かりんとう
あのお店のかりんとう
薄い板状だけど、
とんでもなく硬くて、
歯が割れそうなくらい
超ハードなかりんとうだった。
本の栞のようだったから、
よく買って駅前の本屋に
差し入れに持って行った。
黒糖と黒胡麻の風味が絶妙で、
とても美味しかった。
あのお店のおじいさんはいつも、
レジ横のソファにちょこんと座って
ひとりで小さなテレビを見ていた。
おじいさんはきっと、
昔のことを色々思い出しながら、
あのかりんとうを作り続けていたんだろう。
「人生はハード、でも臆さず噛んでみたら
甘くて深い味わいだって、きっとあるさ」
そういうメッセージだったのかもしれない。
あのお店のかりんとうは、もしかしたら。
いつも柔らかな微笑みを浮かべた、
おじいさんの超ハードなかりんとう。
昔、あの子と買いに行ったなあ…
「かりんとう」詩・山田正史