[リスクの数学]数式を使わないコピュラの解説
「風が吹けば桶屋が儲かる」という言葉があります。世の中には見えないところでつながっているものがたくさんあることは容易に想像できます。
「本と私」、「あの人と私」、「ファッションと私」など、様々なものに対して関係性というものを考えることができます。
誤解を恐れずに言えば、関係性を言葉で表現することは比較的簡単です。例えば、身の回りのだれかを思い浮かべてみてください。その人のことを、あなた自身が友達だと思っていれば、あなたとその人は「友達」と言えます。
相手が友達だと思っていないかもしれない、という反論があるかもしれません。特段重要ではないのですが、「自分と相手が同時のそう思ったら友達」という制限で考えてもよいでしょう。
また、「友達以上恋人未満」というような表現もある通り、曖昧な関係性にも新しい言葉や、複雑な言葉を割り当てることができます。言葉の力はすごいです。
一方で、数学で関係性を表現することは難しい課題です。完全な比例関係であれば一次関数で表現することができますが、そんなにシンプルなものは現実にはあまりないわけですから。
コピュラは確率変数をつなぐ紐
2体の人形の動きを考えてみましょう。それぞれ自由に動かすことができます。手を上下させたり、立たせたり座らせたりすることができます。
その2つの人形の左手を、紐でつないでみるとどうでしょうか。これまではそれぞれ自由に動いていた人形ですが、紐でつながれた左手は連動します。
片方が上にあげれば、もう片方もそれに引っ張られて左手を上に上げます。この「2つの人形をつなぐ紐」がコピュラです。いろいろなコピュラが考えられます。
左手と右足をつなぐコピュラなどはもちろん、右手と左手・右足と左足をつなぐコピュラも考えられます。紐は一本である必要はありません。無数の糸を使えば、2つの人形を全く同じに動かすことも目指せるでしょう。
具体例
確率論の言葉を用いると、コピュラは「相関を持つ多次元の一様分布」と表現できます。相関を持つ一様分布から、逆関数法を用いて様々な確率分布からのサンプルを生成することができます。先ほどの例でいえば、確率変数が人形であり、それを結ぶ紐がコピュラと考えることができます。
シンプルな例として、2次元のコピュラと、そこからのサンプル(x, y)を考えます。また条件としてx=yの場合を考えましょう。
x=y、つまり、完全な相関を持つ確率変数のコピーを作るコピュラであるといえます。
xとyの関係性が、コピュラの本体です。正規コピュラ、tコピュラ、グンベルコピュラなど、様々なコピュラはそれぞれ異なるxとyの関係性を表現しています。例えば、tコピュラは正規コピュラより重いテールリスクをシミュレーションすることができます。
まとめ
このノートでは、コピュラを確率変数という人形を結ぶ紐であると表現しました。確率論の言葉でいえば、相関を持つ多次元一様分布から、逆関数法を用いることで様々な「分布」と「関係性の構造」を表現することができます。
とっつきにくい概念ですが、具体的なイメージを持てるととても便利なものに思えてきますね!
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