その答え《小説場面切り抜き》
「どうして…お前はここまで抵抗する!?」
目の前に立つ男は、息絶え絶えでもなお立ち塞がり真っ直ぐな瞳でこちらをみている。
勢いだけで振るった筈の一刀はしっかりと左脇腹から右肩にかけてその身体を斬っていた。
「世界は間もなく終わる、この流れを見ろ!もう何もかも終わるんだよ!なのにお前は…お前達は抵抗する!?」
お前達?
その言葉に隣から気配を感じて横目で見るとさっき吹っ飛ばされたデカブツが肩で息をしながら真っ直ぐに奴を睨みつけていた。
俺もしぶといけどお前もなかなかだね。
そう思うと口元が緩み笑を零してしまった。
デカブツもそんな俺の考えに気づいたのか口元に笑みを浮かべていた。
「笑ったもん勝ちだ!」
あぁ、こんな場面をあの人が見たら豪快に笑いながら言うんだろうなぁ…
「答えろ!」
目の前の男は、苦悶の表情を浮かべながら両手を広げた。
渦巻く翡翠の光の風の中心、神秘的で、絶望的な風景をぼんやりと眺める様に見上げた。
「知るか」
俺の返した言葉に目の前の男の眉間により深い皺が刻まれる。
理解し難いのだろう。
そりゃそうだ、そっちは己の正義を全うする為に日本を滅ぼし、世界を滅ぼすまでの力を手に入れ、そして実行した。
60年以上の歳月をかけて、大事な人をつまらない正義の為に殺された復讐だ。
俺がアンタならこんな事は、出来なかっただろう。
本当に凄い執念だよ、恐れ入る。
だけど、そんな事は俺にはわからん。
なんでアンタの邪魔をするか、なんでだろうな。
復讐したところでアイツやあの人達はもう帰ってこない。
ここまで滅びかけた世界を助けてもどうせ、この先長く生きても行けないだろう。
だけど…
「もし、一つ答えがあるとすれば、俺はアンタの正義にNOってだけだ、アンタの正義を全うさせない、ただそれだけだ、どうせこの先の答えが変わらないからといってそれを譲るつもりがないって事だよ、それが俺の答えだ」
目の前の男の顔がより深く歪む。
「来るぞ」
デカブツが息を整えながら言ってくる。
言われなくてもわかってるよ、あの表情にゆっくりと変化する足の位置。
一気に締めにかかって来る筈だ。
集中しろ、意識を身体を、全てをこの一戦にかけろ。