10代最後の恋
お遊びアプリのお題で書いてみます。
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精一杯背伸びをした。少しカールをした髪に、大人っぽいコート、落ち着いた色のパンプス。年上の人と一緒に居ても、子どもっぽく見えないように。
待ち合わせ場所に来た彼には、一見して背伸びしたい気持ちがわかったようだ。表情を見て、そんな気がした。
二人きりで会うのは二度目。まだ、会話は弾まない。お互いの文章を読み合って、文面でお互いを知っているつもりの間柄。彼のほうは、私に随分とギャップを感じているみたい。彼は、それを隠さなかった。
当時の私は、初対面の人に「(文面の印象から)もっと気の強そうな人かと思った。」と言われることが多かった。彼はそうは言わなかったけれど、もっと多弁だと思っていたようだった。
憧れの年上男性と二人きりで会えて、緊張していたこともあり、普段よりも言葉少なになってしまっているのが、もどかしかった。文章ほど多弁でないのは確かだけれど、普段はもっと話す。
学生と社会人。10代と20代。───その立場と年代の差は、年齢差以上に大きく感じられた。
実際に会うと、会話の中に同年代の子達からは絶対に出てこない“社会人”ならではの話題が出てくる。そんな彼と二人きりで会っていること自体が、背伸びをしているんじゃないかという気がした。
別れる時刻は、想定よりも早かった。成人男性として“10代の女の子”に配慮をした時刻とはいえ、子ども扱いされた感が否めなかった。
「やっぱり、彼とは無理かもしれない。」
泣きながら、友人にかけた電話。
その日以来、彼に会うことはもうなかった。
彼が(ものすごく?)遠回しなプロポーズをしてくれていたこと、気がつくのに何年かかったろう? ううん、咄嗟にそうは思っても、正直な気持ちを言ったでしょう? 「結婚願望はない。」と。
結婚を“法律婚”と“事実婚”に分けて厳密に考えていなかったあの頃とは違い、40代の今は、事実婚なら何とか……に変わってきた。
彼は、どうだろう? 40代になってから、ひょんなことで辿り着いた彼の放置ブログを見つけて、どうやら最後の更新日時までは独身で、恋人の影もない様子だった。
偶然彼の姿を見かけた30代の頃、あのブログを発見していたら、私達の関係は変わったんだろうか?
ブログには、デートの時に言いたかったという言葉が書かれていた。彼は、そう思ってくれていたのか……。もう、そんなことを言ってもらえる私では、なくなってしまった。
泣きながら電話した友人も、手紙で恋の終わりを知らせた友人も、それ以外に当時繋がりのあった人達も、変わっていった。
年月が経つ、年代が変わる、ライフステージやライフスタイルが変わる。そうして、みんな変わっていくんだね。