赤い星の住民になった。
人類が地球以外の星で暮らすことが普通になった。この私も地球を離れ、蠍座の一等星・アンタレスに住んでいる。
夏、地球から南の空に浮かぶ蠍座を眺め、アンタレスに思いを馳せていた頃は、まさかここに住めるとは、思っていなかった。
アンタレスには、伴星がある。主星がAなら、伴星はBだ。Aは赤く、Bは青白いが緑色に見える。Bにも魅力を感じながらも、Aに居を構えた。
アンタレスの主星Aの赤はオレンジがかっており、短期間事実婚をしていた彼を連想するからだ。とても幸せな時間をくれた彼の想い出と共に生きていきたい。そう思い、アンタレスAを選んだ。
住居はデザイナーズハウスで、彼と一緒にピザを食べに行ったお城のようなお店に似せて、デザインしてもらった。デザインをお願いしたのは、noteで繋がりのできた建築デザイナーさんの一人だ。
間取りや機能性は、彼と一緒に現地見学したマンションと、一人で見学した戸建てモデルハウスのいい所どりをしている。
一人で暮らすには部屋数が多いけれど、倉庫を借りるよりは自宅に収納できるほうがいいし、ゲストルームやホームパーティーができる空間も欲しくて、そうした。
生活が落ち着いたら、店舗兼自宅で認可がもらえるよう、飲食店として認められる設備の条件を事前に調べ、家造りに活かしてある。彼と一緒にやりたかった、ポップコーンと生ジュースの専門店を開く予定。ついでに、ブラジルコーヒーも扱ってみようか。
彼が居ないこと以外は、思い描いた通りの生活が待っている。ここ、アンタレスAで。でも、少しだけ期待している。彼がここに来て、一緒に生活してくれることを。
事実婚生活をしていた頃は、お互いに不如意な生活で「以前の収入があれば……」と、辛くなることがあった。今なら、ベストセラー作家として、彼を主夫にできるだけの経済力がある。お金目当てでもいいから、ここに来て欲しい。
言ってたよね? 私を引かせるためだったかどうか知らないけど、Facebookで熱心にメッセージを送ってくる、お店の経営者で富裕層のブラジル人女性と結婚したいって。お金目当てだから、って。
私にも、お金目当ての人達が寄ってくるようになったよ。でも、同じお金目当てなら、わけのわからない人達より、短い間でも私を幸せにしてくれたあなたがいいの。「ジジイでハゲてて外国人でもいいの?」と聞いたあなたに「全然気にしないよ。私もハゲだし、ババアって言われる歳だよ」と答えたのは、本気だから。このラブコールに応えて欲しい。
アンタレスはブラジルよりも暑いけど、最新技術のお陰で快適に暮らせるよ。おいで。
翻訳アプリを使って、読んでくれているといいな。私の作品も、ちょっとしたつぶやきも、どーでもいい日記も。
アンタレスからブラジルまで、届け、この想い。宇宙空間よりも果てしない愛に包まれた生活をしようよ、一緒に! Eu te amo.