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子どもスポーツ指導について-引退後のキャリア-

 私は、24歳でフランスのプロリーグへ移籍し、プロラグビー選手になった。プロラグビー選手への経緯は、以前に記述。           「ラグビーフランスリーグへの移籍-プロラグビー選手を目指して-」https://note.com/yuya0428/n/n2f0e4d0902be

引退後のキャリア

 自身の強みである行動力が功を奏し、夢の実現へ繋がったものである。今回は、引退後に起業(スポーツ教室運営/企画)、スポーツ指導について書き記したい。

 ラグビー選手を引退後、直ぐにスポーツ指導の道へ進んだわけでなく、物販するなど(経緯はまたの機会に)スポーツ業界とは別の道へ進んだ。スポーツと関わりない世界で自立することを目的として物販を始めたのだが、営業先であるスポーツ施設がスポーツの世界へ(指導の道へ)引き戻す”きっかけ”となった。この“きっかけ”があったからこそ、子どもスポーツ指導という素晴らしい仕事に出会い、後のラグビー解説や他の仕事に繋がっている。そして何よりも子どもたちの成長が見られ、新たな感動を覚えた。自身の成長を図るうえで最も重要な場となっている。

スポーツ教室の目的

 2013年10月にスタートした教室は、「かけっこS&C」「チアダンス」「ボールパーク」である。立ち上げ当初の目的は、①子どもの競技選択肢を拡げる②トップアスリートを創る、この2点だった。特に「ボールパーク」は同じ子どもたちに野球、サッカー、ラグビー、フラッグフットボール(アメリカンフットボール)を毎週交互に経験できる場として、様々な球技における能力を伸ばすものである。

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 其々競技に特化するものでなく、“かけっこ”であれば、ただ足を速くする指導だけでなく様々な動作を取り入れ、他競技に活かせられるようにしている。子どもたちがトップアスリートになることを目標とし、一所懸命になれる教室を目指していた。

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 数年後、教室の目的が変わり私自身の考えを大きく変えることがあった。それは、保護者の方から「家で笑うようになった」「勉強するようになった」「学校帰りに公園で練習している」と涙ながらに話をしてくれる方が現れたことだ。ラグビー選手として感動することはあってもスポーツを離れてから味わうことがなかった感情を思い出した瞬間だった。
 それ以降の教室の目的は①子どもの可能性を最大限に伸ばす②子どもの競技選択肢を拡げることである。子どもに運動を通して自身の強みを見つけ、能力を伸ばす喜びを体感し自信を付けること。それが一所懸命になる(努力すること)楽しさを覚えるのだ。(努力の末、得られる成果、結果に喜ぶことが楽しさである)運動能力を上げることだけではない。スポーツ以外のことにも自発的に行動できる力を養うことにも繋がると実感している。またスポーツは、速く走ることやボールを遠くに飛ばすことが全てではなく、コミュニケーション力やチームワークによる“まとめる力”も重要であり、これを伸ばすことが他にも活かせられるのだ。

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スポーツ指導のポイント

 スポーツ指導には、「普及育成」「強化養成」の2点にある。ここでは「普及育成」についてのポイントである。
「普及育成」は誰もがその競技と楽しさを知ることができ、基礎体力(能力)を付ける必要がある。尚且つ継続的に運動のできる環境が必須である。
また、指導において子どもの心技体の成長が最大の目的であり、ラグビー憲章にある「品位・情熱・結束・規律・尊重」の軸に加え行動力、実行力を身に付けることが重要である。

 ポイントは以下4つ。
① 一所懸命になる
 子どもが夢中になれるトレーニングメニューを構築し、成功体験から楽しいと実感できるものにする。注意しなければならないのが、強制的な指導によってやる気が失せるなど、つまらないと感じさせてしまうと継続性に欠ける。成功失敗を繰り返しながらも向上心を抱ける指導を心掛ける。
② 強みを見出す・創出
 強みを発見し、それを伸ばしながら本人のやる気を引き出すこと。努力し成果や結果から得る喜びを実感することが、自信となり何事にもチャレンジする意欲に繋がる。
③ 自発的な行動の尊重
 子どもは面白い発想力を持っており、大人の価値観や経験からかけ離れていることがあり注視する。これはダメ、あれはダメと行動に制限すれば子どもの可能性を狭めることになる。※ルールの取り決めは必須
 子どもの言動を尊重することで自己判断し、正しい行動へ移すことができる。
④ チームワークの醸成(コミュニケーション力)
 団体競技だけでなく個人競技においても協力、助け合いから相乗的な力や効果を生み出すことを指導。またコミュニケーション力を養えるよう指導者と信頼関係を作ることが重要。

