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フィン・ユールとデンマークの椅子展

東京都美術館で開催中の『フィン・ユールとデンマークの椅子』に行ってきました。タイトルの通り、フィン・ユールの作品だけでなく、デンマークのデザイン史を辿りつつ、その中でフィン・ユールがどのように働き、影響を受け与えたかを知ることができる内容でした。

1930年のストックホルム博覧会、スウェーデンとフィンランドだけでなく、デンマークの名だたるデザイナーたちにも相当な影響を与えたというのがわかり、冒頭から面白かった。コーア・クリントの作風も、その前後で全く違う。流行りが少し変わった、というレベルではなく根本的に家具、デザインに対する考え方が変わったのだろうな、と想像できる。フィン・ユールもその一人で、ストックホルム博覧会を訪れた時の姿がばっちり写真で残されていました。

フィン・ユールは早熟で、晩年は大量生産の波にいまいちのりきらなくて、勢いや独自性をなくしていったようだった。そもそも、最初にフィン・ユールデザインの量産が実現したのはアメリカで、それが逆輸入される形でデンマークでの評価も高まった、という背景もあるそうです。初期のアートピースのような彫刻的家具も初めは「非構造的」と揶揄され、晩年の大量生産への取組みはそれはそれで批判され、結構悲しい評価も多かったよう。


表層的なバウハウスの再解釈、と酷評されたという

個人的に一番面白かったのは、フィン・ユールのドローイングです。本当に、絵画のように美しい色彩の水彩画。家具を機能や構造だけで捉えるのではなく、空間という全体の中の一部という大きな視点で捉え、物体としての佇まいの美しさを目指しているように感じました。

最後には実際に数々の名作椅子に座って体験できるコーナーもあり、図録は展示会にないキャプション盛りだくさんでかなり読み応えあり、中身の詰まった濃い展覧会でした。


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