特別なタイル張り ~ペンローズ・タイル~
こんにちは!
今回はタイル張りの特別な張り方「ペンローズ・タイル」を紹介します。
ぜひ最後まで読んでい頂ければ嬉しいです!!
1 タイル張りとは
数学における「タイル張り」とは、平面を1組の図形ですき間なく埋め尽くすことをいいます。
例えば正三角形や正方形、正六角形はそれ1つで平面を埋め尽くすことができます。(図1)
正五角形はタイル張りできません。どうしてもすき間ができてしまいます。(図2)
2 正五角形を利用したタイル張りはできないか
では正五角形ではできなくても、それを利用してタイル張りができないかというとできます。
それがロジャー・ペンローズが1972年に発見したペンローズ・タイルです。
まず、正五角形の中に五芒星を作ります。ピタゴラス教団のマークですね。(図3)
この五芒星に補助線をかいて(図3)、2つの部分(カイトとダート)
)に注目し、色を付けます。(図4)
この2つの図形を使ってタイル張りしたのが、ペンローズ・タイルです。
私もカイトとダートを作って、タイル張りをしてみました。(図5)
下地の紙はA4用紙12枚(縦3枚、横4枚)使用しています。
製作期間は3日間です。
3 ペンローズ・タイルの面白い性質
・ 非周期性
非周期性とは、言葉通り周期性がないということです。
周期性とは、図1の正三角形や正方形、正六角形のタイル張りのように、平行移動させると、また重なる性質のことです。
ペンローズ・タイルの場合、中心があるため、平行移動させても重なることはありません。(図6)
ちなみに中心はあるのですが、同じようなパターンが出現することがあります。
・ カイトとダートの数の比は黄金比に近づく
まず図5を見ていただくと分かるのですが、ペンローズ・タイルを作る場合、ダートよりカイトを多く使います。
図5では、カイト120枚、ダート70枚なので、比は約1.7です。
もっとタイル張りの面積を大きくしていくと、黄金比に近づきます。
ちなみに黄金比(無理数)に近づくことが、上述した「非周期性」と関係あります。
理由は簡単で、もし周期的なタイル張りならば、同じパターンが現れて、カイトとダートの比は有理数になるはずだからです。
・ 5回対称性をもつ
5回、つまり72°(360°÷5)ずつ回転させたものは合同です。
これは、正五角形の性質を保持していますね。
4 ペンローズ・タイルと芸術・科学
これまで書いたことは数学の世界での話。
では、このペンローズ・タイルが見られる2つの分野を紹介します。
私も深い見識があるわけではないので、間違いがあればコメントで教えてください。
・ 芸術分野
まずは芸術分野です。
タイル張りは様々なパターンがあります。
図1で示したように1種類の図形のみを使うものもあれば、ペンローズ・タイルのように2種類の図形を使ったり、3種類の図形を使ったりするものなどです。
では、ペンローズ・タイルが見られる芸術としてイスラム文様を紹介します。
イスラム文様については、以下のサイトをご参照ください。
世界遺産に指定されている「イスファハン寺院群」の中のダーブ・イ・イマール寺院で見つかりました。
ここにその文様を載せられませんが、最後に参考文献を書いてますので、その本でご確認ください。
・ 科学分野
アルミニウム‐マンガン合金の結晶体が、この「準結晶」と呼ばれる結晶のパターンを見いだしました。
ペンローズ・タイルは平面だけど、結晶は立体だよね?と思った方がいるかもしれませんね。
実は、1976年にロバート・アムマンによってペンローズ・タイルの立体バージョンといえる立体タイルが生み出されました。
その立体タイルが、準結晶のパターンと同じだったんです。
これは大発見でした。
5 ペンローズ・タイルの変遷とその後
ロジャー・ペンローズが5回対称性の研究を行い始めたとき、非周期的なタイル張りに必要な図形の最小の種類は、レイフル・ロビンソンによって6種類と分かっていました。
その後、ペンローズによって4種類でよいことが分かり、最終的にカイトとダートの2種類でよいと分かりました。
では非周期的なタイル張りに必要な図形の最小の種類は2種類なのか?
これは長年未解決の問題でしたが、2023年3月に解決しました。
結論をいうと、1種類の図形(hatと呼ばれます)で非周期的なタイル張りが可能だと証明されました。
6 おわりに
正直この記事を書くまでは、タイル張りにあまり興味をもっていませんでした。
しかし調べていくうちにタイル張りやイスラム文様の奥深さに魅了されていきました。
その結果、ペンローズ・タイルを自作するまでになっちゃいました。
模様というのは数学的にとても面白いですし、見ていて飽きないですね。
それが自然界に現れてくるというのは不思議です。
上述したようにペンローズ・タイルには黄金比が関わっています。
自然は黄金比が好きなのかな?と思っちゃいますね。
これからもこの分野は深く学習していきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!