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【百人一首】小倉山荘 色紙和歌〜百人一首の歴史

小学生の頃にクラスのほぼ全員で、昼休みや放課後に「百人一首カルタ遊び」をしていました。
担任がそういう遊びが好きだったので、国語の授業で習ってから、なんとなくクラス内で流行っていったと記憶しています。

北海道の百人一首カルタは、紙ではなく木札を使い、下の句を読んで下の句を取ります。
よって、上の句のことはほぼノータッチ。
大人になってから、百人一首カルタは、本来は上の句を読んで下の句の札(しかも紙)を取るのだと知った時の衝撃。

え?
なんで北海道だけあんな特別仕様にしちゃったの?
最初から上の句読んで下の句を取るで遊んでいたら、苦労もせずに上の句ごと覚えられたのにと残念に思いました。

ちなみに北海道では明治頃から開拓移民した人たちの冬の娯楽として流行ったとのこと。
木が使われた理由は、その辺にたくさんある木より、紙の方が高価だったからだとか。

でもこの木札と独特の文字が美しくて、ずっと眺めて居られるからよしとしよう。
ただやっぱり美しい言葉と誰もが聞いたことがある百人一首の上の句もちゃんと知りたい。
ということで、改めてもう一度勉強したいと思ったわけです。

以前読んだ「QED 百人一首の呪」で、百人一首の多少の知識は仕入れておりまして。
タタルさん(このシリーズのメインキャラ)情報なので、マニアックな情報の可能性はありますが。

百人一首とは、100人の優れた歌人の和歌を、一首ずつ集めたものです。「大化の改新」で知られている天智天皇から、鎌倉時代前期の順徳天皇の治世で活躍した有力歌人の和歌が選ばれています。
鎌倉時代前期に、歌人・藤原定家が成立させた『小倉百人一首』が始まりとされ、その後、室町幕府9代将軍・足利義尚(よしひさ)による『新百人一首』など、『小倉百人一首』に倣った歌集が数多く作られました。
そのため、百人一首と一口に言ってもさまざまな種類のものがありますが、一般的には定家の『小倉百人一首』を指します。

小学館の雑誌『サライ』公式サイト (serai.jp)

ざっくり言うならば、藤原定家さんが、息子為家の舅である宇都宮頼綱さんから「嵯峨中院山荘の障子に貼る色紙を贈ってほしい」と依頼されて、歌人の秀歌を集めて色紙に記したもの。

ちなみに「小倉」とは、定家さんの山荘(小倉山荘)の名前で、小倉百人一首と呼ばれるようになったのは後世であり、もともと「小倉山荘 色紙和歌」と呼ばれていたとか。

だいたいカルタ遊びとして使うように作ったものではなく、観賞用だったもので、カルタ遊びになったのは江戸時代からです。
それが、上の句と下の句を別々に札に書いて鑑賞していたことから、いつの間にか上の句を読んで下の句を取るカルタ遊びになった説などもありまして。

調べれば調べるほど面白い。
そして一句一句が味わい深い。

例えば

天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも

安倍仲麿(7番)

この歌を読んで私はてっきり、奈良公園のそばにあるあの三笠山(若草山)の上に登っている月を見て、ああ、月はきれいだなぁと詠んだと勝手に思っていました。

2024/6/20 奈良公園の鹿
2024/6/20 浮御堂の奥にうっすら見えている三笠山(たぶん)

しかし、この安倍仲麿さんの人生と、歌を読んだ時の状況を知り、歌の印象が、あらまあ雅ですわねぇ的なものから、180度変わりました。

19歳で遣唐使として中国に渡った仲麿さん。こんな若くして選ばれたのだから相当優秀な人だったようです。
唐に留学した直後には唐の学問機関である太学にて科挙に合格。
科挙とはいわゆる中国版国家公務員試験で、かなり難しい試験だったのに、受かってしまったのです。

その後、優秀だったために唐の玄宗皇帝に気に入られ、日本人でありながら、異例の皇帝のそばに仕える高官になってしまうのです。
そのため、20年後に唐に来た遣唐使の船で日本に帰ることを皇帝に許してもらえず、さらに20年そこで過ごすことになります。

唐に来て40年後にやっと帰ることを許されたものの、その船は難破して、結局唐に戻ってきてしまい、とうとう日本に戻ることなく亡くなります。

そんな仲麿さんが、故郷の三笠山を思い、今自分が唐で見上げる月と故郷の月は同じなのだと詠んだ歌と知り、なんてこった!となったわけですよ。
ただきれいだねぇと奈良のみやこで優雅に詠んだのかと思っていたことがお恥ずかしい。

どんな思いで唐の月を見上げていたのか。
当時は故郷の写真があるわけではなく、思い出の中にしか見ることができなかった故郷の山の上に浮かぶ月。
想像するだけで胸がぎゅっとなり、泣きそうになります。

31文字しかないので、こうして詳細を学ばなければ見えてこないものがある。
やっぱりひとつひとつしっかりお勉強していこうと思いました。


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