見出し画像

2022 年間ベストアルバム50

さてさてさてさてさてさてさてさて、ベストEPに続いて、年間ベストアルバムをまとめましたよ。450枚くらい聴いてその中の50枚です。

<選定基準>
・10周以上聴いた
圧倒的主観

過去のベスト記事も含め、以下のマガジンにもまとめてます。

前置きは割愛して早速いきます。

50-41

50. Freddie Gibbs / $oul $old $eparately

Warner Records / USA

Freddie Gibbsのくぐもったゴツイ声が好きなんだ。トラックもかっこいい。これまでにタッグを組んだThe Alchemist (M2)やMadlib (M14)だけでなく、James Blake (M11)やKaytranada (M4)もプロデューサーとして加わっている。というかクレジットを見ると全曲プロデューサーが異なるようで、M10なんかはThree 6 MafiaのDJ Paulが参加しているみたいだ。豪華だ。ソウルサンプリングブーンバップからサウスの香り漂うトラップビートまで、これだけバラエティに富む内容(と人選)なのに、アルバム通して聴くと一本の筋が通ってるように聴こえるのが不思議。それは一重にFreddie Gibbsのキャラクターの強さとソウルによるものだろう。

songwhip

49. Mister Water Wet / Top Natural Drum

Soda Gong / USA

Soda Gongというレーベル(TURNで紹介されていた)からのリリース。Mister Water Wetは過去にはHuerco S.のレーベルでお馴染みのWest Mineralからもリリースしていたようだ(未チェック)。エレクトロニカ〜アンビエントの文脈で捉えられると思うんだけど、少し埃っぽいジャズやヒップホップのような感触もあり、電子的というよりは土着的なテクスチャーをしている。未だに掴みきれていないんだけど、そんな不思議な感覚が奇妙な中毒性を生んでいると思う。

songwhip

48. tofubeats / REFLECTION

Warner Music Japan / Japan

「トーフビーツの難聴日記」を片手に繰り返し聴いていたら、かなりの愛聴盤に。本人はそんな風に思ってなさそうだけど、tofubeatsって真面目で内省的だよね。朝ダンや水星で登場してきたので、結構アーバンでアッパーな人ってイメージだったけど、本質は"PEAK TIME"とか"SMILE"とか、過去の曲だったら"SHOPPINGMALL"といったダンスが根底にあるんだけど全く隠しきれていない(隠す気もないんだと思うけど)ダウナーさにあると思うし、だからこそ信頼できる。ライブもいつも緩くて肩肘張らないし(多分意図的にそういう雰囲気を作ってるんだと思う)、だからこっちも気楽に見れてほんと自分にとって大切なアーティストの一人です。

songwhip

47. Vladislav Delay / Isoviha

Planet Mu / UK

フィンランドのSasu Rippati aka Vladislav Delay大先生の新譜は、再生ボタンを押すたびにあまりに暴力的なノイズと強烈な重低音が爆音で流れてくるので思わず笑ってしまう。この人の最近のアルバム(Rakkaシリーズ)はどれも大自然の猛威を表現するかのような音世界だが、今作もそれと地続きで、何もない切り立った崖の上で半端じゃない勢いの暴風雨に晒され、それに何とか耐えている自分が頭に浮かんでくる。もしくは人間の頭の中に渦巻く狂気をループさせているかのような音楽とも言えるかもしれない。元々Chain Reactionからのミニマルダブテクノや、Luomo名義でのラグジュアリーなハウスミュージックなどで知ったアーティストだけど、今はまた全然違う独自の世界観を構築しているので、今後どこに向かっていくか楽しみ。

ちなみに、Twitterで感想を呟いたらご本人からわざわざ英語に翻訳された上で引用RTされました。浮世離れしてる印象を勝手に持ってたけど、意外とエゴサするタイプっぽいので、要注意!

songwhip

46. Sam Wilkes & Jacob Mann / Perform the Compositions of Sam Wilkes & Jacob Mann

Leaving Records / USA

このアトモスフィリックジャズよ・・・!!!これぞSam Wilkes的な音楽で好きすぎる。思えばSam Gendelとの共作アルバムが特に好きなのもSam Wilkesの作る空気感に寄るところが大きい。アンビエントジャズということで昨年リリースのNala Sinephroみたいな感じもあるが、とにかくホワホワと当て所なく漂う空気感が気持ちが良く、この音楽にお香とウィスキーでも準備したら大人で上質な時間を過ごせること間違いない。来日ライブも高評価だったようで何より。

songwhip

45. Smoke Point / Smoke Point

Geographic North / USA

ロサンゼルスのデュオによるグッド・ドリーム・アンビエント・ダンスミュージック。柔らかくメロディックなサウンドスケープはもちろん大好物の代物で、細かく刻まれるハイなリズムやポーンと響く重低音はちょうど良い音圧とミニマルさ。ダンスにも寄りきらず、チルアウトにも寄りきらず、その両方の良いとこ取りのような内容は、ホームリスナーである自分のような人間にとっては打ってつけの内容だった。

songwhip

44. kangding ray / Ultrachroma

ara / Germany

最近Rawで抽象的な電子音楽作品に惹かれることが多かった中で、今年一番惹かれたパキッとしたテクノ/エレクトロニック作品はフランス出身、ベルリン拠点で活動するKangding rayのこれ。ダークで冷たいアンビエントな音像やカーンと響くIDM宜しくな多彩なビートからはベルリンらしさを十二分に感じ、繊細なエレクトロニクスがその表情を鮮やかに染める様からは未来的で洗練された印象を受ける。まさにこのジャケットとタイトルに相応しい音楽で、アルバムとしてかなり優れているのではないでしょうか??

