T H I R D W A V E R vol.2
最近気になった新人アーティストを紹介する連載『T H I R D W A V E R』です。基本的には現時点でメディアではあまり取り上げられていなかったりするような海外のインディーアーティストを紹介していきます。今回で2回目。
Krush Puppies
Krush Puppiesはロンドンを拠点に活動する4人組で、5月6日にキャリア初のEP作品『Love Kills The Demons』を≪Holm Front Records≫からリリースしました。
Krush PuppiesはWarpaintのナチュラルな洗練さにGood Morning TVの癒しの効いた遊び心を潜ませる感じ。Goat Girlのように芯の通った強さを感じる佇まい。安らぎを与えつつも、『Love Kills the Demons』という作品名が印象的なように、どこか不誠実だったり不純だったりする何かをボコボコに殴っているような感触があってカッコイイのではないでしょうか。
DIYの<Get To Know>というインタビュー企画で組まれた質問が面白かったので紹介します。
思わずクスッとなるような回答も、サウンドにも現れているノスタルジックな世界観や宗教的な美意識、そして4人の友情で育まれた遊び心みたいな部分がカジュアルに伝わってくる面白い自己紹介だなと。
なお、リリース元の≪Holm Front Records≫はSports Teamが主宰するレーベルで、Sports Team以外にもこれまでにUgly、Personal Trainer、Walt Disco、MaxbandといったUK外の国も含めて良質なインディーアーティストのリリースを行っていて、そのセレクトの審美眼には流石のものを感じますね。
Divorce
UK/ノッティンガムを拠点に活動する4人組のDivorce。ノッティンガムはイングランドの中央辺りで、ロンドンから北に約200km弱のとこに位置した工業都市ですが、Sleaford Modsの出身地でもありますね。
5月31日にリリースされたばかりの『Pretty』は彼らの今後を一気に楽しみにさせるキラーチューン。陰鬱なイントロから、煌びやかなギターサウンドと女性ヴォーカルであるTiger Cohen-Towellのユースフルで人懐っこいコーラスワークが絡まれば、どこかアメリカのホームドラマを見ているようなコメディじみたハラハラさとユースフルな感覚に引き込まれて行きます。男性ヴォーカルのFelix Mackenzie-Barrowとの掛け合いは、どこか昭和歌謡のデュエット感もあって、面白く、新鮮で、そして唯一無二のポップさを覚える響きに感じました。
なお、TigerとFelixは元々Megatrainという別バンドも組んでおり、DivorceにはDo NothingのギタリストでもあるKasper Sandstrømがドラムメンバーとして参加。ギターはソロ・アーティストのAdam Peter Smithが担当しているとのことです。
Park Motive
ダークなエレクトロミュージックが深淵な場所で響いていて、美しさと鬱々しさに引きずり込まれていくように、その奏者を確認しにいったら、Park Motiveと名乗る音楽家がいた。みたいな。
"I have seen the beauty in decay(朽ち果てていくことの中に美しさを覚えた)"というこの楽曲(このアーティスト)の世界観を示唆したキラーワードを脅迫気味に叫びながら、重い空気感が一気にブレイクスルーしていく様は快感そのもの。Jamie xxとかを好きな方にも是非オススメしたいです。
音源で現在公開されているのは2曲。ちなみに1曲目は2016年のSlow Danceの4曲入りのコンピEPに収録。ちなみに、このコンピにはSorryのAsha LorenzのソロやKhazali、Glowsの楽曲も収録されていて、この当時からロンドンで起きていたことの興奮が改めて分かる貴重なEPにも思いました。
Sex, Fear
US/ウィスコンシン州のマディソン市(シカゴより北西に200kmぐらいの場所)のSex, Fear。おそらく2021年9月の結成と新しいバンドですが、早くも2022年5月6日に1st Albumの『Sex, Fear Presents:』をリリース。
USオルタナティブロック特有(伝統?)のローファイな部分やエモっぽい部分がありつつも、UKのサウスロンドンのシーン…具体的にはBlack Country, New RoadやSquidのようなアーティストへの意識も確実にあるサウンドは今後も面白い存在になる予感があります。アルバムのハイライトは『Funko Pop』という楽曲。7:22と長尺な楽曲の中には、前半の心地良い疾走感と後半の様々な楽器が入り混ざってはチルに突入するコントラストやトータルでのムード感には安らぎを覚えることでしょう。
作品の全体的なシリアス感とは対照的に、チキンディナーへの愛をやけくそに発散する『Chicken Dinner』という謎楽曲も(いちおうボーナストラックという扱いだそうです)。オールドタイプのパンクバンドでもここまで清々しい頭の悪そうな(褒めてます!)リリックもなかなか無い…
L'objectif
UK/リーズの4人組バンドのL'objectif。UK北部のウェストヨークシャー州及びその都市のリーズもロンドンに続くUKの発火点と言っても過言ではないくらいドンドンと新しく良いバンドが出現していますが、その中でも少し化けてきた印象と共に私的期待がグッと急上昇してきたのはL'objectif。
6月3日にEP『We Aren't Getting Out But Tonight We Might』をリリースしましたが、その中でも『Feeling Down』という楽曲を是非聴いてみて欲しいです。Only RealとSwim Deepが掛け合わさったような瑞々しく心地良い色気のあるグッドメロディーに思わずうっとりします。前作まではもう少し硬めなポストパンクなイメージを持っていて、それもそれで良かったんですが、今作で自分たちの色がバシッと明確になり、幅も広がってきたような感じもあって、バンドとしての成長や更なる期待を一気に覚えたEPでした。
EP収録曲の『Same Thing』はWorking Men's Clubにも対抗し得る闘う人間たちのダンスパンクなキラーチューン感が全開でこちらも素晴らしい。
ありがとうございました!
村田タケル
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≪New Indie Record 2022≫というタイトルで毎月追加更新のプレイリスト作っています。フォローして頂けたら嬉しいです。noteで紹介しているアーティストも当然リストインしていますし、それ以外の発見も必ずあるはずだと思っています。