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#474 10年あれば専門家になれる。料理研究家・和田明日香さんからの学び

先日、料理研究家の和田明日香さんの講演を聞く機会に恵まれました。

和田明日香さんは、現在テレ東で「和田明日香とゆる宅飲み」の番組をお持ちのほか、「家事ヤロウ!!」や「きょうの料理」など、料理研究家として多くのメディアに出演されていました。

私は普段からあまりテレビを見ないこともあり、和田明日香さんのことは実はそこまで存じ上げなかったのですが、先日ご本人のキャリアについて90分間直接お話を伺うことができ、多くのことを教えてもらいました。

業界が全く別のところで活躍されている方だからこそ、学ぶことは多くあります。

和田明日香さんは、私と同い年で、誕生日も1週間程度しか違わないことから、勝手に親近感を持ちました。同じくらいのタイミングで生まれてきた方も、私とは全く別のフィールドで活躍されている。全く違うからこその気付きについて、今日はまとめてみたいと思います。

まったくゼロの状態からキャリアスタート

まず和田明日香さんの経歴を伺って驚いたのは、「料理研究家」としてのキャリアをスタートさせたのは、人生中盤・全くのゼロの状態からということでした。今の旦那さんと結婚される前は、全く料理に興味がなかったし、あえて自分がやるものでもないと思っていたそうです。

たまたま、料理愛好家の平野レミさんの息子さんとご結婚されたというのがきっかけではあると思いますが、ご本人いわく「キャベツとレタスの違いも分からなかった」とのこと。
現在は、「料理研究家」という肩書きでお仕事をされていますが、結婚されて料理を作るようになり、姑の関係にあり「料理愛好家」として活躍されている平野レミさんが料理番組で面白おかしく取り上げるようになって・・・というところが、和田明日香さんの「料理研究家」としてのキャリアのスタートだったそうです。
しかも、それは15年ほど前の話とのこと。

てっきり、「料理研究科」というからには、料理の専門学校を出られているとか、小さなころから料理を作ってきた、という人生を歩んで来られたというイメージを持っていましたが、全くそんなことはないことに驚きです。

もちろん、物事には最初から向き・不向きもあると思いますが、ご本人の努力があれば、全くそれまで関心がなかった分野でも「第一人者」になれるということです。しかもそれは、何十年という時間が必ずしも必要というわけではなく、「ここだ」と感じた何らかの分野で旗を立て、目の前の仕事に対して工夫しながら創意工夫を続けることで、実現できるということを教えてもらった気がします。

15年というと、私のIT業界でのキャリアと同じです。情報スキルだけで比較をすれば上には上がたくさんいますが、独自の工夫とポジショニングで、「自分らしい」ポジションで専門家になることは十分に可能だと。

和田明日香さんの場合、平野レミさんに色々な場所に連れられたのがきっかけだとは思いますが、当然ご本人に魅力がないと続かないわけです。「社会科見学のような気分で、いろんな現場に足を運んで楽しんでいた」とおっしゃっていましたが、こうやって外の世界にたくさん飛び込んで、「自分はこの分野の専門家である」ということを認知してもらうための行動を続ける、そこで求められる価値を発揮するということを愚直に続けられてこそ、自分らしい仕事にたどり着けるのだなと。

これまでも色々な番組に出られていますが、冒頭ご紹介した「和田明日香とゆる宅飲み」では、料理とお酒を楽しみながら、色んなゲストと話が出来て毎回勉強になるし、一番自分らしくあれる番組だとおっしゃっていました。

今は全く足を踏み入れていない分野であれど、10年あれば「自分の専門領域を確立することは十分に成立する」ことを体現してくれる生き方、励みになります。

とにかく笑う、写真だけのプレゼンテーション

講演会を通じて感じたのは、プレゼンが非常にお上手ということです。
今回、和田明日香さんがご用意された写真だけのスライドを投影しながらお話されていましたが、とにかくお話が非常に上手。和田さんご自身も本当によく笑うし、聴衆の心を掴むのがお上手なのです。

IT業界の私が仕事で作る資料では、基本的に何かの文章が書いてあり、文章をいかにシャープに、ロジカルに組み立てるか、というところが普段求められるスキルです。
ある程度、資料が体系的・ロジカルに組み立てられていれば、その資料を投影していればある程度のプレゼンが可能です。

一方、和田明日香さんの90分近い講演では、写真だけなのですが、とにかく一つ一つのお話が流れていくように繋がっているんですね。
色々な場所でお話をされているからこそ培ったスキルだと思いますが、単なる「料理研究家」という肩書のみならず、このように「伝えるスキル」が抜群に長けているからこそ、その専門性を広く認知させることが出来ているのだろうなぁと。

コツの一つは、とにかく明るいです。声のトーンが「ドレミファソ」の「ソ」。プレゼンターが元気にお話するだけで、魅力的な時間に変わります。プレゼンテーションは「プレゼント」ですが、話し手のテンションや雰囲気が会場全体の雰囲気に伝播しますね。職場では、自己流でやりがちな「プレゼンテーションスキルの習得」に際して、このようなプロのプレゼンに触れることで、「相手が興味を持ってもらうための工夫が必要」と観点を持つことが大切だと考えさせられました。

「あるがまま」へのこだわり

テレビから求められる料理というのは、「電子レンジだけで◯◯が作れる!」とか「(通常1時間かかる料理が)たった3分でできる!」みたいな、分かりやすく多くの人の関心を惹きそうなネタらしいんですね。
番組の制作担当者に「こういうのどうですか?」と提案しても、「うーん、それだとパンチが足りないな」みたいなリアクションをされることも少なくなかったようです。

一方で、ご自身の3人の子育てにおいては、炊飯器のスイッチを押してから、ご飯が炊けるまでの30分間で以下におかずを作り切るかというところに野心を燃やしていたとのこと。徐々に「メディアへの提案内容と、リアルな自分の生活のギャップに違和感を感じるようになったとのことです。

そんな想いから、何気ない自分の家でのリアルな料理も発信したいと思うようになり、毎日インスタで家で作ったご飯をアップするようになりました。
すると、それを見た編集者から、「いつものインスタの写真を題材にして料理本を作りませんか?」と声がかかり完成したのが「10年かかって地味ごはん」です。

この体験からの示唆は、「あるがままの自分のスタイルこそコンテンツになる」ということです。

無理して背伸びしてやろうとしても、どこかで無理が来るし、やはり周囲から求められることへの違和感に嘘をつき続けることって限界があります。
はじめから自分流を貫くのも難しいですが、和田明日香さんのように、はじめは周囲から求められることに応えるところからスタートしつつも、徐々に自分で企画開発できることへのシフトって30代くらいに入ってくると重要だと感じます。

私も30代になってから「自分らしさ」に拘って仕事をするようになりましたが、業界は全く異なれど、キャリアの本質的なところは変わらないのだなと。

他分野の専門家からお話を伺うのは面白いですね。
私も他分野の誰かにとって、そんな存在になれるよう、オリジナルの専門性を追求していこうと思います。

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林 裕也@IT企業管理職 ×「グローバル・情報・探究」
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