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「自分」を取り戻す、場所のリズムを体感できる宿のリスト

202X年、激務が故、人生二度目のバーンアウトに陥った。蘇りを懸け、助けを乞うた人生の師に仰がれるまま、スタメンの品々のみスーツケースに詰め、残り物と家は捨てた。家なき子兼無職、現代風に格好良く言えば、「アドレスホッパー」になったのである。

ADDRESSという、アドレスホッパー専用の宿泊予約サイトにお世話になり、5日ごとに移動を強制させられる。そんな暮らしを1年間続けた結果、私は「毎日同じベッドで寝られる幸せ」を痛感しアドレスホッパーを卒業。住む場所から仕事まで、人生をゼロスタートさせた。

そんなきっかけを与えてくれた、3つの宿を紹介したい。

スタメンのみを詰め込み、このスタイルでの移動生活を1年続けた❤️🎒🚶

「来るもの拒まず、去る者追わず。港町神戸のさっぱり感」

ゲストハウス萬家 神戸市灘区城内通4丁目4-10

訪れる旅に奇跡的な出会いが起こるので、あえて行く回数を控えるくらい、強いオーラを纏っている。私が「神戸のパワースポット」と密かに呼ぶ所以である。

韓国人の朴さんが町に惚れ込み、長期間に渡って地元の方との関係性を紡ぎながら、診療所だった建物をリノベーションして開業。スタッフさんの距離感と優しさに自然と人が集まり、談笑が絶えないラウンジ。家なき子の私に、いつも居場所を与えてくれた。「渡辺さん、ここ好きだと思いますよ~」と教えられた新開地に、関東出身者の私では知り得なかった「神戸のB面」の摩訶不思議な魅力に取り憑かれてしまう。声をかければ、活気よく話してくれる神戸の商店街の人々は、私の「人に話しかけたい欲」を東南アジア以外で初めて受け止めてくれた。

神戸の人は、神戸が大好きだけどそれを強要はしない。きっとそれは、心底神戸を愛していて、コンプレックスなどかけらも無いからなのだろう。自虐の民、埼玉出身の捻くれ者の私は、強く思う。


度肝を抜かれた神戸のB面!🐟️🍡🥓
マスト写真in商店街🧆📷️✨️
振り向いたら海が見える坂。この瞬間、心のなかで何かが動いた🌊🌅🍃

「気にもとめてくれない。その距離感が心地よいときもある」

KéFu stay&lounge 京都府京都市上京区桐木町880

港町の神戸の心が浮き立つ感じは、海のない京都に着くと自然と穏やかになり、足元が地面にずっしりと締め付けられる感じがする。この宿がある西陣は、観光客の多いエリアとは違い、京都の日常生活そのもの…?京都の工場は扉をぴたっと閉め、表立って営業をしていないようで静けさが町に漂う。見えない衝立が、ところどころに立ちはだかっているのだ。

京都では、誰かと話すよりも、自分と向き合う時間が多かった。移動の多いアドレスホッパー生活に、落ち着きを与えてくれる盆地での生活。宿のラウンジは、センスの良いスタッフが選んだお土産品やショップリストが並び、「京都の丁寧な暮らし」のあり方を教えてくれる。地元の食材をふんだんに使った朝食は絶品。コーヒーチケットを買ったおばちゃまたちの、上品な談笑に耳を傾けるのも楽しい。

近くの米屋が営むハンバーグ屋さん「キッチンパパ」は、死ぬまでに一度は訪れて欲しい。


ぴしっと閉じられた工場??🏭🛠️🏢
あえて多くは語らないよ🍳🍽️🤤
訪れる度に必ず撮影してしまう鴨川🦆📷️🌤️

「東京にもあった!この人との距離感。時の流れまで穏やかにする隅田川に身を任せて」

WISE OWL HOSTELS RIVER TOKYO 東京都墨田区向島1丁目23−3 E01 東京ミズマチイーストゾーン

関西が好きながらも、東京に戻る必要もあったときに宿泊をした宿。隅田川の川沿いに隣接する宿は、天気の良い日は散歩に出かけるととても心地が良い。都会の冷たい喧騒に毒されて帰ってくると、このゆっくりと流れる隅田川と、東京下町の人々の距離感の近さは心地が良い。

週末は、北関東の生産者たちが集まったファーマーズ・マーケットも開かれて賑わう。東京にも下町の温かさがあるんだな、と教えてくれた。(このような下町を知っていたら、かのバーンアウトは起こらなかったのではないか…)東武鉄道肝いりの東京スカイツリー界隈の開発エリアで注目を続けたい。

カフェにいると、知り合いと遭遇する確率も多く、セレンディピティが爆発していた。記事を書いているとまた訪れたくなってしまったなあ…次回の東京出張はここに宿泊しよう。

ファーマーズマーケット!🍎🥕🍓🧺
かわいいパッケージ🥛🫘🥤
沿線横の広場でコーヒーブレイク☕🍪🍃

一年間放浪した私の心と身体が求めた新天地とは…

主にこの3つの宿を中心に生活した1年間。予約ができないときは、偶然性に身を任せて違う県にも飛び出してみる。バーンアウトで思考力を失っていた私には、強制的に移動し、刺激を受ける生活が蘇りにはとても適していた。宿に帰ると、スタッフと他のゲストからの「お帰り~😊」がとても心地が良いのだ。「生活の一部を共有」するゲストハウスでの暮らしは、一人暮らしでは体得できない安心感があり、私は人間性を取り戻していく。

移動を続けると、その地が自分に与えるリズムが違うことを体感した。どのリズムが自分に合っているかを問い続けた結果、自分の鼓動との一体感を最も感じた神戸市に移住を決めて今に至る。それは、新しいものを受容し続ける港町としての神戸が、好奇心旺盛な私の心と体を共鳴したからな気がしている。そしてこの一年間、支えてくださった方々、お仕事をくださった方々には感謝の言葉が見つからない。

浮ついた気持ちを横に、少し落ち着きを取り戻したい私は、気づいたらKefuのウェブサイトを見ている。また次の来訪が楽しみである。

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