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お正月デザイン入門


「今年はどんなお正月にする?」

12月の半ば過ぎ、クリスマス気分も盛り上がらないうちに、私の脳内でこの問いが浮上していました。え?今年のお正月?…いや、そもそも、お正月って“どんなふうにするか”を決めるものだったっけ?

子供の頃のお正月といえば、問答無用で親戚が集まり、賑やかに過ごすものでした。子供はお年玉をもらう係、大人はひたすら食べて飲んでしゃべる係。それが正月の「デフォルト設定」だったわけです。誰も選んでいないのに、自然とその形が出来上がっていました。
私の母の実家の佐賀県で過ごすお正月が原風景で、作礼山を見上げながら刈り取りの終わった畑で凧揚げするあの退屈と安心の時間が心の真ん中にどどーんとあります。

でも、結婚して別の家庭を持つとその過ごし方は終わりを告げました。
終わるんだってことも知らなかったものが、少しずつ形を変えていくのです。
親世代が少しずつ引退し、主導権がこちらに回ってきます。そして気づくんです。お正月って、クリスマスみたいに「誰かが用意してくれるもの」じゃなく、自分で設計しないといけないものなんだと。

巻き込まれるお正月の思い出

昔の我が家のお正月は、それはもう大規模イベント。親戚一同が祖父母の家に集まり、リビングは足の踏み場もないほど。テーブルには刺身やおせちが山盛りで、子供たちはゲーム機を持ち寄って騒ぎ、大人たちは紅白をバックに酒盛り。

子供だった私は「いつもの場所に行けば、いつものように楽しいお正月がある」と信じていました。準備の大変さなんて全く知らずに、ただその場に巻き込まれていただけだった日々。

でも、大人になった今振り返ると、あの賑やかさには膨大な準備があったはずということがわかってきます。祖母が早朝から作った数々の料理、祖父が裏山から切ってきた松で作っていた正月の門松。母が手配した買い出し、親戚間でのスケジュール調整…。その大変さを思うと、ちょっと眩暈がする。大人はみんな頑張っていたことが、大人になってわかります。

変わりゆくお正月、そして空白

やがて祖父母が高齢になり、親戚全体が集まるお正月は縮小され、場所も変わりました。自分の兄弟・いとこ世代がそれぞれの家族単位で過ごすようになると、「みんなで集まる正月」というものは固定観念だったのだとわかります。私が経験していたお正月も、誰かの固定観念が作り上げていたあったかくて優しくて忙しいひとつの様式でした。

そして、ぽっかり空いた空白の中で、私は問われることになります。「で、今年のお正月、どうするの?」

正直なところ、最初は面倒くさかった。「いっそ簡単に済ませちゃおう」と思って、カップラーメンとかスパゲティで過ごす正月もいいんじゃないか・・・。
でも、その簡単さはそのまま「寂しさ」と比例してしまうんですよね。あの雑然とした親戚の賑やかさが恋しくなってしまう。

お正月は通知表?

そんな経験を重ねて、今年ハッと思いました。よく言われるクリスマスよりも、私にとってはお正月は「大人の通知表」みたいだ…。

クリスマスはある意味誕生日に近い「受動的」なイベント。サンタが子供にプレゼントを配り、街全体が祝祭ムードになる。
でも主導権が渡ってからのお正月は、クリスマスより少し大きな規模で「自分で組み立てる」必要がある。準備を頑張れば賑やかになるし、手を抜けばシンプルになる。門松もお正月飾りもお屠蘇もやったってやらなくったっていいけど、どうチョイスしどうレイアウトする?
その結果が、まるで通知表のように、年明け早々の自分の気分として跳ね返ってくるのです。

幸せなお正月をデザインするには

では、どうすれば「幸せなお正月」を手に入れられるのか?
私は最近、自分なりの答えを見つけつつあります。それは、「準備と楽しさのバランスを取ること」。

例えば、親戚がたくさん集まらなくても、近しい友人や家族でちょっと特別な料理を作ってみる。おせちは全て手作りしなくても、好きなものだけ買って並べて、でも賑やかで華やかな飾りを加える。赤いテーブルランナーが我が家では活躍します。

ルーティンと新規性のバランスも大事で、初詣や見るテレビ番組などのルーティンイベントは大事にして、その隙間を埋めるボードゲームやお料理に新しい挑戦を入れ込む。
賑やかさは人数ではなく「ちょっとした工夫」で作れると少しだけ踏ん張る。

最近では、「お正月はこうでなければならない」という呪縛から少しずつ解放されつつあります。むしろ、自分たちらしい形を考えること自体が、お正月を豊かにしてくれる気がしています。

今年のお正月デザイン案

さて、今年はどんなお正月にしましょうか。私は思い切って「家族参加型」の企画を立てることにしました。全員が何か1つ、正月にやりたいことを提案する。子供たちは「スカイジョー!」「桃鉄!」「大縄跳び!」、夫は「昼からビールと刺身と『推しの子』一気見!」と早速盛り上がっています。

そして私の提案は、「書き初め大会」。普通に書道道具を出し、みんなで書くのです。今年の抱負や夢だとありきたりなので、2025年に絶対やらかしたくないことを。
手作りの料理と、手作りじゃない料理と、家族で笑う時間。派手ではないけれど、私たちらしいお正月をデザインしていきたいと思います。


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