おっかさん風美容師さんをさがしつづける
10年間で、3回以上同じ美容室で切ってもらったことがない。
なぜこんなにおんなじ美容室に通い続けることができないのかしら。
はて…と思ったことを書いてみたい。
金額重視の20代。
500円玉貯金の貯金箱は、2000円も貯まらぬうちに、カッターで切れ目を入れて抜いていた。
目指せハワイ旅行!なんて書かなきゃ良かった。
貯金箱にはかわいそうなことしたよ。
ホットペッパーで探すと、新規の方がだいぶお得なので、毎回新規でいっていた。
♦︎
そろそろ新しい美容室に行くのも疲れてきた30代。
「何されてるんですか〜〜?」
「アッ、えっとぉ、一応フツーに働いてマス」
「あっ、お子さんいらっしゃるんですねぇ〜〜。えっ、3人もですか?見えないですぅ〜」
「げへへ」
とかを
数ヶ月に一回1からやるのも面倒になってきてしまった。
優しい美容師さんたちのお世辞も、だんだんむなしさを感じるようになってきたのは、歳のせいなのか。なぜだろう。
できれば私がカット中にどうしてもおしっこを我慢できなくなったとしても
「おしっこ漏れそう!トイレに行ってくらぁ!」
と言えそうなぐらいの距離感の美容師さんがいい。
よく膀胱炎を繰り返してしまうので、
キッチンの
「火の用心」のお札の横に
「尿の用心」と貼って意識づけしているほどで、そこは非常に重要である。
ドリンクを聞かなくても、
「いつものアイスティーのストレートでいい?」
と言ってほしい。
「わたし、10年間ずっと一緒の美容師さんに切ってもらってるんだッ。」
と友達に言いたい。
♦︎
今までに行った美容室だって、決して悪くなかった。
だけど、「この美容師さんに切ってもらいたい!」とか「ここの美容室がいい!」
という決定打がなかったというか。
ちょっといいな。と思うと、予約が全然取れないとかで、結局遠のいちゃうというパターンもあったり。
(近くていい美容室、どこかにないかなぁ…)
かれこれ5年以上は心の端っこの方でそんな思いがすやすや眠っており、
髪の毛を切りたくなるとその思いがまたノコノコ現れては、またスヤスヤ眠っていた。
一体全体どんな美容師さんを探しているのだろう…自分は。
田舎ものなので、
キラキラしていておっシャレ〜感満載な場所とかがとても苦手なんです。
青山とかの洒落たカフェとか入れないんです。
そういう場所って例えば自分のパンツがヨレヨレなことも、靴下に穴が空いていることも許してもらえないような気がしてビビる。自分の思いこみなんですが。
近所のおばちゃんがやってる、ちょっとくたびれちゃってる喫茶店くらいがちょうど良くて。キラキラスポットは眩しすぎて目にも心臓にも悪い。
大体の美容室って内装も店員さんも大体オシャレだから、結構緊張してしまって。
自分の気持ちをしっかり伝えられなかったりする。
「あっ、ハ、ハイ。そんな感じでお願いしまッス」
みたいにいつも言っちゃう。
で、(あれ、本当はこうしたいって思ってたのに、なんで言えなかったんだろう私…)
と後で後悔したりする。
カットとカラーをすれば短くても2時間は美容室にいることになる。
みず知らぬ人と2時間も上部だけのトークをするのがしんどい私にとっては、
自分のことを気楽に話せて、その話を通して癒されたり、元気になれたりするような
そんな美容師さんを探し続けているのだが、どこに隠れているのだか、なかなかいない。
夫などは、美容師さんと話すのが苦痛なあまり、かれこれ10年以上は自分で髪の毛を切っている。
私より人見知りな夫は、初対面でも安心できる人はほぼいないそうだ。
しいて言うなら給食のおばちゃんくらいだと言っている。
給食のおばちゃん風で、お腹がちょっと出ていて、顔もふっくらしていて、割烹着を着ていて、永遠に優しくて、カボチャの煮物を出してくれるような美容師さんが良いらしい。
いないわそんな美容師。
そのニュアンスに近い美容師さんがいるとしたら、
街に昔からあるレトロな「パーラーFUMIKO」的な美容室にいるかもしれない。
しかしパーラーFUMIKOでは、夫が
「RADWIMPSの野田洋次郎風にしてください」と言っても、五木ひろしになる可能性がある。
結果、夫が求める美容師はいないという結論が出たのだそうだ。
自分が「こんな風にしたいです」「こんな髪型にチャレンジしたい」「おしっこ漏れそう」って気軽に話せて、髪のデザインの微妙なニュアンスをわかってくれるスーパー美容師さん、どこかにいないかなぁ。
そう考えると、美容室は髪の毛を切りに行くだけの場所ではないということなのかもしれないなァ。
切ってもらいながら美容師さんとの会話で癒されたり、シャンプー中に気持ちよくて一瞬寝ちゃったり、雑誌をみて今日の夕飯をのんびり考えたりすることが、気兼ねなくできて、髪の毛も心もスッキリして帰る。そんな髪と心の癒しスポットなのかもしれない。
夫があきらめた、カボチャ煮を出してくれそうな、おっかさん美容師さんはいないと思うが、
自分をさらけ出せて、どんなオーダーも、いや、オーダーをした私丸ごとぜんぶ受け入れてくれるような、でっけえ美容師さんにいつか出会えたらいいなぁと思っています。
おしまい
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