songwhip

43. Destroyer / LABYRINTHITIS

Merge Records / USA

僕たちのDestroyerの待望の新譜は、空間的なサウンドデザインが健在の中、彼らのキャリアの中でもキャッチーでダンサブルな楽曲が揃っていてかなり聴きやすい作品。優雅なサウンドスケープは当然のことながら、ニューウェイヴっぽい不穏さも、突然ギャンギャン鳴り出すギターの響きも、ブリブリとファンキーに跳ねるベースラインも、Dan Bejarの抑制された中にも熱いものを感じる絶妙な温度感のボーカルも、全てが愛おしい。超名盤「Kaputt」と並んで入門盤にかなり良いと思う。あと余談だけど、Dan Bejarの英語ってクリアで聞きとりやすい。

感想記事

songwhip

42. Alexi Baris / Support Surfaces

Soda Gong / USA

バンクーバー拠点の電子音楽家Alexi Barisによる素晴らしきエレクトロニカ作品。Mister Water Wetのアルバムと同様、Soda Gongからのリリース。最透き通るようなシンセとアコースティック音源、フィールドレコーディングの境界がぼやけて溶け合うようなサウンドは、まるで水彩画で描かれた秘境のイメージを呼び起こす。そしてジリジリとしたグリッチサウンドが良い塩梅にアクセントになっていて最高なんですよね。いやはや、これは気持ち良すぎて参った・・・。

songwhip

41. Yunzero / Butterfly DNA

West Mineral Ltd. / USA

Huerco S.主宰のWest Mineral Ltd.より、メルボルンからの新たな刺客。最早レーベルカラーとなっているダブアンビエント的要素を基本に、奇妙な素材のサンプリング断片が散りばめられ、各曲2分程度でテンポも雰囲気もバラバラなのにコンパクトな分シームレスと、最終的にはアルバムとしてよくまとまっている。どうも8年くらいかけて素材集めをしていたらしく、その分一つ一つのサウンドは厳選されておりとてもユニーク、かつ曲によって浸ってOK、踊ってOKと多様な楽しみ方ができる一枚になっている。

bandcamp

40-31

40. Daphni / Cherry

Jiaolong / UK

前にもnoteに書いてるんだけど、Caribou / Daphni aka Dan Snaithは絶対に誠実な男だと思う。特に根拠はないが、これまでの彼のディスコグラフィを聴いているとそう感じる。というわけで、Daphni名義の3作目も実に誠実なダンスミュージック集になっていた。Daphni名義ではもう少しアタック感の強いバキバキ系ダンスミュージックを作っていた印象だが、今作はCaribouのアルバムで聴けるような割と洗練されたダンスミュージックが多い。フロアでシームレスにかけても全く違和感なさそうだ。そういう意味では物足りなさも感じなくはないが、そう思ってこのアルバムを再生すると、ユーモアに溢れていてカラフルでそして踊れるということでやっぱり文句ないなと思い直すのである。

songwhip

39. JID / The Forever Story

Dreamville / USA

アトランタのラッパーJIDの3rd。初めで聴いたけど、とにかくテクニカルなラップと幅の広い表現力が強烈な印象を与えた。裏声、低音、高音、早口ラップから歌ものまで、全く飽きがこない。ケンドリックと比較したくなるくらい、相当なスキルの持ち主であることがよくわかる。ビートスイッチも最高だし、トラップ調だったりソウルフルでジャジーなブーンバップだったりするトラックも相当好みだった。KAYTRANADA参加でOutkastみたいなM5、21SavageがフィーチャーされたソウルフルなM6、Ari Lennoxの歌とビートスイッチが最高のM10、James BlakeプロデュースでThundercatのベースが光るM15あたりが特にお気に入り。

songwhip

38. Cate Le Bon / Pompeii 

Mexican Summer / USA

ウェールズ出身Cate Le Bonの6枚目。自分は今作で初めて知ったんだけど、独特の歌声とミニマルで不思議な感覚が残るアートなサウンドがクセになる。ベースで作曲されたらしく、だからかベースラインが印象的で楽曲の骨格となっている。包み込むように溶け合うシンセ、サックス、ドラムの音色も深みがあり、ベルリン期のボウイを思い出すような魅力が確かにある。最初はまあまあ好き程度だったけど、聴けば聴くほどズブズブにハマる。

songwhip

37. Spoon / Lucifer On The Sofa

Matador / USA

Spoonも自分にとっては思い入れの深いバンドで、このアルバムの先行曲であるM2ではバチバチにカッコいいロックンロールを奏でており、リリース前から大層心を躍らせていたのを思い出す。このアルバムは彼らのキャリアハイでは決してないものの、全体的に良曲が揃っており、とてもいいアルバムだと思う。ただ、今となっては新鮮味が薄れたこともあって年ベスに入れるか悩んでいたが、先日Adrian Sherwoodによるダブリミックスアルバムを聴いたらもうすっかりやられてしまい、やっぱりリストに入れることにした。元々音響面にこだわりまくりのロックバンドであるSpoonがダブに興味を持つのは必然だったなと。ダブリミックスを聴いた後にこのアルバムを聴くとまた違った良さを感じるので、二度美味しい。ごちそうさまでした。

