春の宵に、小さな歌でカフェをめぐる~水咲カフェ@ふくい南青山291~
クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん激押しの、水咲加奈さんの、水咲カフェへ。
ご出身地である福井をこよなく愛する水咲さんが選んだ今日の会場は、福井県の交流施設、ふくい南青山291。水咲さんは現在は東京で活動していますが、毎週パーソナリティを務めるFM福井の収録のため、毎週福井に帰られるのだそうです。
喫茶店が大好きすぎる水咲さん。実在する喫茶店を、1分程度の歌にして、毎週(!)リリースされています。
落ち着いた、テンポのよいトークを挟みながら、弾き語りが始まりました。
若木が空に向かって伸びるような強さと清潔さ。深く、時折心地よくかすれる歌声。和声の独特のセンスと、コード進行が示す反骨精神。どこかで聴いたことあるクラシック曲が始まった、と思ったら、いつの間にか水咲さんの音楽にするりと流れ込んでしまう不思議。ロマンチックでノスタルジックなだけではない、皮肉と本質が込められた絵本のページをめくるようでした。
上野の古城、神田のショパンなど、私も行ったことのある、またはいつか行きたい東京の喫茶店、初耳の喫茶店。そしてもちろん地元福井の喫茶店も。
私はいつか、それも近いうちに福井の「毛矢」に行くことになる、となぜだか予感しました。
歌の前にも後にもその喫茶店の世界はまるごと続いていて、それをスプーンひと掬い分だけ口に入れてくれるみたい。「あ、もうちょっと食べたい」というところで、儚く終わってしまうのもいい。俳句や短歌みたいでもある。
このシリーズを始めるきっかけとなった石川の「いずみ」に出会ったエピソードは、深く心に刻まれました。
こんな才能が存在するなんて・・この尊い輝きに出会えてよかった。
☆
休憩を挟んだ後は、飯田有抄さんとのトークタイム。6年前、ドライブ中にFMから流れる水咲さんの曲に一耳ぼれし、すぐにメッセージを送ってからのご縁なのだそう。
「気持ち悪いファンでごめんなさいね~」とおっしゃっていたけれど、私も時々そういうことしちゃうから、お気持ち理解できます・・
クラシック音楽の専門家の立場から、水咲さんの音楽が魅力的なのかを、いくつかの曲を上げながらの、熱いトークが繰り広げられました。
曲中、いくつか聴こえた気がしたのは、水咲さんのお母さんがよく聴かせてくれたというショパンのワルツやノクターン。
飯田さんによると、ショパン自身も、短い曲ばかりを集めた前奏曲集で、当時の音楽界をざわつかせたそうです。
消えてゆく地方民謡を蓄音機を持って旅した、オタクの先駆けバルトークや、堅苦しさを茶化すように「犬のためのぶよぶよした前奏曲」を書いたサティ。
そして水咲さんと同じ共感覚(音が色で見える)を持っていたスクリャービンなど、クラシックの作曲家の曲に照らしながら、水咲さんの音楽との共通点を分かりやすく教えてくださいました。
クラシック音楽の専門家から見ると、曲の魅力をそんな風に感じられるんだ、と様々な発見がありました。
素晴らしいふたつの才能に感嘆した、春の宵でした。
当日のプレイリストが公開されました!
「水咲カフェ291」は今後も毎月一度開催されますよ。私もまた足を運ぶ予定です。
8月7日には、ワンマンライブも開催予定ですって。