・・・・?




追記:便秘は治りました。



あとがき

えっとですね。
3000文字の予定だったんです。
伸びちゃった。
書き方は変えたわけじゃなくて、あの読みにくかったので改行しただけです。

スキ・コメントしてくれたらむっっっっっっっっっっっっっっっっっっッちゃ嬉しいです!
できればコメント・・・((
じゃ、おやすみなさーい

いいなと思ったら応援しよう!