過去の感想記事

songwhip

36. Nicholas Craven & Boldy James / Fair Exchange No Robbery

Nicholas Craven Productions / USA

デトロイトのラッパーBoldy Jamesと、Mach-HommyやArmand Hammer等のアルバムでもクレジットされているカナダのプロデューサーNicholas Cravenのコラボアルバム。とにかくサンプリングセンスがツボ。60s-70sソウル(たぶん)のボーカルネタを上手に活用され、印象的なフックがたくさんある。一方で、GriseldaのBoldy Jamesのぶっきらぼうでハードボイルドなラップが、楽曲の雰囲気をしっかりと引き締め、普通のブーンバップではなくアンダーグラウンドな香り漂う危険なヒップホップとなっている。かっこいいです。

songwhip

35. Ulla / Foam

3XL / Germany

Huerco S.周りのアーティストとして有名なUlla Strausの新譜。Alexi Barisもグリッチ/エレクトロニカであったが、Ullaもまさかのグリッチであった。なんだなんだ、今またグリッチがきているのか?この素晴らしきグリッチ/ジャズ的なループ音楽からはJan Jelinekの大傑作「Loop-Finding-Jazz-Records」をさらに優しくポップに仕上げたような感覚を受ける。また、白昼夢的なアンビエントダブはこれまでの作品と地続きながら、繊細なピアノループや儚いボーカル使いが非常に特徴的であり、Ullaの新たな一面が見られるアルバムでもある。そして、Ullaの音楽は無機質とは真逆の人懐っこさがあるなと感じていて、そこが好きだなといつも思う。

songwhip

34. Makaya McCraven / In These Times

Nonesuch / USA
International Anthem Recording Company / USA
XL Recordings / UK

Gil-Scott Heroneやブルーノート音源の再構築アルバムでビートの魔術師と呼ばれる(?)由縁を遺憾なく発揮していたMakaya McCravenの新作が想像を超えて良かった。前作等はもっとヒップホップよりでビートの強さと面白さを感じたが、今作ではこれまでと比較するとビートは少し控えめに、その分ハープをはじめとしたストリングスが全面に出て、シンフォニックな空気感を醸し出す。このシンフォニーな質感が、非常に今っぽくもあり、一方ではタイムレスでもあって良かったなと。ビートは控えめと言いつつもそれは過去作と比較した場合の相対的な話であって、複雑な変拍子ビートから生まれる心地よいグルーヴは健在である。生演奏とプログラミングの妙が最高の一枚

songwhip

33. Takuro Okada / Betsu No Jikan

NEWHERE MUSIC / Japan

岡田拓郎と石若駿との即興演奏にJim O'RoukeやSam Gendel、細野晴臣などなどの錚々たるメンツが即興演奏を被せ、さらにそれを編集して制作されたという怪作。岡田拓郎は、森は生きているのような音響フォークやduennとのアンビエント作品から「音の鳴り」を人一倍大切にしているアーティストだと思っていたけど、このBetsu No Jikanはまた一歩前進しているというか、「鋭い」鳴りをしていると感じた。そして、アヴァンギャルドなのか、アンビエントなのか、ポップスなのか、非常に曖昧な立ち位置にあるこの音楽は一体なんなんだ?というのが感想です。

songwhip

32. Dale Cornish / Traditional Music of South London

The Death of Rave / UK

このタイトルにて、バキバキに尖ったミニマル・エクスペリメンタル・テクノを鳴らしててヤバい。空白地帯でインダストリアルな変則パーカッションが乱れて弾ける様はなかなかすごい。かと思ったらアコースティックな音色で呪いをぶつけるかのようにブツブツと歌い始める小品トラックまであるから始末が悪い。なんとなくJoy Orbisonとか王道UKベースミュージックっぽいのを期待して軽く手に取ったら結構違ってビックリした。良い意味で予想を裏切られたアルバム。

songwhip

31. Earl Sweatshirt / SICK!

Tan Cressida / USA

傑作「Some Rap Songs」ほどの革新性はないわけだが、アブストラクトなトラックにEarlの抑制されたラップが載せられればそれは魔法がかかったかのように魅惑的な香りを放つわけで、全10曲24分というランニングタイムとあいまって気づくと再生回数を重ねていた。コロナ禍とその混沌をテーマとした本作では、Odd Future時代のヤンチャさや「Doris」のころのひたすら内向きだった彼自身とは異なり、批判的な目は健在ながらも地に足をつけ、外に目を向けている様が感じ取れる。こんな混沌のご時世に父親になったEarlはM5 "Vision"の最後で「子供たちを幸せにするためには真実を伝え、自分自身であることに誇りを感じてもらう必要がある」とサンプリングしており、どこか感慨深い。

