テセウスの船🚢
いきなり、別人になりたいと泣く彼女を前にして、かける言葉を探しあぐねているワタシ。
一瞬の脳内会議の末に生まれた言葉は、
なんでなん?
どうしたら別人になれるって思うの?
「自分を愛せるようになるまで、他人になることはできない」という言葉をかけることで、彼女の自己肯定感を高めるアイデアです。
「他人の良いところを見つけるよりも、自分の良さを見つけることに集中しましょう」という言葉をかけることで、彼女の自己肯定感を育むアイデアです。
「別人になることではなく、自分のなりたい女性に近づく努力をしましょう」という言葉をかけることで、彼女の目標に向かう意欲を引き出すアイデアです。
「他人がなりたい女性になる代わりに、自分が求める価値観や魅力を持つ女性になりましょう」という言葉をかけることで、彼女の自己成長を促すアイデアです。
「他人になりたい女性になるのではなく、自分の個性を活かした魅力的な女性になりましょう」という言葉をかけることで、彼女の自己肯定感を高めるアイデアです。
流行りのAIに聞いてみたら、スラスラとアイデアを出してくれた。でも、違和感を感じてる。
泣いてるからと言って彼女は傷ついて他人になりたいと望んだと、そういう前提ではないのだから。
目の前の彼女は可愛らしいし、愛を受けて生きている。騙されたり傷ついたりはしていない。
だから、何故別人になりたいのかがわからない。妬まれたのか、僻みか?
だとしたら贅沢な悩みなんだろうか。
別人ってなんなん?
彼女を置いてけぼりにして、
ワタシは少し、思考の旅に出る。
人の細胞は日々入れ替わっている。
生きているから180日で完全に新しくなる。
ならば、すでに別人と言える?
顔を整形手術したり、痩身したりすれば見た目が違う。だから、別人?
海外に行って経験を積み、違うカルチャーに揉まれて影響を受けたから、考え方が変わったから別人?
どの視点を持つかによって、ワタシは彼女をどう認識しているのかが解る。
愛情表現ならすぐにできる。
大丈夫だよ、そのままで大好きだよって言う。
でも彼女は変わりたいのだ。
今の自分を脱ぎ捨て、新しい何者かになりたいのだ。
ワタシは彼女の人間性を、ちゃんと理解しているのだろうか。プリズムのように煌めく多面体としての認識はあるのだが、彼女の全てをみるのは不可能なのだろう。
今、この地に立っている。
ここで暮らす。
それすら縛る意味がない。
外見の問題?思考の問題?アイデンティティの問題?それとも、愛情論?
足りないのか
要らないのか。
彼女は答えを期待しない。
ただ、泣いて、感情を浄化させているにすぎない。別人になりたいと強く思うのは、ワタシに逢えると知っているからだろう。