人付き合いを解決!『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
『自分の小さな「箱」から脱出する方法』は、人付き合いがうまくできない原因を体験させてくれる本です。
物語形式になっており、会話で話が進むのでとてもわかりやすく、読んでいてたくさん共感できます。
さらに、わかるわかるという理解だけで終わらないのがこの本です。
コミュニケーションの真髄というか、当たり前のことなんだけど、それを思い出させてくれる本です。
コミュニケーションが上手くいかないのは、間違いなくこの書籍に書かれていることが原因です。
具体的な解決方法は載っていません。しかし、自分がどうしなければいけないのか、どう在るべきかを教えてくれます。
思っていることは伝わってしまう
この本を一言で言うと、『思っていることは伝わる』だと思います。
嫌いだと思っている人にはそれが伝わるし、好きだと思っている人にはそれが伝わります。
それを知らずに、コミュニケーションを技術で行おうとすると、大きな問題が起こります。
たとえば、嫌いな人に、人付き合いがうまくいく方法を試すとどうなるでしょうか?
相手は、こちらが嫌いだと分かっています。
そんな人から、普段と違う態度や、言葉遣いをかけられたら、当然警戒します。
何かを企んでいる、見えすいた嘘だ…、相手はこのように思うかもしれません。
もし仮に、『思っていることは伝わる』が正しいなら、うわべだけの方法を使うのは大変危険です。
なので書籍では
・相手に思っていることが伝わってしまうプロセス
・相手の見方を変えよう(箱から出ると表現します)
を詳細に教えてくれます。
しかし、この書籍では、見方を変える方法は教えてくれません。
『何かをすればコミュニケーションの問題は解決する』という考えが、コミュニケーションに問題を起こすからです。
自分をあざむく自己肯定と自己否定
例えば、失敗して怒られたとき、どのように考えていますか?
誰かのせいにしたり、自分の失敗を嘆いたり、それを忘れようと努力したりしていませんか?
誰かのせいにした時は、失敗した原因は他にあり自分は悪くないと考えます。これは、自己肯定です。
自分のせいにした時は、失敗した原因は自分にあり、なぜあんな失敗をしてしまったのかと考えます。これは、自己否定です。
私たちは感情が大きく揺さぶられた時(喜怒哀楽)に、心を落ち着けようと自分をコントロールしようとします。
自己肯定や自己否定もそういう性格だからやってしまうのではなく、心を落ち着ける方法としていつも同じことをしている、というだけです。
自分の意識とは関係なく、ほぼ自動的に行っています。
実は、これが相手の見方を大きく変えてしまいます。
自己肯定をすると必要以上に自分を良い人だと見ます。
自己否定をすると必要以上に自分を悪い人だと見ます。
どちらも、真実でしょうか?
ただただ、自分の気持ちを落ち着けるための、『言い訳』や『自己弁護』かもしれません。
しかし、どこかでそれを納得している部分もあります。
あらゆる見方をゆがめてしまう
書籍ではこれを『自己欺瞞』だと伝えています。
自分自身を欺いていると。
そして、この自己欺瞞が、いろいろな物事の見方を歪めてしまい、コミュニケーションの問題が起こります。
思っていることが伝わるなら、この『自己欺瞞』はまずいことになります。
必要以上に自分を良いように見たり、必要以上に相手を悪いように見たりするからです。
繰り返し自分を納得し続けた結果、事実とは異なることをいつの間にか信じてしまうようになります。
自己洗脳です。
そうすると、ますます人付き合いがうまくいかなくなります。
嫌いな人からは距離を取り、自分と合う人としかコミュニケーションが取れなくなります。
また、この自己欺瞞は、あらゆる見方をゆがめてしまいますので、相性が良いと思っている人とのコミュニケーションも壊してしまう可能性があります。
コミュニケーションで一番大事なこと
最初にお伝えしましたが、この本は解決する方法は教えてくれません。
あくまで、『思っていることは伝わる』と『自己欺瞞がコミュニケーションの問題を起こしている』ということを教えてくれる本です。
思っていることが伝らない方法や、自己欺瞞を止める方法もありません。
しかしヒントは与えてくれています。
それは、『今、私の見方はゆがんでいるのではないか?と疑う』ということです。
自己洗脳に陥っている時には、そのことに気がつきません。
洗脳が解けたときに、あのとき洗脳されていたということに気づけます。
ということは、自分の見方が歪み、自己欺瞞してしまっているときに、それに気がつくことができれば、その洗脳からは解放されます。
しかし、そう単純なものでもありません。
書籍でも繰り返し、この自己欺瞞に陥る罠について書かれています。
それは、常にその罠にかかる可能があるということです。
解決方法が書かれていないのは、これをすれば解決できる、という罠に陥らないためだと思います。
なぜなら1番大事なのは、『思っていることは伝わる』と『自己欺瞞がコミュニケーションの問題を起こしている』だからです。
実はこのことがしっかり理解でき、その罠に陥りそうなときにこれを思い出すことができれば、この本の役割は終えていると思います。
これが理解できていれば、必要以上に自分を擁護することも、相手を貶すことも不要だからです。
心が大きく動揺したときも、自己欺瞞で見方を歪めるような考えをするのではなく、心が落ち着くまで待ってみたり、そのことから少し距離を置いて、心が安定するまで待てばいいだけだからです。
コミュニケーションの技法(声かけや、態度など)は、この本を理解せず実行しても、効果がありません。
どれだけ愛想良く接しても、嫌だと思っている気持ちは伝わってしまいます。
そうすると、方法はそこまで重要ではなくなります。
だからといって、嫌いな人を好きになる必要もありません。
そうした自分をコントロールしようとすることが、『自己欺瞞』だからです。
コミュニケーションが上手くいかないときは、『今、私の見方はゆがんでいるのではないか?と疑う』。
人付き合いはそれだけ分かっていれば良いと教えてくれます。