柚子と蜜柑

「ひとうたの茶席」というサイトを運営しています。音楽を聴くことや、文章を書くことも好き…

柚子と蜜柑

「ひとうたの茶席」というサイトを運営しています。音楽を聴くことや、文章を書くことも好きです。 https://www.hitouta.com/

マガジン

  • 2023ピティナ特級

    • 93本

    2023年ピティナ・ピアノコンペティション特級に関するnote記事です。公式レポーター6名の方の記事も合わせてご紹介しています。演奏、文章で特級を丸ごとお楽しみください。

  • 茶会記録

    「柚子と蜜柑」がお茶会に参加した記録をまとめたものです。

  • 2024年春旅

    2024年の閏日からの2泊3日の旅の記録です

  • 家の音楽環境を整える

    家のオーディオ環境を改善しよう!と一念発起して、オーディオを探す日々を書いた日記です

  • 2022ピティナ特級

    • 157本

    2022年ピティナ・ピアノコンペティション特級に関するnote記事です。公式レポーター6名の方の記事も合わせてご紹介しています。演奏、文章で特級を丸ごとお楽しみください。

最近の記事

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筆先から生まれる音楽を

あるお茶席で、「書道を習ってみたいんですよね」と呟いたら、「それならいいところがあるわよ」と同席の女性に教えていただいて始めたかな書のお稽古。神楽坂の教室に出向いて何よりも感動したのは、根本知先生がお手本を書いてくださる、その筆先の美しさでした。 たゆたうようにゆったりと、時に素早く、優雅な生き物のように動く筆先から、みるみる線が生まれ、それが文字となり歌となってひとつの紙に収まるまでの数秒のうつくしさ。その一連の動作は、私にとってはこれまでに体験したことのない、音楽でした

    • シシガミの森

      箱根山学校へ 大船渡で茶杓をゲットした後は、陸前高田に戻って、箱根山テラスへ。 私が参加したのは、2014年から毎年開催し、第10回(最終回)を迎える箱根山学校のプレキャンプ。バスツアーで生産者さんや道の駅、新たなエネルギー拠点、嵩上げして作られた中心市街地などを回った。 私が初年度に参加した頃、もう瓦礫は片付けられていたが、捻じ曲がった建物や流された船が残り、至る所でブルドーザーが土を掘り返し、ベルトコンベヤーが山を削った土を運んでいた。 役所の人が地図を持って来て

      • 平井千絵さんフォルテピアノコンサート

        先週金曜の平井千絵さんのムジカーザでのコンサート。太田垣至さんの製作されたフォルテピアノを使用して、ヘ短調とハ短調、二つの調をテーマとしたプログラム。 最大音量が現代ピアノより小さいものの、それ以下の音量の段階のバリエーション、グラデーションが格段に多いように感じた。もっともそれは、フォルテピアノの特性というよりは千絵さんの技術によるものだろう。 フォルテピアノの紹介などを交えたヘ短調の前半の後、後半は息もつかせぬ怒涛のハ短調プログラムだった。モーツァルトの幻想曲からソナ

        • 茶杓をもらう

          月曜から、大船渡の実家に来ている。自分でも夫でもない、友人の、言わば他人の実家だ。震災後何度かお邪魔させてもらった。たまにこうして他人の家で親孝行欲を満たす。 しかし実家というのはなぜこうも、似ているのか。窓から入る太陽光が床に映り、穏やかな無音の中で、その光がゆっくり移動していく。そして親たちはだいたい、ご飯の準備と散歩以外ほとんど何もしていない。ように見える。 碁石海岸に行ったり、最近できたちょっと新しいカフェに行ったり、道の駅やスーパーに行ったりしてのんびり過ごした

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        • ピティナ特級2022公式レポーター
          26本

