スマートな飲酒で文化を守る

最近、お酒に関するニュースを頻繁に目にする。

きっかけは厚生労働省が出した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」だと思う。

「お酒は身体に悪いから、適量で抑えよう」的な内容。その適量というのがなかなか渋い。

ビールだったら500ml(ロング缶1本)、日本酒なら180ml(1合)、ワインなら200ml(グラス2杯ほど)、ウイスキー60ml(ダブル)といった感じ。

体格差の面から男女で量は異なっており、男性の場合は上記をだいたい2倍した数値が適量らしい。

個人的には「まず、無理だろう」といった感じ。居酒屋に到着して15〜30分経ったら、間違いなく指定量は飲み切る。お酒を日常的に飲む人であれば、同じような感覚を抱くのではないか。


明治時代、酒税は政府にとって大きな財源だった。一時期は徴収される税の中でトップになったほど。

そんな大事な税収を守る、発展させるために大蔵省(現在の財務省)管轄に「醸造試験所(現在の酒類総合研究所)」を設立し、日本酒造りの技術改良を進めてきた。そこで開発された「速醸造り」は、現在流通する日本酒の9割で採用されている。腐造を回避しながら、効率よく安定した醸造がこのタイミングで実現したのだ。日本酒自体の歴史は古いが、使われている技術は意外と新しい。

「協会酵母」の確保、頒布も同じような時期に行われるなど、当時の動きはまさに今の日本酒産業を形作ったといえる(ちなみに「新政」で有名な6号酵母は全国で6番目に採取された酵母。灘、伏見、広島に続いて東日本初の選定だった)。

その後、他の項目が増えたことで酒税の割合は年々低下。令和6年度の予算案では酒税は全体の1.7%程度。年々減り続けており、今となってはメインの収入にはなっていないようだ。そのせいなのか「ガンガン飲んで税金払って!」から「健康第一であまり飲まないで!」に変わった。アルコールに起因する保険料の方が高くなっているのかも?

こうやって振り返ると、お酒はそもそも「税」に左右されてきたっぽい(ウイスキーやビールも同じなのかな?)。令和に入り規制対象になりつつあるという状況。なんとも言えないもどかしさを感じる。音楽だったら派手なパンクバンドが出てきてもおかしくない状況だ。

引用:財務省「酒類の課税数量と課税額の推移


嗜好品と税金の事例で「タバコ」がある。オリンピックなどを契機に「喫煙規制」が強まり、今となっては喫煙可のお店を見つけるほうが難しい。数少ない喫煙所に集まり、縮こまりながら嗜んでいる人たちを見ると悲しくなる。お酒も同じようなことになるのかも、と少し不安。

「昔は新幹線でもお酒飲めたよね」
「夜中コンビニでお酒買えたよね」
「ファミレスでもお酒提供されていた」
「居酒屋で飲み放題っていうのがあった」
「社内行事の集まりで飲酒が当たり前だった」

こんな会話が数十年後に交わされる日がくるのかも?「そんなのないでしょ」と今の感覚では思うが、タバコの事例を考えるとめちゃくちゃ現実味ある。喫煙シーンがテレビから消えたように、飲酒シーンも消えるのか。

タバコの場合は一部のマナーを守らない悪質な人もバッシングを強めた原因だと思う。お酒も同じ。とんでもない酔っ払い、アルハラは間違いなく存在する。極力いいイメージを持ってもらうためには、一人ひとりの行動が大事なのだと思う。

模範的な飲酒者になれるよう「自分の」適量を守り、スマートな飲み方を意識したい。

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新井 勇貴
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