駅
駅の待合室
ストーブは今日も
火をゆらゆらさせながら
冬の冷たい空気を
あたためる
プラスチックの
椅子に深々と座って
ぼんやりしている高校生
ちょっと疲れ気味で
眠たそうに
キオスクのおばちゃん
狭い空間で今日もゴソゴソ
さっきからずっと何かやっている
ヒマそうな時もあるが、
案外いつも忙しげだ
しばらく時間が経って
電車がフォームに入って来る
色んな人たちが急ぎ足で駅に集まって来る
みんな黒っぽい格好をしている
ハアハア白い息を吐いている
駅員に切符を切ってもらい、
改札を抜けて電車に次々と乗り込む
空いた席を見つけ、ゆっくりと腰を下ろす
互いに知らない者たちが、
今日もこれからあちこちへと運ばれて行く
みんなどこへ行くんだろう?
ほんとうにそこは行くべき場所なんだろうか?
そして、今は一体どこへ行ったんだろう?
各々が求めた場所に辿り着いたんだろうか?
あの日の彼や彼女や、知らない人々…
記憶の中の駅の待合室で、
僕は今日ぼんやり考えていた。
ストーブの火はゆらゆら燃えている。
眠たいような、懐かしいような空気が、
待合室には漂っていた。
「駅」詩・山田正史