言わずに叶う夢はない、おそらく。
2024/03/16に延伸となった北陸新幹線の新しい駅、芦原温泉駅を訪れてきました。そのレポートをしたいと思います。
これまでも何度も訪問してきましたが、今回初めてなんの仕事でもない旅行。
取材でも原画展があるからでもサイン会があるからでもない。
編集さんも一緒に行ってくれているのに、なんの役目もないで行っていいのかな?そう思って東海道新幹線に乗り、米原から特急しらさぎに乗り換え、一路芦原温泉駅へ。
北陸新幹線開業に伴って、特急しらさぎは今日がラストランということで夕方の電車は満席でした。新幹線の話題で持ちきりかと思いきや、役目を終えるしらさぎを惜しむお客さんもたくさんなのです。バトンタッチが浮き立たせる鉄道の持つロマン。旅の最初から心が震えます。
そして到着、福井県の芦原市、芦原温泉駅!!!!
けっ・・・・
景色が全然違うっ・・・・
新しく生まれた新幹線の駅の巨大な壁の迫力に圧倒されます。以前訪れた時は橋脚の一部があるくらいだったのに・・・!
人んちの子供とよその駅の成長は早い・・・。いつの間にこんなに大きく!
福井といえば恐竜です。そこかしこの恐竜の気配。
岡山県で桃太郎を見ない場所はないのと同じように、福井全県で恐竜を見ない駅はないのでしょう。大きな足跡かっこいい。
しかし、あわら市はちがいます。恐竜に加えて独自のご当地キャラ・湯巡権三くんがここぞとばかりにどこにでも登場します。
とりあえずあわら市に来たら、帰る頃には湯巡権三くんのことを「うちの子」「うちの湯桶」と呼ぶくらいに刷り込まれていることと思うのですが、あわら市の持つまた別のカード(切り札)(?)として今も大事にしていただいてるのが、拙作「ちはやふる」・・・・!
私は今回なんの仕事も背負わず来たのですが、アニメちはやふるに出演してくれた瀬戸麻沙美さん・細谷佳正さん・安斎知佳さんはめちゃめちゃメインのお役目を背負い、北陸新幹線の延伸に際したくさんのセレモニーをこなしてくださいました。
アニメ1期は2011年秋、第3期は2020年春。そこから4年の月日が流れているのですが、今でも市を上げてちはやふるを押してくださっている・・・。
ちはやふるはいろんな地域が登場する作品で、滋賀県大津市・東京都府中市なども作中で描かれるメインの都市なのですが、その中でもあわら市はイベントなどもずっと継続して続けてくださって、並々ならない熱意を傾けてくださってました。
まさか北陸新幹線延伸のイベントにも思い出してキャスティングしてもらえるなんて・・・。
見よ。なんの仕事もないのにノコノコやってきた作者のウッキウキぶりを。
まあ私は作者ですので、漫画のこともアニメのこともかなり知っているので、街の中に今でもちはやふるの看板があることをありがたいなあと思うのですが、それでもずっとこれでいいのかなという思いもありました(いやいいんですが)。
アニメは3期まで作っていただけたけど、3期6クールも作ってもらえるアニメはそうそうありません。十分幸せな作品です。
漫画も完結してひと段落しており、新しい物語に打順は移っています。「ちはやふる」を大事に思うのはもちろんだけど、作者としてそこから先を望むのはおこがましいことだと思っていました。
でもあわら市の街をうろうろして、応援してくださる人たちの温度を感じたり、瀬戸麻沙美さん・細谷佳正さん・安斎知佳さんに久々にお会いしたり、アニメプロデューサーのNさんに腰を据えてお話を聞いたり、主題歌を担当してくださった99RadioServiceさんに色んな想いを聞かせてもらったりしていく中で、なんというか、不思議な地熱を感じたのです。
エンターテイメントは人気商売です。人気があればなんでもできるし、なければなんでも難しいものです。
でも、そのもっと根源的な部分で、「やりたいからやる」とクリエイターが思うこと、そう思ったことを大事にすることを、ずっと続けてる人がいるのです。
私一人の熱意でどうにかできるのは漫画を一生懸命描くことだけで、それは間違いなく情熱を傾けてやろう、と思ってきました。それ以外のことは運命が決めるのだ、自分ではどうにもできない、とも思ってきました。映画もアニメもそれ以外のお仕事も、みんな受け身でした。
でもあわら市に来て、どんな人にも寿命があるというのに、長い長い期間一つの作品を推してくださる人の熱意をたくさん感じました。
エンターテイメントというものは、毎日別の映画のチケットを買うように、毎日違う漫画を読むように、その時々の気分で味わうもののように感じていたのに、そうではない人がたくさんいる。
人生をかけて推す作品を決めちゃったかのような楽しみ方があることを、多くのファンの方や、街の方が教えてくれているじゃないか・・・。
なんの役目もなくて、連載はもう終わっちゃったのに、のこのこやってきた私を泣きそうな顔をして迎えてくれる街の人がいるのです。
私は私の描きたい気持ちで漫画を描くけれど、基本的にそれ以上の力があるとは全く思わないけれど、新幹線延伸の機会にたくさんの人に再会できたことで、「愛」というしかないようなものを形を持ったかがやきとして感じることができました。
99RadioServiceのコーヘイさんとコータさんは、いつの間にやら愛を新曲にしてくださるし!!
もうそんなことあるの。信じられない。目が眩む思いです。
重いものを背負って軽やかでいれるはずはないのですが、重さを持たない光としてだったらどれだけでも背負っていい。私は私で持ち場で最大限頑張りながら、希望と期待をすることをやめないでいいのだと思いました。
新幹線が来るのを今か今かと待っていたすべての地元の皆さんのように、奇跡みたいに大きなことが叶うことがあるのだと、キラキラした目で期待したい。
アニメの4期作ってもらえたらいいよねー!!見たいよねー!!
図々しくもそう思うことにしていくので、もしよかったら皆さんも言葉にしていって頂けたらと思います。言わずに叶う夢はありません。またあのキャスト皆さんで、あの途中のシーンもラストのシーンも、全部音と動きと一緒に見たい。
皆さんの夢もいろいろあると思います。言葉にして、耳で聞けるもの、目で読めるものにして、形にしてあげましょう。想いは想いのままでは消えてしまいます。
消さずにその形を人に示すには、あなたの体を通して伝えるしかないのです。何度も、何度でも。
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末次由紀のひみつノート
漫画家のプライベートの大したことないひみつの話。何かあったらすぐ漫画を書いてしまうので、プライベートで描いた漫画なども載せていきます。
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