わたしは、この国から「ふしだら」だと思われている

「わたし」は、この国から「ふしだら」であると思われている。私だけじゃない、同僚のひっつめがみにしているあの子も、電車の隣の席で揺られていた名前も知らないあの人も、『女性は避妊の権利を渡せば沢山セックスをするだろう』と思われている。親と手を繋いでスーパーマーケットを歩いている5才くらいの女の子だって、あと十数年もすれば「ふしだら」なのではと懸念されるのだ。ふふ、ちょっと笑っちゃう。ばかばかしい。わたしたちは、女性であるということだけでこの国からふしだらだと思われている。


そんな考えに思考を支配されながら日々を生きている。会社に通勤する時、フルタイムで働く間のふとした時間、こうして文字を打っている休息の時さえ。


各所で交わされる緊急避妊薬を薬局で取り扱うか否かの議論、こういう系統の問題で叫ばれるデメリット。「女性が悪用する可能性がある、女性の性が奔放になる」という反対意見がどうしても耳にこびりつく。

これを言っている人は、具体的に【誰が】悪用すると思っているのだろう?風俗業に従事している女性か?いや、それこそ妊娠のリスクを気にかけている人は既に低容量ピル等で対策をしているだろう。じゃあ誰だ、私か?自身の『奥さん』か?それとも、誰でもないのか?
『架空の女性像』なのか、『女性全員』なのかーーーーー。

低容量ピルも、同じような理由で健康保険は実質的には適用されない仕組みになっているのだ。月経痛、子宮内膜症、その他の婦人病。「腹痛と吐き気で起き上がれなくなる、鎮痛剤を飲んでも会社に行ってフルタイムで働くことができない痛み」と訴えても、保険適用外の価格とほぼ同程度でしか手に入れられない。「3割負担の金額で手に入るようにしたら、どうせ女性は病気だと嘘をついて、避妊のためにピルを手に入れるだろう」というのだ。「性が乱れる、だから保険適用の場合は薬の値段自体を約3倍にして、3割負担を適用しても金額がほぼ変わらないようにしてやろう」と。

私はこれが、ものすごく嫌だった。「じゃあ私のこの腹痛は、吐き気は、この国は病気とは認めていないということか?【月経困難症】という病名がついているのに、わたしを、女性を信用していないから、こんな対応をされているのか。そして同じ口で『女性の労働を推進します!男性と同程度の生産性を保ってください』と言うのか」と。
ピルを飲むと月経痛が改善することなんて知っている、でも今の料金体制で利用することは、この国の理不尽に負けたような気がして、どうしても嫌だった。

そもそも、女性は「ふしだら」ではいけないのか。自分で決めた相手と自分のタイミングでセックスをして、自分で妊娠するか否かのリスクを管理し、いつ妊娠・子育てをスタートするのかを決めてはいけないのか。
「女性の性が乱れる」って、本当に乱れているのか。女性の自己決定権の確立ーーーあるべき姿に、近いのではないか。

そんなことを考えながら、私は結局低容量ピルを始めた。自分の中に渦巻くもやもやを、友人に、家族に、そしてここに吐き出しながら、フルタイムの労働、キャリア、自立した生活の糧にするために。
いつの間にか、世間では薬局での緊急避妊薬販売可能が濃厚になってきていた。正直、この国に何の期待もしていない私なので、今回も絶対に無理だと思っていた。思っていたのに、時代は変わっていくことが出来るらしい。ゆっくりと、ゆっくりと、かたつむりのような速度であっても。

飲み込んでしまってはないのと同然だからと、今日もどこかに不満を吐き出して、呼び名が「ふしだら」から「自由」へと変わる未来を諦めずに生きていたい。

# 緊急避妊薬 #ピル #低容量ピル  




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