過去の感想記事

songwhip

30-21

30. ゆうらん船 / MY REVOLUTION

O.O.C Records / Japan

一曲一曲というよりもアルバムトータルとして何度も何度も繰り返し聴くことで、味わい深いコクが出てくるようなアルバムだ。彼らのデビュー作も素晴らしかったが、このセカンドではバンドサウンドに厚みが増し、楽曲のバラエティも増えた。彼ら自身は踊れる音楽からの影響を受けたようで、Arcade Fire、Talking Heads、LCD Soundsystemあたりを意識するだけでなく、安室ちゃんや宇多田ヒカルあたりもよく聴いてたらしい。例えばシンセと細かいビートが中心のM7 "Hurt"やクラウトロックっぽいM8"Headphone2"、シンセと四つ打ちでダンサブルなM9 "Hurry Up!"なんかにはその辺りの影響が垣間見える。ただ、そのような要素を彼らの基本スタイルであるフォークロックサウンドに溶け込ませるのが本当に上手で、アルバムとして聴いても全く違和感がない。その他の実験的なトラックも然りだ。前作の時から感じていたが、改めてゆうらん船は日本のWilcoだと思った。

songwhip

29. Mary Sue / Kisses of Life

Bandcampで知った(はず)シンガポールのラッパーのアルバム。1-2分のトラックを矢継ぎ早に繋げていくのは最近のアブストヒップホップのマナーに則ってる形で、ラップはEarl Sweatshirt、トラックの質感はMF DOOMのオルターエゴであるKing Geedorah「Take Me to Your Leader」に近いなという印象で、Lawでジャジーなトラックがとにかく極上。要するに嫌いになる要素が皆無ということになります。

過去の感想記事

songwhip

28. 七尾旅人 / Long Voyage

SPACE SHOWER MUSIC / Japan

ダイヤモンドプリンセス号から始まった喧騒から未だに抜け出せない日本。SNSではマクス着用、ワクチン接種の是非について喧々諤々と不毛なやり取りが続けられている。七尾旅人の本作はそんな2022年の日本を克明に描写しつつも、一方では時代を超えて語り継がれるようなマスターピースになっていると思う。伝統的なフォークのフォーマットにジャズ、ニューオーリンズ的エッセンスやストリングスを活用、実にタイムレスで芳醇な音楽になっているとともに、ポエトリーリーディングや普遍的な歌の形で堪能できる七尾旅人の圧倒的な表現力。一つ一つの楽曲はシンプルで、それだけで完結しているように感じるけど、それらを繋げて壮大なSF作品のように仕上げてしまう彼の能力には舌を巻く。そして、いつだって七尾旅人は市井の人々を描いてきたし、いつだって僕らの味方というところが、まぁやっぱりグッときてしまう。

songwhip

27. Kode9 / Escapology

Hyperdub / UK

ダブステップの先駆者であり、超重要レーベルHyperdubの主宰であるKode9による7年ぶり4作目はなかなかに奇妙で掴みどころがない、だけど惹かれてしまう、そんなアルバムになった。ジャングル、フットワーク、グリッチ、ノイズ、スペーシー、フューチャーといった断片がぐちゃっと組み合わされては霧散していく、都会的で未来的で退廃的な音楽。もはやアートの域に昇華された作品である。とはいっても、その根底にはクラブミュージックが常にあり、肝となるのはベース音。ベースのリズム、音色、一つ一つがかなり凝っていて、その音だけ追っていても楽しい。ちなみに英国崩壊という架空のコンピューターゲームのサントラという位置付けらしい。

songwhip

26. Florist / Florist

Double Double Whammy / USA

洋楽女性SSWアルバムの中で、今年最も刺さったのはFloristでした。全19曲1時間弱と結構長めなので最初はあまりだったんだけど、秋頃から急速に自分のフィーリングともマッチしてきた。シンセによる幽玄なアンビエンスとフィールドレコーディングで採用されている虫の鳴き声とかの雰囲気があまりに夏〜秋の季節に合いすぎた。Floristの穏やかさと孤独を内包する歌声と決して大仰ではない優しいメロディが、繰り返し聴くことで確かに自分の中に浸透していく感覚があった。そういう感覚って名盤が持ちうる稀有な特性だよね。小品インストと歌ものが交互に収録されているアルバムの構成も良いし、基本的には控えめだけど時に熱いものを聴かせてくれるバンドサウンドも良い。

songwhip

25. Beyonce / RENAISSANCE

Parkwood Entertainment / USA

ハウスを中心にディスコやダンスホールなどダンスミュージックを基調としたBeyonce流ポップスは、メインストリームを毛嫌いするような斜に構えたリスナーも黙らせるくらいのパワフルさと説得力を持っている。本来、こんな「強い」音楽よりはアブストラクトな音楽を好む自分だけど、Beyonceみたいな巨大なポップスターがここまでダンスミュージックを取り上げて、音楽を前に進めていることには素直に感服です。ステイホームで溜まった鬱憤を晴らすかの如く、ダンスする喜び、解放の喜びで満ち溢れている。そして、ディスコやハウスは元々ゲイコミュニティの音楽だし、このアルバムも歴代のダンスミュージックとその仲間達、そしてクイアコミュニティへの敬意を感じる。いや、素晴らしい。

あと、今年個人的に一番聴いたKelman DulanがM1でクレジットされてるのでブチ上げでしたね。

songwhip

24. Raum / Daughter

Yellow Electric / USA

GrouperことLiz HarrisとJefre Cantu-LedesmaによるRaumの素晴らしいアンビエント。今年前半によく聴いていたアルバムだけど、年間ベスト選定に際して改めて聴き返しても、優しさと厳しさが同居するかのようなサウンドスケープはやっぱり圧巻だった。なんですかね、涙が出るほど美しいんですよ。息を呑むとはこのことか・・・というか。序盤の陽光に包まれるように穏やかでエモい展開も、20分にも及ぶ最後の曲の荒野に投げ出されるような雰囲気もどっちも素晴らしい。

