なんで自分の言ってることはちゃんと受け止めてもらえないんだろう、と思った時に
なんで自分の言ってることはちゃんと受け止めてもらえないんだろう。
なんであの人の言ってることはちゃんと聞き入れてもらえてるんだろう。
そんなふうに思ったことはありませんか。
おそらく人類が社会生活を始めた頃から強弱ありつつ生まれていた対応格差。
その落っこちる側にいつもいすぎて「自分の言っていることはあまり重く受け止めてもらえない。なんならとりあえず全部笑われる」という、修行を積まないピエロ人生を歩んできた私ですが、「なんでっちゃろね・・・?」(博多弁)とは常々思っていました。
私が「片づけなさい」と言っても眉ひとつ動かさずスルーする我が子たち。でも夫が「片づけなさい」と言った日には「かたづ」くらいで席を立ち、散らばった本やら靴下やらを拾うのです。
なんでなの。なんで3字で動けてるの。私のセリフはなんで空札扱いなの。
夫、怒ったのあんまり見たことないけど、怒ると怖いような気がするから ・・・?
でもそれだけでもないのです。
夫と私の持つ何かに大きな差があるのだけど、「なんとなく・・・圧・・・?」と気圧で頭が痛くなる症状のようなふんわりした言葉でしか捉えられないでいました。
最近独立して一人暮らしを始めた大学3年生の元下宿生Mくんも言います。
彼は去年から進学塾の講師としてアルバイトを始めたのですが、こんなふうに言うのです。
「ねえMくん、正社員とアルバイト講師の差ってある?」
「ありますね。すっごくあります。教室入った瞬間からすぐわかります」
「どういうところが違うの?」
「一言でいうと、場を制圧する力が違います」
【場を制圧する力】・・・・
わかる・・・わかるぞ・・・・
今期の月9のドラマ『教場-0-』を見るために、『教場-1-』と『教場-2-』をこのあいだ一気見した私にはすっごくわかるぞ。
あの風間公親のあの感じでしょ!!!
木村拓哉扮する風間公親の漂わせるものは、まさに「圧」。「怖い」とか「大きくて強そう」とかではない違うタイプの畏怖を人に与える存在感です。
おそらく私が筋トレに10年費やしてガンダムみたいな筋肉を手に入れても、風間公親の前にはその類まれなオーラを引き立てる雑魚にしかならないことが秒でわかる。
みなさんぜひ手の届かない「圧」の見本『教場』シリーズを見ていただきたい。
しかし。
風間公親でもないし木村拓哉でもないから絶対そっち側には行けないんだ・・・と落ち込んでいた私に、また別の出会いがありました。
子供達にボランティアで茶道を教えてくださるという女神。
茶道歴18年なのにまだ20代のSさんとの出会いです。
S先生が幼い頃から歩んできた茶の湯の道。
たくさんの作法とルールによって、目に見えないところに超えてはならない線を見出し、毒殺がなくなった世界でも毒がそばにある緊張感を携えて、理由を添えて茶道の心得を教えてくださいました。
「え、やだし。まじめんどくさいから絶対やらない」と言っていた長女Kちゃんも、S先生に「では、礼の仕方からお教えいたします」と言われたら、ちょこんと正座して畳に両手で三角を作り頭を下げ、
「早く外で遊びたい」と座布団の上でソワソワしていた次男Sくんも「抹茶の粉は、てっぺんを決して崩さないように周りからすくって下さい」と言われたら、震える手つきで言う通りにしていました。
あっ。
と思いました。
S先生は決して大柄でもなく、威圧するような声も出していません。
でもこの8畳の茶室はまさしくS先生の「場」で、この空間の空気を吸った瞬間からやわらかい「圧」を子供達に伝えていました。
何がちがうというのでしょう。
「ちゃんと座って」とママが言うのと、「座るときは、こう」とS先生が言うのでは、何がちがうというのでしょう。
人間を犬に喩えるわけではないですが、ゴールデンカムイのこのシーンも思い出しました。
子供の目を見て何を考えてるのか一生懸命感じ取ろうとし、口答えにいちいち真正面から怒り・・・・
それは下位の・・・下位の存在の所作だった・・・?
もちろん茶道のS先生も『教場』の風間公親も「服従させよう」とは思っていません。
一言で言えば、先生が見ているものはもっと遠いところにあるということ。
目の前の相手を見ているようで、相手の未来と社会の未来を見ている。
相手と同じレベルに立たない。
自分の信条と身につけた経験にのみ従い、自分のペースを崩さず、相手の態度に一喜一憂しない。
そのような姿勢のみが「場」を作り、相手の細胞に入り込む「圧」を作ることができる。
そしてその「圧」は大変心地よく、人を惹きつける・・・。
「なんで自分の言葉はちゃんと受け止めてもらえないんだろう」
真面目に頑張っている人ほど、努力が届かなくて、人を動かせなくて、大事に扱われなくて落ち込むことがあるのではないでしょうか。
そんな時にはちょっと目線を遠くして、目の前の相手に嫌われようが、理解されなかろうが、自分は自分のペースを大事にする、と一呼吸おいてみてください。
自分を信じてやりたいことを曲げないことが、新しい魅力で人を惹きつけることがあることを、世の中のたくさんのカリスマが教えてくれています。
カリスマゆえに、ちょっとわかりにくいやり方で。
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末次由紀のひみつノート
漫画家のプライベートの大したことないひみつの話。何かあったらすぐ漫画を書いてしまうので、プライベートで描いた漫画なども載せていきます。
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