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エクス・アン・プロヴァンス駅で
出発の1時間前にエクス・アン・プロヴァンスに着き、サンドイッチを買ってからパリ行きの列車に乗ろうとしたら、何度やってもコードが通らない。「マダム、これは昨日の切符です」。アヴィニョンからパリへの切符は予め取っていたが、エクス・アン・プロヴァンスからアヴィニョンは、こちらを出るときに追加で買ったのだが、日付を間違えていたらしい。急いで今日のをチケットを買おうとするが、何度もクレジットカードエラーになり、無慈悲に電車は行ってしまった。
諦めて窓口に行くと、案内の人が「今日はどこももう満席なんだよ。。オー!ラッキー!一席あいてるね!」と取り直してくれた。しかしこれから2時間ここで待たなければならない。周りには何もないし、もう少しパリも楽しみたかったのにな。。と途方にくれた時、どこからかラヴェルの1フレーズが聴こえた。えっ。音楽祭の宣伝だろうか。でも昨日来た時はそんなの流れてなかった。しかも絶対素人の演奏じゃない。音を追って駅を北サイドから南に走った。近づくにつれて音がハッキリしてくる。ラヴェルではなく、即興で和音を組み合わせたハーモニーを作っている。そう、こんな音を出せるのは私の知る限り一人だけ・・階段を駆け上がると・・。
・・ムッシュー!!
駅ピアノを奏でるエルバシャさんがいたのでした。そんなことあるんですね。こんなこともあんなことも言えたのにな、と考えていたばかりだったから、たくさんお話出来たのです。
持っていった楽譜も見せ、「おお、君があのエルバシャ作品コンサートの子だね!」と認識された。
また日本で会いましょう、とお別れした後、エルバシャさんが編曲したショパンのワルツを弾いた。きっと耳に届いただろう。
忘れられない時間となりました。
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(2022.7.19)