過去の感想記事

songwhip

23. Huerco S. / Plonk

Incienso / USA

West Mineral Ltd.の主宰として、またHuerco S.やPendant名義など、自身のソロワークスの数々により、10年代中盤あたりからアンビエント界の中心人物として猛威を奮っているBrian Leeds。今作はHuerco S.名義での4作目であるが、これまでの彼のシグネチャー的な覆い尽くすようなダブアンビエントから離れ、ミニマルなリズムに特化したアルバムになっている。もちろん、ダブアンビエント的な残響効果はそこかしこに見られるが基本的にはクリアな音像となっており、また90年代や2000年代初期のIDMやエレクトロニカ作品のようなパーカッシブなリスニングテクノの方面にアプローチしたのはとても興味深い。

というか、Brian Leedsも中々の仕事人だよね。Huerco S.作品だけでなく彼関連のアルバムがことごとく素晴らしいので、今後も最大限に追っていきたいアーティストである。

過去の感想記事

songwhip

22. Billy Woods / Aethiopes

Backwoodz Studioz / USA

今年大好評だったのがArmand Hammerの片割れ、Billy Woodsかと。自分は今作には最初あまりノレてなかったんだけど、徐々にこのアヴァンギャルドでスピリチュアルな雰囲気のアルバムに惹かれていった。同郷DJ Preservation作の古今東西の音楽からガラクタを拾い集めて再構築したかのようなトラックがまぁヤバい煙たく、呪術的で、アングラ臭がプンプンする。既存のヒップホップのビートからあえて外れていくような、そんな意図を感じる内容だ。M12 "Remorseless"の哀愁漂うフルートの音色とか出色の出来。また、Billy Woodsの吐き捨てるようなフロウもカッコいいんだよな・・・革命家みたいで。Billy Woodsはもう一枚アルバムをリリースしているけど、そちらもアブストラクトではあるがよりヒップホップ的な内容だった。甲乙つけ難かったけど、より唯一無二なこちらを今回は選定。

songwhip

21. Carmen Villain / Only Love From Now On

Smalltown Supersound / Norway

ノルウェーの才女、Carmen Villainのアルバムもとても素晴らしく、年間通してよく聴いた。Huerco S.のアルバムと同時期にリリースされたし、内容的にもほの暗いアンビエントとミニマルでパーカッシブなリズムの組み合わせということで両者のアルバムには強いシンパシーを感じているんだけど、Carmen Villainのこのアルバムの方が管楽器を含む生楽器の音をより活用しており、第4世界的なエキゾチック感なんかは提唱者のJon Hassellっぽさを感じた。

過去の感想記事

songwhip

20-11

20. Nahi Mitti / Aisaund Sings

Mutualism / UK

マンチェスターを拠点とするトランスウーマンアーティストのNahi Mittiによるニューアルバム。マンチェスターの電子音楽シーンといえば、最近だとaya、Space Afrika、Anz、Air Max ‘97など、なかなか面白いアーティストが相互に影響を与えながら盛り上がってるが、Nahi Mittiも正しくその流れに乗っている印象。複雑でパーカッシブなリズムに太いベースを軸として、沈んだり浮き上がったり左に飛んだり右に飛んだりみたいな、枠にとらわれない自由で実験的なダンスミュージックがとっても刺激的。また、何回聴いてもどこか掴みきれない感覚があり、それゆえになかなかの再生回数を重ねることになった。分かるようで分からないってのも名盤の一つの条件よな。

songwhip

19. Tenka 天花 / Hydration 水分補給

Métron Records / UK

Tenka(天花)は「Lost Japanese Mood」をテーマに次々とマスターピースをリリースしてきたMeitei(冥丁)の別名義プロジェクトで、どうも特にテーマ性を持たずに音楽制作するプロジェクトであり、本作「Hydration」(水分補給)は「自然の循環や地球美を表現したもの」と本人がツイートしている。これらのワードを踏まえてこのアルバムに聴いたら、「水 (H2O)」が森、山、川、海、生物など地球のありとあらゆるものを巡っているイメージが浮かび上がってきた。また、自然に溶け込み一体になるということ、それを通じて自分の感覚に敏感になること、いわゆるマインドフルネス的な聴き方もできそうだななんて思う。
サウンドとしてはグリッチアンビエント的なものとの親和性を感じ、微細な音の一粒一粒を少しずつ変化させることで新たな表情を浮かび上がらせる手腕は流石の一言。冥丁作品のようなドラマチックさはないけど、隠しきれないメランコリアはやっぱり冥丁のセンスが出ていると思う。

songwhip

18. Alvvays / Blue Rev

Polyvinyl Record Company / USA

カナダはトロントのインディーギターポップバンドAlvvaysの3rdアルバム。M1 "Pharmacist"のアウトロの疾走感とギャンギャン鳴るギターのエモさからしてやられた…。このノスタルジックで甘酸っぱいシューゲイザー/ドリームポップからは、ジザメリが、スミスが、そしてペインズが思い起こされる。音楽性だけで考えると目新しいことは何もないが、得てしてこういう音楽にこそ人を惹きつけてやまない魔法がかかるもので、突き抜け感が半端ない。それにしても、自分も高順位に置いておいてなんだけど、このアルバムがこんなに各メディアから高評価だとは思わなかった。

songwhip

17. 優河 / 言葉のない夜に

JET SET / Japan

大前提として、岡田拓郎はじめとした魔法バンド面々によるこのオルタナアンビエントフォークなバンドサウンドが素晴らし過ぎて、もうそれだけで傑作認定していいレベルなんだけど、それだけでなく優河の存在感が圧倒的なんだよな。彼女の歌声ですよ。伸びやかで透き通るような歌声なんだけど、芯がしっかりしているので、言葉がパーンとダイレクトに響いてくる。稀有な才能の持ち主なのではないでしょうか。「言葉のない夜に」というタイトルも最高。

