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大人にとっても絵本は心の栄養となり水となる

一年程前に古本屋さんの店先で出会った絵本。
表紙はとてもシンプルで、デッサン画のような犬の絵だった。言葉はなく、絵だけなのに、そこに描かれている犬の表情が忘れられなくなった。

その時はお昼休みが終わる時間だったので、すぐに棚に戻して本屋さんを後にしたのだけれど、その後しばらくずっと心に残っていた。
ページには言葉がないのに、まるで1本の映画を観たかのように私の心に残記憶された。

子供のいない私は大人になってから絵本を読むことはほとんどなく、友達の子供へプレゼントするときに本屋さんで手に取る程度だった。
本が好きなので、きっと自分に子供がいたら沢山の絵本を買ってあげたいし、沢山読み聞かせしてあげたいと思っていたと思う。
でも、そんな生活に縁はなくて絵本を手に取ることはほとんどなかった。

そんな私が古本屋さんで出会った先ほどの本は、後から調べたのだが、ガブリエル・バンサンのアンジュールある犬の物語。

それからまた1年経って、去年の年末にまたもやお昼休みに立ち寄った古本市。
私の目が留まったのはガブリエル・バンサンのセレスティーヌ。
「あぁ、あの作者の絵本だ」と思い手に取った。

この絵本もとても印象的で、これをきっかけにこの作者の沢山の絵本に出会うことになった。
このセレスティーヌの絵本には、くまのアーネストおじさんのシリーズとしていろいろなお話があるのだが、セレスティーヌとアーネストの会話や描かれているしぐさは自分が子供だった頃を思い出す場面がありすぎて、とにかくお話に没入してしまう。
そして、描かれているセレスティーヌの仕草や雰囲気はまるで本当の子供のように愛おしい。

最近は寝る前にひとつお話を読むと、とても安心して眠れるようになった。
心がほっと休まる。
絵本は大人の私に子供の心を思い出させてくれ、やわらかくあたたかい気持ちにしてくれる。そしてとても幸福な気持ちにしてくれる。

子育てをしていない私は愛情をかける対象がないので、なんとなくいつも満たされない、さみしい思いがあった。でも、これらの絵本を読むことでその満たされない心のどこかがすこし満たされたような気がした。

絵本を読んで、やっぱり子供は愛おしい存在だと心から思う。
子供のいない私だけれど、絵本の中のセレスティーヌを愛おしいと思うことで、なんだかとても心が満たされた。きっと人の心は何かを愛したり慈しんだりすることで満たされるのだと、そして優しくなれるのだと思った。







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