ハンバーグ弁当

子どもの頃、
僕が風邪をひいて
学校を休んで寝ていると、
あの人はいつも
町のはずれのチェーンの弁当屋で
ハンバーグ弁当を買ってきてくれた。

子どもの僕にも、
デミグラスソースのあの濃い味は
風邪で弱っている胃や胸に
さすがにムカムカとこたえた。
でも、無理にでも食べた。
せっかく買ってきてくれたんだし…

あの人は風邪をひいた子どもは、
ハンバーグ弁当を食べて栄養をつければ
すぐに治るもんだと思っていたんだろうか?
ハンバーグ弁当でなければ、
近所のラーメン屋の出前のチャーハンだった。
あのチャーハンもけっこう味が濃かった。

6月になると、
あの人のことをよく思い出す。
ハイカラな服と旅行が大好きだった。
「ハンバーグの太陽が今も、
僕をあったかく照らしてくれている」
昨日昼にハンバーグを食べていたら、
そう思ったんだ、おばあちゃん。

「ハンバーグ弁当」 詩・山田正史

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