 以上のポイントを念頭に置いて指導に当たるが、若年層の指導において、これ限りではなく、常に流動的な指導が求められる。集中力が低下した際、顔色や動作を見て判断し、動きに制限を掛けるなど早急に対応しなければならない。集中力低下からケガに繋がる恐れがあるからだ。指導者は“安全”の確保を第一に考え、子どもたちは“安心”して運動ができる環境でなければならない。
 子どもスポーツ指導において、競技力向上のみならず人間力を身に付けることが、社会的にも生きる力を養えるものと考えている。

スキルアップについて

 子どものスキルアップにおいて、技術的な指導法は基本的に無としている。自身で考え実行に移した結果、成功する喜びを覚えるからである。例えばパスの成功法をひとつ教えることにより、コーチの枠でしか得られない知識であると同時に、自ら考えるアイデンティティ(独自性)に欠けてしまうからである。パスの目的目標設定を明確にすることが、子どものアイデンティティを引き出すことに繋がる。パスの正解であれば、狙ったところに放ることができ、受け手側は取りやすく思い描いたところでボールをもらうことである。方法論として多くの選択肢から成功法を導きながら、子どもの発想を引き出す。これが新たな発見に繋がることもあるのだ。

 数年前、こんな子どもがいた。スタートからゴールまでの間にボールを置き、途中でボールを拾いゴールまで走るというもの。通常、手でボールを拾いゴールまで走り、勝負の分け目は何だったのかを考えさせるものだ。(回答例として徐々に重心を低くしてボールを拾い、スピードを落とさないようにするなど)しかし、その子は手でボールを拾おうとはせずに足でボールを蹴り上げ、手に捕って走ろうとしたのだ。リスクは高いが走るスピードを落とさずにボールを蹴り上げて捕る方が速いという咄嗟(とっさ)に取った行動だった。指導者として、失敗した時こそコメントが重要だ。なぜ失敗したかを問うのではなく、皆と違う発想から実行したことを褒めるようにしている。次に失敗しなければ速かったことを認識すると、自主的に練習を始めるものだ。また、新たな発想を生み出しチャレンジする心を養うことができる。

 普及育成の観点から、技術的な向上よりも運動能力を上げることに重きを置いている。球技であれば7つのコーディネーショントレーニング(定位・変換・連結・反応・識別・リズム・バランス)を軸に空間認識力を付けることが重要だ。カラダの使い方を覚え、自身で思うようにカラダを動かすことが目的だ。更に練習法としてゲーム性(競争)を取り入れることで、頭とカラダで反応し状況判断から実行に移す能力を伸ばすことができる。
 子どもは競争が大好きである。

おわりに

 ラグビー選手引退後に多くの出会いと“きっかけ”を与えられ、今の仕事に繋がっている。指導者として経験を積む場所があり、感謝の気持ちを忘れずに日々、向上心をもって学び続ける指導者でありたい。
 この成長したいという意欲がなければ、指導者として現場に立つ資格がないと強く自分に言い聞かせている。

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斉藤祐也(さいとうゆうや)1977年4月28日生
高校1年からラグビーを始める。2年で高校日本代表に選出され、ウェールズ、イングラド遠征に参加。高校卒業後は明治大学に進学し、1年生からロックで出場。大学選手権優勝に貢献。卒業後はサントリーに入社し営業とラグビーを両立。約2年で退社し、フランス1部プロリーグコロミエに移籍する。帰国後は神戸製鋼、豊田自動織機に所属しプロラグビー選手として活動。35歳で引退し、株式会社コーディネーション・アカデミーを設立( http://www.coordination-academy.co.jp/ )。子どもたちに様々なスポーツを指導する教室を展開。ラグビー、スポーツ普及活動を中心にラグビー解説者を務める。フランスリーグ、シックスネーションズ、ワールドカップ2019決勝戦の解説を務めた。
ラグビー元日本代表(CAP14)2000-2002サントリー / 2002-2003コロミエ(仏) / 2003-2006神戸製鋼 / 2007-2011豊田自動織機
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斉藤祐也 YuyaSaito
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