過去の感想記事

songwhip

16. ゆるふわギャング / Gama

YRFW_LTD / Japan

ゆるふわ〜。どこかハイパーポップとかクラウドラップ味が増したラッパーのRyugo IshidaとNENE、加えてプロデューサーのAutomaticによるユニット、ゆるふわギャングの新譜が最高。傑作「Mars Ice Home」に負けず劣らず、個人的にはキャリアハイにしちゃっても良いです。全19曲とかなりボリューミーでバラエティ豊かなんだけど、まったく冗長に聴こえないのはなぜだろうか。これまでの集大成かのようにビートもラップもフックもキャッチーで完璧で、スペーシー/トリッピー/サイケデリックともはやヒップホップの枠組みを超えて聴くことができる。もう全部良いんだけど特に好きなのはM2"Beatles"、宇多田ヒカルOne Last KissサンプリングのM5"Moeru"、割と真っ当なM7"Package"、鎮座が客演してるイケイケなM12"Madras Night Part2"、M16"Too High"からラストM19"Tomodachi"の流れです。

songwhip

15. Steffi / The Red Hunter

Candy Mountain / Portugal

今年の硬派テクノアルバムNo.1は、ドイツ・ベルリンのアングラテクノレーベルOstgut Tonとの繋がりでもお馴染みのSteffiによる4thアルバムで、ベルリンからポルトガルに移住して立ち上げた彼女の新レーベルCandy Mountainからの初リリースとなる記念すべき作品。まず、IDMやブレイクビーツ、エレクトロのエッセンスを未来的な形で再構築したようなセンスがめちゃめちゃカッコいい。また、過去作はもっとハウス寄りのシンプルなダンスミュージックを鳴らす印象だったが、今作は重いビートの上で細かいビートが複雑に絡んでおり、かなりリズムに凝った作りになっている。一方で、楽曲の根幹となる腹まで響く攻撃的なビートはリスナーの身体を揺らすには十分すぎるくらいの威力を誇っており、世界的にも有名なベルリンのクラブであるPANORAMA BARでレジデントを務める彼女のダンスミュージックへの矜持を感じる。

songwhip

14. Arctic Monkeys / The Car

Domino / UK

自分にとって特別中の特別であるArctic Monkeysが変化を恐れず、常に進化しているのが嬉しい。1st, 2ndの勢いを期待する勢の気持ちも分からなくはないが、やはりその期待はお門違いかなと。Humbug〜AM〜Tranquilityの流れをしっかりと発展させ、またLast Shadow Puppetsでの経験も活かされていることが、このアルバムを聴けばしっかりとわかる。前作もアホほど聴いたけど、今作はギターが復活、またストリングスの使い方が上品になり、バランスの取れた楽曲が並ぶ。何よりアレックスのボーカル表現の進歩が目覚ましい。元々ソングライティングは間違いなかったわけで、そこにこれだけ深みを増しセクシーさに磨きをかけたボーカルが加われば鬼に金棒。リリース前から先行曲を聴いてフランク・シナトラっぽいな〜と思っていたけど、目指している方向性は多分そっちのクラシック方面。ゴッド・ファーザーとか、モリコーネとかそういった時代の映画音楽っぽさも。

songwhip

13. Denzel Curry / Melt My Eyez See Your Future

Loma Vista / USA

過去作も含めてDenzel Curryのアルバムはよく聴いた2022年。黒澤明や座頭市などの日本カルチャーにもインスパイアされ、日本語で「目が溶ける 未来を目指せ」という日本語の副題?がつけられた本作は「固定観念に縛られることなく(嫌なニュース等から逃げず)、自分を見つめ直してより良い世界を目指すこと」という思いが込められている。ということで、結構雰囲気はシリアスで内省的だ。トラップ、ブーンバップにジャズやドラムンベースなどをハイブリッドし、多彩なフロウが積み重なった音世界からは、まさに過去から未来まで見つめまくったDenzel Curryの真摯さを感じた

