シュガーポット ――晩秋――
元夫の帰国が近づき、私の物を少しずつ返してもらっていた。
ふとしたことで喧嘩になり、シュガーポットを前に
「じゃあ、これは? 中に入ってるお砂糖は、私の家から持ってきた物だよ。中身だけ返してくれるの?」
と、怒気を含んだ声で聞いた。
シュガーポットに目を落して少し考えた彼は、迷いながら……という感じで
「入れ物あげるよ。ほら、このまま持っていけばいい」
と言った。
本当は、先妻さんとの思い出の品として、国に持ち帰りたいんだろうか?
それとも、キティちゃんが好きな姪っ子さんにでもあげたいんだろうか?
だけど、私も思い出の品として、持っていたい。
亡き先妻さんは知らない人ではないから、大切にするよ。
帰国前、最後に私の家に来た時、調味料棚に並んでいるシュガーポットを、愛し気に眺めていたね。
その想いは、私が引き継いでいるよ。
***
二部作です。
「早春」と対になっています。
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