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好きだった元セフレに恋人ができたらしい

元セフレに恋人が出来たらしい。


不意に私の耳に飛び込んできた、その事実を噛み砕くために、飲んでいたブラックコーヒーを机に置いた。


元セフレに恋人が出来たらしい。


文章にすると簡単で、そこにどんな感情も入り込む余地はないはず。それでも、彼が誰かを特別として選んだという事実が私に迫ってくる。

私ではなくその子だったのは"あの時"と"今"の違いが原因かもしれない。でも、"私は私だから選ばれなかった"そう思えてひどく悲しい。


好きだったセフレと最後に直接言葉を交わした日から、もうすぐ1年が経とうとしている。

この文章をここまで読んできた貴方は、そんなに時間がたったのに1年も引きずっているなんて頭おかしいんじゃないか、そう感じたのではないかと思うけれど、別にそういう訳ではないのだ。

細かいことはまた別のnoteで触れようと思うけれど、私は新しい恋を始めなかったわけではない。春には恋人もでき、半年弱幸せな生活を送ってきた。初めての夜にはセフレのことを好きだったことを、涙ながらに話した。その瞬間から元セフレは過去になり、穏やかな日々が始まっていたのだ。


そんな生活に訪れた突然の知らせ。

吹っ切れたようで全く吹っ切れていなかったあの人の影。

過去のことなのに、いや、過去のことだからこそ思い出は美しく見えてしまう。会うたびに辛かったあの日々を惜しむ必要なんてないのに。


あの人の新しい恋人は、私は元恋人ですらないんだけど、元"恋人ごっこ相手"の私に向けた色々な表情を、全部見ているのだろうか。

それとも、私には向けたことのない顔で愛を伝えたりなんかしているのだろうか。

あの人が誰かに愛の告白をした、あるいはされたかもしれないけれど少なくとも私の耳に伝わるくらいには交際を明らかにしていることを、今でも信じたくない。これもただの執着なのかな。


楽をするのがセフレ。恋の甘いところを味わうのがセフレ。そこから1歩踏み出して苦味も受け入れるのが恋人になるということだ。

恋人になることを諦めたのは、拒んだのは私。

今口いっぱいに広がる苦味はちょっとした罰のようなものなのだろう。甘い部分だけを永遠に食べて生きていきたい私への。

そんなことを考えながら、あの人のおかげで飲めるようになったブラックコーヒーを飲み干す。


今度こそ本当にバイバイ、惚気話は聞かせないでね。

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