過去の感想記事

songwhip

12. Kali Malone / Living Torch

Portraits GRM / France

これは素晴らしいドローンミュージック。パイプオルガン奏者としても知られるスウェーデン・ストックホルムベースのKali Maloneが作り出す世界観はEliane RadiqueやPaulin Oliverosのそれに近いタイムレス作品。全2曲、34分と前作の「The Sacrificial Code」の3枚組1時間49分と比較したら圧倒的にコンパクトな作品で、トロンボーン、バスクラリネット、シンセをミニマルに、繊細に組み合わせた教会音響ドローンってのが基本。ただし、一曲目から二曲目に行くにつれ徐々にノイズを孕んで暴力的になっていく様がとてもエキサイティングで、最初は瞑想的に聴けるのに最後の方は心を乱されてとても瞑想的に聴くことができなくなるのがたまらない。

songwhip

11. Lucrecia Dalt / ¡Ay!

Rvng Intl. / USA

大半の音楽をTwitter経由で仕入れるのでいつもいつもフォロイーの方々には頭が上がらないのだが、これも「ありがとうございます…!!」とガッツリ頭を下げたくなるような1枚でした。コロンビア出身/ベルリン拠点の実験音楽家らしい。テーマは「地球外生命体であるプレタが地球にやってきて、時間、身体、愛といった地球上の概念に初めて直面する物語」らしいが、歌詞が分からないのでどうにも分からない。また、彼女の幼少期に接した音楽であるボレロ、マンボ、サルサ、メレンゲ要素が入っていると言われるが、無知故に正直ピンとこない。ただ、不可思議な音世界が広がっているのは十二分にわかる。ラテン系なんだろうなとは思うのだが、自分のイメージする陽気なラテンではなくホラー/ダウンテンポで、深淵から響き渡るような世界観が非常に独創的だ。エフェクトかかったボーカルと不協和音をあえて含んだような生楽器のサウンドが電子的に処理され、おどろおどろしい響きを携えてアルバム全体の空気感を作り上げる。過去作とは作風が全然違うらしいが、過去作にも俄然興味が湧いてきた。

songwhip

10-1

10. masafumi sato / 群像

このジャケットがまず素晴らしい。ある夏の日を思わせるような鮮やかなブルーと、純白な猫の対比。最高に爽やかで犬派の自分も思わずうっとり、にっこりである。今年のベストアルバムジャケットである。そして、程よくノイズが混じるアンビエントが凄まじく好み。シューゲイザーまではいかないけど、泡のように一粒一粒がきめ細かく煌めくノイズまじりのサウンドスケープがあまりにも気持ち良すぎて最高of最高の逸品でした。

過去の感想記事

songwhip

9. Oren Ambarchi / Shebang

Drag City / USA

M1のイントロからミニマルで緻密なギターの優しいメロディに唸らされ、そこに途中からベースが入ってくる瞬間で一気に肌が粟立つ。ポストロック〜ジャズを横断するように複雑なリズムを刻むドラムの音によって、気づくと太ももを揺らしてしまう。鋭いシンセのスイープ音が曲にうねりをもたらし、キラリとしたピアノと12弦ギターが滑るように耳から耳に駆け込んでくる。インプロビゼーション然としたこの音楽作品だが、Oren Ambarchiには様々な楽器が緻密に融合したこの完成形の絵が見えていたのだろうか。聴いていると胸の奥から熱いものが込み上がってくる。これがグルーヴ・・・これがグルーヴなのだよ・・・!!!

songwhip

8. OMSB / Alone

Summit / Japan

歌いまくるOMSBはどこか新鮮で、それでもタイトに決まってるのが良い。低くて野太い声質が良いのかもしれない。オートチューン使いは流行りに目配せしてる感があるなとも思ったり。30代になり成熟し、また背負うものを持つことで自身が変わったことを表現する様は、C.O.S.AやKendrick Lamarの今年のアルバムとも共振するものを感じる。人生の次のステージに足を踏み入れたというか。あとパンチラインが本当に多いんだよな。M1から「俺がこのサンプルをいじってループした時/きっと俺にずっとついてまわる曲だと確信した」とかいきなり痺れる。文字通りトラックもちょっとシューゲ入っててかっこいい。自身の過去から現在の普通の生活を普通に肯定するリリック満載のM6"大衆"はやっぱり刺さる。"Lastbboyomsb"の 「よおBboy!HipHopの話をしようぜ」からのヒップホップ遍歴披露とかもグッときてしまう。サンプリングループやフックのメロディもバランス良くて聴きやすく、何度も何度も聴いてしまうアルバム。クラシック。

songwhip

7. Sam Prekop and John McEntire / Sons Of

Thrill Jockey / USA

素晴らしいの一言。ポストロックの巨匠である、The Sea and CakeのSam Prekop及びTortoiseのJohn McEntire(The Sea and Cakeのメンバーも兼ねる)による非常〜〜〜〜に洗練された電子音楽作品。四つ打ちが基本のアルバムになるが、キックの質感やウワモノの浮遊感をはじめ全ての音のバランスが完璧で、有機的に絡み合う様はもう圧巻である。これだけ洗練された音なので、一から細かいところまでサウンドを作っているのかと思いきや、基本的には即興ライブ音源がベースになっているというのだからなお驚いた。90年代音響ポストロックの一時代を築いた二人の技術の粋が詰まっているというか、それらの活動で培ってきたものが血肉と化しており、本作品にも自然とその洗練されたサウンドがアウトプットされている。細かいサウンドに注目して聴いても興味深いし、特に集中して聴かなくてもただただ気持ちがいい。

songwhip

6. Big Thief / Dragon New Warm Mountain I Believe In You

4AD / UK

騒がれるのもわかるクオリティ。Big Thiefはこれまであまり聴いてこなかったんだけど(それは単に彼らのアルバムリリース時期に自分がインディーロックを聴く気分ではなかったから)これは参りましたね。アトモスフィリックなサウンドデザインの中でギター、ベース、ドラム、そしてエイドリアンのボーカルが有機的に絡み合い、非常に立体的な作品に仕上がってるなと思う。また、フォーク/カントリー/ロカビリー的な要素がBig Thiefのもつ素朴さを際立たせ、エイドリアンの精霊的なボーカルとも完璧にマッチしている。これを聴いてると「アメリカってでかい国だよな〜。懐深いな〜。」なんて思ってしまうんだよね。ライブに行けなかったのは悔やまれる。

