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ひとりBIODESIGN 疾病の基礎4

今回は、糖尿病の「疾病生理学」のうち、リスクファクターと因果関係について調査する。まず、前回までの復習から初めていきたい。BIODESIGNの疾病研究では、臓器や細胞の正しい機能を知る→疾病の機能を知る→身体への影響を知るというように体系的に疾病への理解を高める。

上記の手順に基づき、糖尿病に対する調査を進めると、体内の血糖値は、「膵臓でのインスリン、グルカゴンの分泌」と「肝臓でのグルコース取り込み、放出」の絶妙なバランスによって保たれているのであった。そして、いくつかの原因によってインスリンの作用不足が起こると、肝臓や筋細胞、脂肪細胞でグルコースの取り込みが行えず、高血糖となる。これが糖尿病であり、下記の機序で合併症が起こり、身体の機能に影響が出てしまうのであった。
①インスリンの作用不足が起こる(=糖尿病発症)。
②(インスリン作用不足により)肝臓や筋細胞、脂肪細胞などがグルコースを取り込めなくなる。
③(取り込めなくなった結果)血中のグルコース濃度が高くなる(=高血糖になる)
④-i(慢性高血糖の結果)急性もしくは慢性合併症になる。
④-ii(治療の過程で低血糖になった場合)低血糖昏睡
⑤種々の合併症の症状により、身体に影響(視力障害、失明、腎不全、下肢壊疽、心筋梗塞、脳卒中、下肢の抹消動脈疾患、昏睡など)

さて、糖尿病になってしまう原因はなんであろうか?という部分を調査していこう。少し調べると遺伝因子、環境因子という言葉に出会った。病気原因は環境と遺伝的な要素で調べられるようでそれをもとに調査するのが良さそうだ。

初めに1型糖尿病についての遺伝因子と環境因子をまとめてみる。
遺伝因子:自己免疫異常、遺伝子
膵β細胞が破壊される機序として、自己免疫反応が関与している様だ。免疫反応には、液性免疫と細胞性免疫があり、前者が抗体(体内の異物をつく目印で、これがつくと体内から除去される仕組みのターゲットとなる)によるもので、後者ではある細胞が直接にβ細胞を攻撃する様になってしまう。自己抗体は、診断によく使われており、GAD抗体、IA-2抗体、IAA、ZnT8抗体というものなどがあるそうだ。また、細胞性免疫では、CD8陽性T細胞が主体となった膵島炎が認められるそうだ。いずれの免疫の場合においても、膵臓のβ細胞が異物として誤認識されることによって、破壊されてしまい、インスリン分泌がなくなってしまう。

環境因子:ウイルス、食事
1型糖尿病患者では、発熱、上気道炎などの先行感冒症様症状(風邪をひいたときのような症状)を伴うことや、風疹に罹患した妊婦から生まれた子供に糖尿病が多い事から、ウイルス感染が発症に関与するのではないかと言われている様だ。糖尿病研修医ガイドブックには、食事要因も紹介されており、母乳保育が1型糖尿病の発症を抑える可能性があるかもしれないと記述があった。そこで検索をしてみると、母乳保育で糖尿病になるリスクが下がると報告されている様だ。(https://dm-net.co.jp/calendar/2018/027761.php)

さて次は、2型糖尿病に関するリスクファクターを調べていく。2型糖尿病は1型と比べて様々な要因がある様だが、糖尿病となる詳細なメカニズムはまだ未解明な部分が多いみたいだ。そのため、詳細は省いて大雑把にまとめた。

遺伝因子:インスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子
調べるとまずわかったのは、全ゲノム関連解析や連鎖解析で多くの関連遺伝子が明らかになってきたものの、ほとんどの症例で遺伝要因は未知のままであるということだ。様々な遺伝子の名前が出てきたが、詳しく述べるとかなり長くなりそうであるし、簡単な紹介でもただの名前の羅列になりそうなので省く。。。

環境因子:肥満、食事、嗜好品、身体活動、低出生体重児、その他
肥満に関しては、聞いたことがある人もいるのではないか。肥満はインスリン抵抗性を惹起し、糖尿病のリスクを高めることが知られている。これは、肥大した脂肪細胞からインスリン抵抗性を惹起する物質の分泌が亢進するためである(TNF-α、FFAなど)。食事に関しては、飽和脂肪酸の摂取量は糖尿病発症に影響があり、多価不飽和脂肪酸の摂取は発症リスクの低下につながる様だ。嗜好品では、タバコ、アルコール、コーヒが挙げられており、喫煙は糖尿病の発症リスクを上昇させる(非喫煙者に比べて約1.4倍)様だ。意外にもアルコールは、完全に悪いわけではなく、U字の関係にあるらしい。飲み過ぎは注意というわけだ。また、コーヒーに関しては、糖尿病発症抑制効果が示唆されているらしい。糖尿病専門医ガイドブックには、海外の研究で、一日6杯以上の群は2杯以下の群に比べて、リスクは0.65倍だったらしい(一日6杯ってかなり多い気がするが、、、まあ、海外ではコーヒーをたくさん飲むのだろう。)。身体活動に関しては、運動による消費カロリーが週当たりで500kcal増加するごとに、発症率が6%ずつ低下する様だ。また、筋トレも発症リスクを低下させる様なので、コロナで日常の身体活動が低くなっている人は筋トレで補うなどの工夫ができるだろう。低出生体重児に関しては、出生時体重と発症率はU時の関係があり、3000kg以下、4000kg以上においてリスクが高まるそうだ。その他の事柄として、夜勤シフトは糖尿病発症率を高める。

これで、一旦糖尿病のリスクファクターの調査を終了するが、今回は調べたことを羅列するだけで読者に優しくない内容となってしまった。にもかかわらずここまで読んで頂いた人、ありがとうございました。

次回は、糖尿病の進行過程についてまとめていきたいと思います。それでは。


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