このインタビュー記事、〈マドンナベリー文庫〉創刊記念トークということで収録したんですが、話が思いっきり脱線していく上に、〈マドンナベリー文庫〉の公式サイトは作らないことになりましたので、非公式のこちら(パノラマ観光公社)に収録いたします。
なお、この5年ほど、いくつかの出版社や同人誌から、いろいろとインタビューや座談会を受けていたんですが、担当さんの異動やらコロナ禍で断念やら、どれも企画倒れでお蔵入りになってしまって、もったいないオバケとワンガリ・マータイに襲撃されそうだったので、それらの内容もリミックスして再構成いたします。
なので、インタビュアーの中の人はマドンナメイト文庫編集部のひとだったり、まったく別のひとだったり、全部いっしょくたになっています。ひどいことをするね。
早い話が、こういう機会でもなければ、ずっとお蔵入りのままになりそうな話題が溜まっていたので、非公式化ついでの不定期掲載なお蔵出しです。
■■■〈マドンナベリー文庫〉創刊までの経緯
――今回は〈マドンナベリー文庫〉創刊までの経緯をお訊きしたいと思いまして。
――ははは、人聞きが悪いですよ。事実ですが。
――そもそもどうして、18年ぶりに持ち込みを?
――タイミングが良かったんですよ。マドンナメイト文庫でも似たようなことを考えていまして。
――「萌え」系のレーベルはいくつかありましたけど、それではダメなんですか?
■■■「萌え」ブームから20年
――最初、物語やイラストレーションを「現在進行形の青年マンガや成人向けマンガ」の絵柄に合わせる、というのが、分からなかったんですよね。
――幼年向け?
――80年代のロリコンマンガブームも、男性向け少女マンガみたいなニーズから出てきましたが、その延長線上だったんですかね?
――でも、80年代はエロ劇画もまだまだ、健在だったわけじゃないですか。
――話のノリも似たり寄ったりでしたからね。いまではレイプものとか難しいですけど。
――というか、『葉名と伯父さん』の企画プロットを既存の官能小説に当て嵌めてみたんですが、パッケージングとしてまったく想像がつかなかったんですよね。
――成人向けマンガと官能小説はそれだけ、正反対の進化を辿っている、ということなんでしょうか?
――最近、その頃の『漫画エロトピア』の表紙イラストが、石野卓球さんのアルバムジャケに引用されましたよね。
――官能小説に限らず、当時のノベルス系はだいたいああいう硬質でリアリズムなタッチの装画でしたけどね。
――ロリコンマンガと呼ばれていたものが、青年マンガに近づいていくんですよね。
――ああ、創刊の翌年に『漫画エロトピア』の表紙が変わったということは、成人向けマンガの流れが一気に変わったんですね。
――販路の違いもありましたからね。コンビニでも売っていましたが、メインではなかったので。
――いや、本当に売っていたんですよ。マドンナメイト文庫の流通網をそのまま使っていましたから。さすがに途中で「これはないな」と気づいて止めましたけど。
――もう、マドンナメイト文庫も駅では売ってないと思いますよ。駅で文庫の小説を買って電車内で読み捨てるという習慣自体、なくなっていますから。
■■■エロの限界集落化
――マンガと違って、官能小説は読者層が固定化されていましたからね。書籍流通のほうからいただいた要望で、若干、方向性を調整することはありましたけど。
――官能小説も現在のコア年齢層は60代に差し掛かっていますから、15年後には「物理的に」ジャンルが消滅する可能性があるというか……。
――だからこそ、先手を打って〈二見ブルーベリー〉を創刊したんですが。
――具体的には?
――でも、『まんがタイムきらら』とかは、20年前の「萌え」ブームのまま、残っていますよね?
――ああ、ポルノだと男性の肉体性からは逃れられない、と……。
――官能小説もシチュエーションやプレイ内容で作りますから、そこまで竿役の主体を書くことはないんですけどね。
――〈マドンナベリー文庫〉ではそういった作品も拾い上げるんですか?
――なるほど、現状の官能小説が対応しているのは「萌え」ブームまで、ということですか。
――当時、ゆずはらさんは「非モテ」ではなかったんですか。
――それ、今回、改めて知って驚いたんですが、マドンナメイト文庫側はそのあたりの機微をあんまり把握してなかったんですよ。
――そうなんですよ。「萌え」ブームに対応するサブレーベルということで企画を通していたので。
――まるで〈二見ブルーベリー〉が蠱毒だったような言われようですが。
――直接には関わっていなかったんで、どうしても他人事みたいな物言いになってしまうんですが……イデオロギー的に煮詰まったから、レーベルが終わった、ということでしょうか。
――そういえば「官能小説の新しい実験室」と銘打っていますが、実験レーベルということを強調していますよね。
――マドンナメイト文庫でそのまま引き継げれば良いんですが、ゆずはらさんが作ったコンセプトを引き継いでくれる編集者がいないんですよね……。
そして、次回のトークではその「官能小説の新しい実験室」というコンセプトを掘り下げていければ、と思いますが……よろしくお願いいたします。
【次回、〈マドンナベリー文庫〉創刊記念トーク②へ続く】