過去の感想記事

songwhip

5. Nas / King's Disease III

Mass Appeal / USA

Nasかっけえ!!!Hit-Boyとのタッグ最高!!!(語彙力)

いや、でもしょうがないでしょう。かっこよくて最高なんだから。AOTYのユーザースコアもかなりの高評価。King's Diseaseシリーズ(+Magic)は4作全てが大当たり、特に今作はその中でもピカイチということで、未だにNasは健在ということを証明している(というか完全復活と言った方がいいのかな?)。90年代に大活躍して未だにこのクオリティのラップを聴かせるラッパーって他にいないし、Nasはずっと変わらずに己の技一つでひたすら勝負しているところがマジでカッコいい。今作はフィーチャリング無しだけど全く飽きない。それくらいHit-Boyのビートスイッチが光るブーンバップトラックとNasのフロウの相性が良い。時代を代表する音楽ではないと思うけど、タイムレスな輝きを放つ傑作だと思う。

songwhip

4. Whatever The Weather / Whatever The Weather

Ghostly International / USA

Loraine James名義のアルバムも超絶良かったけど、個人的にはどちらかというとこちらのアルバムに軍配。全ての曲に摂氏温度が割り振られていること、「Whatever The Weather」というアーティスト名/アルバムタイトルから、やはり天候や気候のことを思いながら聴くことが多い。実際に、陽気な季節からピリッと肌寒い季節まで、天候がくるくる変わるように、このアルバムの曲群も一本筋を通しながらも様々な質感を感じさせてくれる。そして、7:3くらいの割合でアンビエントとビートが割り振られているのが最高に今年の気分に合っていて、リリース以降ずっと聴き続けている。

過去の感想記事

songwhip

3.  宇多田ヒカル / BADモード

Epic / USA

振り返ると一番繰り返し聴いたのはこのアルバムだった。既出曲が多い中でこんなに聴くとは思わなかったし、聞いたということは自分にとって大切なアルバムだったということだ。正直リリース時の興奮度はSNSの喧騒も合間って個人的に一番だった。Floating Pointsの参加はめちゃめちゃ大きかったしその他にも語るに値するトピックがたくさんあると思うが、とにかく"Somewhere Near Marseillesーマルセイユ辺りー"が今年のベストトラックにしてもいいくらい好きということは伝えておこう(Pitchforkのランキングに選ばれるとは!)。

過去の感想記事

songwhip

2. Marco Zenker / Channel Balance

Ilian Tape / Germany

Skee Mask作品をリリースしているドイツIlian Tapeの主宰であるZenker Brothersの片割れであるMarco Zenkerのデビューアルバム。M1 "Introduction dub"から勝利を確信してしまった。いわゆるダビエント(ダブ×アンビエント)な音像をベースに、ドラムン、ブレイクビーツ、ハードテクノが縦横無尽に駆け巡る。また、M3 "Wave Mode"のようなグシャッとしたノイズと泡の中間のような独特のサウンドには心を鷲掴みにされてしまう。Skee Mask大好きマンとしてはこの音に争う術は持っていないのである。2018年の「Compro」と並んで確実にIlian Tapeを代表する作品であり、レーベルの持つ哲学のようなものが如実に表現された傑作だと思う。

bandcamp

1. Kendrick Lamar / Mr. Morale & The Big Steppers

pgLang / USA
Top Dawg Entertainment / USA
etc

賛否両論あったが、自分にとってはこれまでのケンドリックのアルバムの中で最も身近に感じた。1人の人間として、パートナーとして、親として、苦悩を吐露しまくるケンドリック。最もカニエの登場以降?はヒップホップにおいても去勢を張るのではなく、弱い自分を曝け出す方向に進んできたわけで(ケンドリック自身のこれまでの作品もそう)、そういう意味では特別新しいわけではないが、ケンドリックの表現力は文学的な意味でも素晴らしいなと思うし、何より本作は音が超絶良い。結局自分にとっては音が好みでしかも良い鳴りをしていることが圧倒的に重要なファクターなんだと思う。

過去の感想記事

songwhip


正直、一位にケンドリックを持ってくることに(順当すぎて)抵抗があったんだけど、どうにも他の順位は収まりが悪いし、かなりの回数を聴いたことは確かだし、自分にとっての大切な一枚になったことには変わりないしということで、これを私の年間ベストとします。まぁあくまでこの順位も暫定なんだろうなというのは歴史が証明していて、来年1月、2月になれば聴き逃しアルバムの中からヤバい名盤に出会うことは間違いない・・・。

今年は人生で一番音楽を聴いていたかもしれないが、来年はおそらく今年の1/5くらいしか聴けなくなると思う。なので、ミニマリストじゃないけど、もう少し取捨選択して少数精鋭に絞った聴き方を模索したいところ。大量スクリーニング、からの少数精鋭アルバムに深く入り込むようなイメージで。ただ、それだとどうしてもスルメ的アルバムを漏らすから悩ましいんだよな〜。単なる一リスナーとして、どのような聴き方がその時の自分に合っているのか、一生模索は続く。(完)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?