Y Combinator CEOが語る、プロダクト開発のTips
競争が恐ろしく激しいスタートアップの世界で生き残れた理由は3つ。
1)専門性がめちゃくちゃ高いチーム
2)お金をできる限り使わなかった
3)「スタートアップの失敗=人生の失敗」というエゴがあった
この1つでも抜けていたら、生き残ることはできなかった。
3つのうち2つあるだけじゃダメ。全部なきゃ生き残れない。
そう語るのは、シリコンバレーの有名アクセラレーターであるY CombinatorのCEO、マイケル氏。彼が語るプロダクト開発のTipsについて、ビデオ内容をまとめました。
Michael Seibel - Building Product
https://www.youtube.com/watch?v=C27RVio2rOs
あなたが解決しようとしてる課題は何?
アイディアやプロダクトについていきなり語り出す起業家はたくさんいるけれど、そもそもどんな課題を解決しようとしているのかを知った上でプロダクト開発することは必須。そうしないと、ソリューションありきのSolution in search of a problem問題に陥ってしまう。
<セルフチェックポイント>
・課題を1文で言えるか?
・自分自身(またはチームの誰か)がその課題を経験したことがあるか?
・課題のスコープをどれだけ絞れるか?
本当に顧客が求めているプロダクトかどうかを試す方法としては、あえてプロダクトを使いづらくすること。使いづらくても使いたい、もしくは使わざるを得ないのであれば、それだけ需要があるということ。
顧客は誰か?
<セルフチェックポイント>
・万人のためのプロダクトはスタートアップには不向き
・問題が起こる頻度はどれぐらい?
・問題はどれだけ深刻?
・顧客はプロダクトにお金を払うと思う?
・顧客を見つけるのはどれだけカンタン?
⇒万人のためのプロダクトはスタートアップには不向き
顧客はなるべくニッチな方がいい。
顧客の数が限定されることを嫌がる起業家は多いけれど、ニッチな市場を狙うとしても、今後もずっとその市場「だけ」をターゲットにしなくてはいけないわけではない。ターゲットを取捨選択するというより、ターゲットの優先順位づけをした上で、誰をまずは1番先にハッピーにしていくか。
⇒問題が起こる頻度はどれぐらい?
Y Combinatorの門を叩く起業家がよく持ち出していたアイディアに、車の売買ウェブサイトがある。車をウェブサイトで買えるようにしたらよいのでは、と色んな人が考えたが、車を買う頻度はせいぜい7年に1回。どんなに顧客から気に入られても、その顧客がまたサービスを使ってくれるのが7年後では遅い。できるだけ毎日使う機会があるものがよい。
⇒問題はどれだけ深刻?
タクシーがすでに確立されている中で、UBERのようなサービスが本当に必要なのかは疑問視されていた。でも、日々の生活で人が移動する頻度とニーズはたくさんある。だからUBERは成功した。
⇒顧客を見つけるのはどれだけカンタン?
LinkedInで見つければいいだけ vs 中国の顧客にアプローチだったら、後者の方が大変。もし顧客を見つけるのが大変なら、急成長するのは難しい。頭の中で作った仮説上の顧客ではなく、現実世界に存在することが確認できている顧客、さらに自分たちにとってリーチしやすい顧客をターゲットにすることが大切。
MVPで課題解決できてるか確認してる?
いかに早くMVP(=Minimal Viable Product)をつくって試してもらうかが大切。MVPを2週間でつくると決めたなら、2週間でつくって潜在顧客に試してもらうこと。
マイケル氏いわく、プロダクトのことを絵画と勘違いしている起業家がたくさんいるとのこと。1%の人にプロダクトの意義をわかってもらえればいいと思っている起業家が多いが、それでは生き残れない。スタートアップは芸術家とは違う。スタートアップの世界はとても厳しい。だから1%にも満たないようなほんの一部の誰かにしか賞賛されない絵画のようなプロダクトは成功しない。
MVPに時間をかけすぎないと同時に、MVPで潜在顧客の課題解決が本当に解消されているかを検証することが大切。
どの顧客からアプローチすればいいの?
多くの起業家が直面するこの質問。
1番手強い企業から攻めようとする人が多いですが、それは大きな間違い。
成功したいなら、1番desperate(絶望的)な顧客から始めるべき。
MVPはそもそもbad(=お粗末)なものです。
そんなお粗末なつくりでも使いたいと思う人は誰か?
ずばり、1番絶望的な状況にいる人々です。
だからこそ、絶望的な人、絶望的な企業からまずは攻めるべきなのです。有名なだけで絶望的な状況にいない企業を必死に追いかけようとするのは大きな間違い。
自分のプロダクトを使わなければ倒産してしまうような企業は誰か?
これをまずは考える必要があります。
あと、時にはbad customerを特定することも重要。クレームを言うだけの人々が一定数いるため、そういう人たちをいかに初期段階から見極めて距離を置くかが大切。
また、ディスカウントしすぎないこと。使ってくれる人がいるかわからないからまずは無料で公開しようとするのは間違い。無料だから使うだけで、お金を払ってまでは使わないという人がどれぐらいいるか見極めるのが難しいから。逆に、もしユーザーから課金する予定がないのなら、無料で公開してもいいだろうとのこと。
メトリクスを設定して、プロダクトの使われ方を知る
ユーザーがプロダクトをやっていることを理解できるチームは強い。ただ、だからといってユーザーがやっていることをすべてトラッキングしようとするのは間違い。
インスタグラムで必要なことはアプリを開く、アカウントをつくる、写真を撮る、エフェクトをつける、写真をシェアすることぐらい。
だからそれぞれの5つの項目を人々がどれだけやっているかをトラッキングできれば十分。
健全なプロダクトサイクルをつくるには?
「こういうアイディアはどう?」
「そんなのうまくいかないよ」
こんな会話がチームであるとすれば、それは危険信号。
CEOの仕事はアイディアを取捨選択することではない。アイディアが生まれるのを促進することだ。どんなアイディアも、まずはホワイトボードに書くようにする。そしてアイディアを描いた上で、Easy/Medium/Hardにアイディアを分類し、優先順位を決める。
ピボット vs 繰り返し改善
ピボット = 顧客を変えるか、課題を変えること
繰り返し改善 = 顧客も課題も変えずにソリューションを変えること
プロダクトがうまく売れていないと、「ピボットする時が来た」と言う起業家がいる。
だが、本当にそうだろうか。
ピボットとは新しい会社をつくるようなもの。ピボットを決める前に、自分たちが本当に十分に反復したかを考える必要がある。
Steve Jobsは、1番最初から人々が熱狂するようなプロダクトをつくる天才だったと思っている人がいる。だが、Appleが1番最初に世に送り出したMVP(第1世代のiPhone)はなかなかイケてなかった。スクリーンはすぐに壊れるし、バッテリーはすぐになくなるし、Apple storeはまだ存在しなかったし...
でもSteve Jobs氏はその初代iPhoneから改善に改善を重ねて今の超便利なiPhoneをつくった。
もし空想でプロダクトをつくろうとしているのなら、偽のSteve Jobsだ。
本物のSteve Jobsになりたいなら、既存のプロダクトについて反復して考え改善していく必要がある。
...以上、Y Combinatorマイケル氏からのプロダクト開発のTipsでした。今後もよろしくお願いします!
写真の参照元
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