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あり得ない日常#79
「人工知能が登場して何年になるんだっけ。」
ん、AIの話?
「そう。」
「ビッグデータを基に一応出力するやつなら、亡くなったお父さんがまだ現役だった頃じゃない?」
「ああ、じゃあもう少なくとも20年以上は前か。」
それがどうしたの?
「軍事用のものなら相当先を行ってるだろうなあって。」
「そうだね、
そもそも別物だろうけど。」
「うちらが使えるのは商用じゃん。」
うん。月額いくらって形で利用するのが普通だね。
「そういうのって軍の技術を民間に払い下げたものがほとんどだよね。」
「そうだねえ、通話はおろかメッセージのやり取りまで小型の端末で出来るようになった付近の時代の話を調べると面白いよなあ。」
「いや、だから所詮は商用なんだよね。
軍用だったらシビアな回答もお構いなしなはずなんだよ。」
「ああ、言いたいことがわかってきた。
あれでしょ?商用ということはお金を落としてもらう必要がある。」
「うん。」
「だから、利用者にとって気持ちのいい答えしか出さない。」
「そう!」
「むしろ、それを極めているって言いたいんでしょ。」
「それ!
で、おまけに情報を収集してるんだよね。」
「ああー」
ああ、そうだろうねー。
「おまけというか、そっちが目的かもね。
お金を定期的にもらえる上に情報も提供してもらえる商売かあ。」
「一番理想じゃない?」
たしかに。
「それはそうだね。」
「記事書いてて、
あるプラットフォームを見て気づいたんだけどさ。」
「うん。」
うん。
「AIに投げた何かしらの提案ををAIが賞賛している流れを毎日投稿している人がいるんだよね。」
「オナニーじゃん。」
オナ…。
「ほぼそのまま載せてるから違和感しかないのよ。」
「どういうこと?」
「結果、一人称視点と三人称視点が混在してるから気持ち悪くて。」
「気持ち悪」
それは..きついね..。
「もっときっついのもあったよ?」
「ええ...?」
どんなの?
「自分のお気持ちをひととおり書くじゃん?」
「うん。え、まさか….」
あ、もうなんかわかった。
「AIに評価させてそれも併せて掲載しているのよ。」
「うわあ…商用AIに 笑」
生成AIなんてただのデータベースでしょ?
「そうそう。」
「多分裏で共有されてるね。」
共有?
「入力される情報って利用者の人格が出るからね。AIの発展には人間個体それぞれの思考に関する情報収集は欠かせない。」
ということは…。
「うん。そうして得られた情報も裏での売買を通じて共有されている可能性があるよね。」
気づかないうちにレッテル張られてるかもしれないってこと?
「無くはないでしょ?」
「あぶらぎったしょうもない文系はさぞ大変だろうね。」
「まあ、そもそも気づけないでしょ。」
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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。