        記事

          勝手に映画化夢想

          9月11日、松村栄子先生の「粗茶一服シリーズ」の新作が発売される。粗茶一服シリーズは「雨にも負けず粗茶一服」をはじめとする3部作で、架空の武家茶道<坂東巴流>の息子、友衛遊馬の物語である。テンポのよい文章で時に笑わせ、時に泣かせて、伝統ある家に生まれたはねっかえりの若の成長と周囲の人々が色鮮やかに描かれる。茶道の本としては森下典子先生の「日日是好日」が有名だが、私は兼ねてよりこの、松村栄子先生の粗茶一服シリーズも素晴らしいと推し、秘かに映画化を待ち望み、勝手に配役なども夢想し

          勝手に映画化夢想

          2024年の「慕情」

          最近のユニクロのCMは困る。夕飯を食べていようと、ソファでぼけーっとしていようと、こちらの意志と関係ないタイミングで差し込まれるサザンの懐メロに、ほわーんわんわんわーんと昔のドラえもんのタイトルコールの脳内イメージとともに、心は一気に「あの頃」に持って行かれる。 私がサザンを良く聞いていたのは、松山で高校生をしていた1990年代。 野球部やラグビー部が立てる砂埃と吹奏楽部の管楽器の音が聞こえる放課後。受かりさえすれば、もう来年はここにいないのだという受験生ならではの決意と寂

          2024年の「慕情」

          根本知さんHIGH FLYERSインタビュー

          「ひとうたの茶席」の書家、根本知さんのHIGHFLYERSでのインタビューを読んだ。 記事中の、NHKの人の「売れるとは重たいものを軽くすること」という言葉に、なるほど、と思った。 それをもとに根本さんは、「成功とは重いものを軽くできて、専門性に社会性が伴うこと」とおっしゃっている。 とすれば成功し続けて行くためには、重いものを軽くしながら、同時に重いものをより重くし、専門性を高めて、その結果またさらに社会性が広がる、というインプットと熟成•アウトプットの独自サイクルが

          根本知さんHIGH FLYERSインタビュー

          ゼリーをつくる人

          阿波踊りとゴルフの撮影で夫が出かけて1週間。すでに1キロ痩せた。この分だと帰ってくるまでに3キロは痩せそう。料理ができないわけじゃない。誰しも1人だと食生活がいい加減になるものだ。しかし今からこれだと老後が思いやられる。同じように食べることが下手そうな友人と、「もし老後1人になってしまったら助け合いましょうね」と約束した。 しばらく前からゼリー作りにハマっていた夫は、色んな風味のカルピスやオレンジ、ほうじ茶にとどまらず、くり抜いた小玉スイカにスイカゼリーを詰め込むなど、限り

          ゼリーをつくる人

          夏休み

          散歩をしていたら、小学生2年生くらいの男女の帰り道に遭遇した。 男の子はスポーツメーカーの黒いリュックとシャツ、女の子はピンクのリュックにリボンの着いたキャップ。動きやすいのにフェミニンでかわいくしていて、お母さんのセンスが想像できる。 同じ方向に向かっていたので、なんとなく後ろを着いて歩いたら、男の子はそれはそれは振る舞いがかっこいいのだった。多くの大人がそのまま渡ってしまう押しボタン式横断歩道はもちろん正しく待ち、渡る際には女の子の手を自然に取ろうとした。 狭い道に大

          家の音楽環境を整える(10)DENONのRCD-N12を試す

          しみじみ続くオーディオ探索。機会をいただいて、Denonさんに伺ってネットワークCDレシーバー「RCD-N12」を試させていただきました。飯田有抄さんが楽しい記事にしてくださっています。 うちにはスピーカーとアンプがあるので購入には至りませんでしたが、初めてオーディオを買いたい人や、仕事場や別宅に導入したい、という人には記事の「RCD-N12」、すごくおすすめです。デザインもスッキリと可愛いし、聴きたい媒体間の切り替えがスムーズでストレスがありません。 機械のことはもう良

          家の音楽環境を整える(10)DENONのRCD-N12を試す

          挫折を乗り越える唯一の方法は、「続けること~映画『言えない秘密』河合勇人監督インタビュー~

          本日公開の映画「言えない秘密」、河合勇人監督のインタビューをさせていただきました。 京本大我さんと古川琴音さんがピアノを学ぶ音大生を演じる本作。主人公の留学中の挫折に焦点を当てたご質問に対する「才能はないと分かっても止められない、好きだという気持ちだけでやってるもの」という言葉が印象的でした。 今年も夏のコンクールが始まっています。自身の才能のありどころや将来への不安を振り払うようにピアノに向かう若者たちを、応援したいと思います。 同時に、「そんな時代はもう終わったから

