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TBSラジオ「アフター6ジャンクション:新概念提唱型投稿コーナー(シアター一期一会)」2020年1月8日放送分〜書き起こし

 こんにちは。今はイギリスの大学に通っているCozyと申します。いつも海外からラジオクラウドで拝聴しています。

 ぼくの祖父は戦後すぐからディズニーのアニメーションやフレッド・アステアのミュージカルに触れていたという映画マニアで、父も、またぼくも、そうした祖父の影響から、立派な映画オタクになりました。けれども、晩年の祖父は足腰が弱り、映画や劇場に出かける回数も少なくなり、最新の3D映画を体験したことがないとのことでした。

 そこで、ぼくと父は祖父を連れ出し、3人で「ゼロ・グラビティ」を鑑賞することにしました。6年前のことです。

2013年12月公開

 本編も中盤に差し掛かり、シャトルの事故からISSへ乗り移ったその矢先、突然、映画がストップとなり場内が明るくなりました。なんと、劇場が入っているビルの地下で火災が発生したとのこと、速やかに退避してくださいとの案内でした。3Dメガネをかけたまま、場内ロビーに出てみると、多くの人でごった返しています。

 それまではIMAX3Dと立体音響で宇宙空間を擬似体験していたのですが、この瞬間から、年老いた祖父を無事に生還させるという、リアルな「タワーリング・インフェルノ」もしくは「ダイ・ハード」なミッションに変化し、父と共に大変な緊張を強いられることになったのです。
 しかし、火災は誤報だったとかで、すぐにシアターに戻され、続きから再開されることになりました。始まったシーンがISS(宇宙ステーション)の火災シーンだったため、どれだけ現実と虚構が入り混じっているのかと、終映後に3人で笑い合いました。この時の経験は楽しかった思い出になっています。

 そんな祖父は昨年の5月に亡くなり、ぼくが祖父と劇場で映画を観たのは「ゼロ・グラビティ」が最初で最後、まさに一期一会の機会になりました。

 そして、祖父の死後、祖父のライブラリーに「ゼロ・グラビティ」のBlu-rayがあるのを発見しました。
 祖父もぼくと同じく、あの時の経験を大事にしてくれていたのかなと思うと、なんだか胸が熱くなるものがありました。

 「いやあ、映画館って、本当にいいものですね」

(本稿はTBSラジオ「アフター6ジャンクション」ー「アーカイヴ」で視聴が可能です)

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