障害者雇用とは、なかなか難しいもので、大企業だと、法定雇用率守れない場合に、ひろゆきさんが言うように、罰金払ってごめんなさいというわけにはいかない。
大企業は「社会的信用」を担保するために雇わなくてはならないのだ。
そうすると、経営者と現場の立場から、「障害者雇用」の位置付けの解離が見えてくる。
経営者目線では社会的信頼の位置付けからの「担保的役割」という意味での雇用をしており、現場目線では、人間が1人いるのだから「戦力」という意味での雇用だと思うのだ。
そうすると、経営者と現場の雇用の意識も異なっており、経営者の側からは、大人しくそこにいてくれる人を雇用したいと思っていて、現場では戦力の1人として活躍してくれる人員を雇用したいと思っている。
一方で、現場では、お人形さんみたいで何もしない人間が雇われたと思うし、経営者側からのそうした本音の説明もないので、現場の障害者雇用の人と社員とではギスギスした関係になってしまう。
一般的には、障害者雇用は、体が不自由だが、知能や思考能力は一般の人と変わらない「身体障害者」を積極採用しているとの見解もあるが、実際はそうではないと思う。
経営者側が戦力の1人にしたい場合は、身体障害者積極採用を行うだろうが、社会的信頼の担保を獲得したい大企業は、身体障害者、精神障害者、知的障害者の区別ではなく、おとなしい人かそうでないかの区別で選考するのであろう。
我がメール室に配属された障害者雇用のおじいさんは、年齢が70過ぎ、郵便の仕事がない時は、寝ているおとなしい加藤さんというおじいさんだった。
彼は、「身体障害者」というくくりで採用された。確かに足が不自由で歩く速度は遅く、郵便の仕事も椅子に座って仕分けしていた。
しかし、身体障害者なら理解力や思考能力は健常者と変わらないはずだ。そのように考えていたが、加藤さんは物の位置や郵便の向きがいつもと違うと文句を言うし、毎日、同じ時間に同じことをするのが日課のようだ。
また、郵便の宛先も何度言っても覚えてくれず、わからないものは、何年経っても同じ質問を繰り返す。
そして、「人事課」と書かれていれば、人事課のボックスに入れられるのだが、「12階人事課」と書かれるとどこに入れたら良いかわからなくなるのだ。
…加藤さん、身体障害よりも発達障害と知的障害の症状が重い気がする。
私はそう考えたが、周囲は
だって「障害者雇用」なんだし仕方ないんじゃない?という反応だった。私以外の人たちからすれば、障害者雇用はどんな障害があろうが「障害者雇用」というひとくくりなのだ。


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