見出し画像

今、必要な親密さと身体性:Time for time/Compagnie Marie Chouinard

昼のフランスから全世界へ、夜の日本へ生中継。11人のダンサーが別々の部屋に待機。オーディエンスはzoomの「手を挙げる」機能で参加、個人的な”wish“をダンサーに伝える。パフォーマンスはダンサーの顔のアップで始まり、ダンサーが即興で踊り、顔のアップで終わる。その繰り返し。100人ほどがオンラインで参加していたようだ。たった今終わった、3時間のパフォーマンスをリアルタイムレポート。

1人目。コロナ禍で子供も家にいてtenseな状態。どうやって身体を緩ませたらいいのか。

2人目。他の人と繋がるために、自分自身ともっと繋がるべきだ。

3人目。お互いを許し合う気持ちを失ってしまっている。子供を望んでいたが、作らなかったことを後悔している。

4人目。すべての重さから解放されたい。今ハートブレイクしたところだから。

5人目。中国語からの翻訳。2人で永遠に一緒にいたい。

6人目。2歳、4歳の親。子供が日々新しい動きを獲得していく喜びを目の当たりにしている。自分でももう一度感じたい。

7人目。英仏語圏外から。止まらないダンスを見たい。

8人目。ソーシャルディスタンスの中でどれだけ人が親密になれるか。

9人目。不足していってると感じる二つ。酸素が不足している。人との接触が減っている。他者と近づくには、流動性はどうやって再発見できるのか。

10人目。頑固さではなく寛容さに基づいたバランスをどうやって見つけたらいいのか。

11人目。身体的にだけでなく精神的に休息したい。

12人目。人に対して自信を持ちたい。男性に対しても女性に対しても。コロナ禍において閉じていった感じがする。自信を持って開いていきたい。

13人目。韓国から。もっと人々が自然を感じ、つながるようになりたい。

14人目。自分に怖さではなく強さを見つけたい。完璧主義をやめて自分を緩めたい。

15人目。マップのない世界に戻りたい。道に迷うことで新しいことを発見できるし、探検者になれる。知らないことに対しての興味。

16人目。母が3年前から病気になり、辛い。この悲痛を鎮めたい。

17人目。怖さや、今、周囲で起きていることに帰るのではなく、自分の身体が無限性につながり、結果として全員と繋がれるように。その世界の美しさ見つけられるように。

18人目。自分の外に対して平和な気持ちでいるために、自分に対して深く幸せを感じ、落ち着いた状態でありたい。

19人目。なりたい自分、父として、夫としての自分になれない怒りを自分自身に感じていて、これを取り除きたい。

20人目。もっと自分を愛して、ジャッジメンタルにならないようになりたい。他者にもっと与える自分であるために。

21人目。身体に感じるブロックと緊張を取り除きたい。

22人目。Listening is Loving.という言葉を聞いた。自分は人のことを聞いてないと小さい頃に言われてきた。最近よりこれが大事になってきていると感じている。

23人目。メンタルヘルスの問題にもっと同情する気持ちを持ちたい。

24人目。この期間に数人の親族を失った。一人で亡くなっていくのはとても辛い。そんな人たちに、最期の時間が一人ではなかったということを伝えたい。

25人目。自分の悲しみを世界に役立つ方法で使いたい。

26人目。母親であり、子供をケアしながら同時にアーティストであるだけの強さとエネルギーが欲しい。

27人目。自然や動物の声を聞いて、死を含む自分の人生を手にしたい。自分のアートのインスピレーションにしたい。それが平穏さ、寛容さ、喜びにつながる。

28人目。シャイになっている人に対して勇気を持って欲しい。

29人目。自分に対して、他人に対して抱いてしまうジャッジメンタルな気持ちを取り除きたい。

30人目。今はオンラインで何もしてないような時間を過ごしている気がしている。かつては感情を持って、スピリチュアルな感覚を持って飛び回っていた。

31人目。判断されるような気持ちではなく、自分自身の判断を表明していきたい。

32人目。この状況の中で、みんなが自分自身に回帰すること。

33人目。北の方の国から来た。季節性の鬱がある。この時期に光を灯してほしい。

34人目。劇として書きたいと思っていること。メープルの木と自分との関係を深めたいと思っている。

35人目。ここまでどうやって歩んできたのかを理解して、なぜここにいるのか、何を与えることができるのかを理解したい。死にたいしても、自分がいつか死ぬという事実に対しても平穏でありたい。

36人目。将来に対して、わからないものに対して不安を感じる。特に愛に関して。コミットすることに不安を感じる。不安からブロックされ、もっと将来に対して自信を持ちたい。


 世界中から表現された"wish"=心を、身体で受け止めて媒介するようなパフォーマンスだった。何十人ものリアルな、生々しいナラティブを世界中からリアルタイムで聞くというのは初めての体験だった。そのどれもが今性を感じ、そして共感できるものだった。その”wish”で世界中が繋がり、11のソーシャルディスタンシングされたダンサーのスタジオ間のネットワークが受け止めていく。オーディエンスとパフォーマーのネットワークの絡み合いを感じる座組みもすばらしかったし、その親密さにいたく感動した。よくわからないけどハイライトは34人目の方でした。言うまでもなく、それら全てを圧倒的に鍛錬された身体で表現していくありようにも感動。

 コロナ禍だからこそ、社会としては、個々のナラティブに思いを馳せ、親密さを広げていくことがどれだけ大事なことか。個人としては、これからのあり方として、身体に、感情に、自分がどう向き合っていくか。自分の今と、プロとしてのコンテンポラリーダンサーとの対比を通して、道を照らしてくれるようなパフォーマンスだった。最初はよくわからなかったけど、インタラクションが積み重なっていくことでじわじわ理解できて、本当に感動した。

 表題写真は、春の祭典をきっかけにCompagnie Marie Chouinardに出会った高知で撮った写真…を選ぶつもりが少なすぎて意味的に関係がなさそうな写真になった。が、それぞれに時間を経た多様なもののコレクティブで近接した存在という意味で、意外と当たってたりして。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?