          挫折を乗り越える唯一の方法は、「続けること~映画『言えない秘密』河合勇人監督インタビュー~

          茶箱を作ろう(2)古裂と籠

          茶箱の道具を何も入手しないまま、まず仕覆づくりを習いたいと考えた。そこで思い浮かんだのは、昨年の恵観山荘のお茶会で同席したご婦人だった。白髪にワンピースなのに、少女のような佇まいとお声。ワンピースの品物の良さと色合わせの妙、ご本人との調和のセンスだけで、布を扱う人だと分かる。聞けばその日のご亭主の仕覆の先生だと言う。 この日のご亭主は、私に様々なことを教えてくれるお茶人だ。視聴者はおろか、やっている本人たちも忘れかけている、菓子ましチャンネルのセンターを張っている。ここでは

          茶箱を作ろう(2)古裂と籠

          茶箱を作ろう(1)

          非現実的なまでに美しかった、伊藤 穰一さんの野点の茶会で私の心を奪ったのは、茶箱だった。中でも7人の工芸家の技が結集した「掌」の名を冠するひと箱は、主に金銭的理由から抑え込んできた茶箱熱を再燃させた。 道具収集にはあまり熱心でない私も、かねてから茶箱には憧れがあり、ふくいひろこさんや堀内明美さんの茶箱の本を眺めてはため息をつき、京都ではうるわし屋さんやちんぎれやさんを覗いては夢を膨らませてきた。私は布が好きなのだ。 そんな日々を過ごしながらも、私がなかなか茶箱を入手できな

          茶箱を作ろう(1)

          茶友とアルゲリッチ

          長年アルゲリッチのファンだというお茶の友人に連れられて、すみだトリフォニーホールへ。 叶恭子さんのようにグッドルッキングガイにお供をさせて鑑賞する予定がキャンセルになったそうで、無害そうな私ともう一人の茶友が同行の栄誉に預かった。ガイズには袖にされたのだろう。 そんな日もあるわ。そういう時のために私たちはいるのよ。 憧れのピアニストに会える喜びに華やぎ、彼女と共にあったような人生を振り返りつつ会場に向かう友人は、「希望」を体現する見本のようだった。 自分ではさすがに買

          茶友とアルゲリッチ

          LFJ:エル=バシャさんマスタークラス

          昨日は、ラ・フォル・ジュルネでのエル=バシャさんのマスタークラスへ。生徒は私が何度かレポートさせて頂いた、昨年のPTNA特級グランプリ、鈴木愛美さん。 あんまり言うことがないパターンのレッスンになりそうと予想していたが、概ねその通りだった。技術の指摘がほぼない代わりに、音楽家としての姿勢に踏み込むような、極めて高度な内容になった。 技術よりの指摘は大きくふたつ。 P(弱音)は、F(強音)よりエネルギーが小さいのではなく、Fとは質が違うと捉えること。例えば優しさや柔らかさと

          LFJ:エル=バシャさんマスタークラス

          春の宵に、小さな歌でカフェをめぐる~水咲カフェ@ふくい南青山291~

          クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん激押しの、水咲加奈さんの、水咲カフェへ。 ご出身地である福井をこよなく愛する水咲さんが選んだ今日の会場は、福井県の交流施設、ふくい南青山291。水咲さんは現在は東京で活動していますが、毎週パーソナリティを務めるFM福井の収録のため、毎週福井に帰られるのだそうです。 喫茶店が大好きすぎる水咲さん。実在する喫茶店を、1分程度の歌にして、毎週(!)リリースされています。 落ち着いた、テンポのよいトークを挟みながら、弾き語りが始まりま

          春の宵に、小さな歌でカフェをめぐる~水咲カフェ@ふくい南青山291~