【ショートショート】innocent world
高速のインターを降りた車は、街を背にして走る。
一直線に伸びる片側2車線の道路は車もまばらだ。
窓を開けると、昨日の雨とかすかな夏が香る。
新緑と青空のコントラストがまぶしい10時過ぎ。
ランチにはまだ少し早い。
せっかくだからこの先の高台にある展望台まで妻を連れていこう。
何年ぶりだろうか、あの展望台。
「懐かしいな」
ひとりごとのつもりが思わず口に出していた。
ごく小さなボリュームのつもりだったが、妻は聞き逃さなかったらしい。
「このへん来たことあるの?」
「まあ」
「最