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最近のお気に入り:テーマなし②

基本的に適当にテーマを決めてアルバム感想を綴っていった方がまとめやすいし、後から見やすいと思って、これまで主に「2021年リリース作」「ヒップホップ」「アンビエント/ニューエイジ」「電子音楽」と書いてきたんですが(まだ量は少ないけど‥)、もちろんそれらの音楽ばかりを聴いてるわけではございません。上記に当てはまらないものといえば、ロック、ポップス、ジャズなどがありますね。ということで、たまには何のテーマも設けず、適当にここ6〜9月あたりでよく聴いてた、取り上げてないアルバムをピックアップするのもやりたいなと思います(一応前にも1回やってる↓)。マイナーなアルバムは聴いていないので悪しからず。

Antônio Carlos Jobim / Wave (1967)

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ちょっと前になるがブラジル音楽に1 mmたりとも触れてこなかった人生に「非英語圏ベストアルバムランキング」という転機が訪れた。以来、ランキングで大人気だったブラジル発のアルバムにも少しずつ触れている。巷では超有名/大名盤扱いされている本作も全くこれまで通ってなかったんだけど、今では無事(?)お気に入りの一枚になった。素人の感想だけど、抜群に音が良いと思う。何か抜け感が違うというか、一体これはどういうことだろう。ブラジル音楽は全般的に音が良いと感じるんだけどこれは更に上を行っていると思うし、イージーリスニングっぽい人畜無害感がどことなく物足りないかと思いきや、簡単には素通りできない質の高さを感じる。さすがボサノヴァの父とか呼ばれてるだけありますね・・。ポップで親しみやすいメロディといい、温かみがありかつ清涼感のある演奏といい、まどろみたい休日にピッタリの音楽。これは名盤。

Margo Guryan / Take a Picture (1968)

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Margo Guryanはニューヨークのシンガーソングライターで、両親がピアニスト、大学でジャズやクラシックを学び、Max RoachやBill Evansに憧れを抱いていたというように音楽エリート的な側面を持ちながらも、The Beach Boys「God Only Knows」に衝撃を受け、ポップミュージックに目覚めたらしい。この「Take a Picture」は彼女の唯一のオリジナルアルバムで、その界隈では超有名、ソフトロック、サイケロックの名盤として親しまれている。(僕は今年初めて知りましたが)

まず、彼女のハスキー/ウィスパーボイスが何よりも魅力的で、渋味の中にエレガントな雰囲気を醸し出している感じが最高。特に彼女の声の良さを実感するのは、ミディアムバラードみたいなスローテンポのサイケポップソングだと思う。ここ10年くらいのドリームポップにもつながるようなテイストの楽曲は今聴いても全く古くない。そして、The DoorsやThe Velvet Undergroundを彷彿とさせるアヴァンギャルドでフリージャズ的な即興感のある楽曲も素晴らしく、その辺のバランスがとても優れていて非常に好みです。M1「Sunday Morning」とかまさにヴェルヴェッツを思い起こさせるしね。

Novos Baianos / Acabou Chorare (1972)

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ロック&MPBバンドNovos Baianosのセカンド。ロック好きでブラジル音楽にちょっと苦手意識がある(少し前の自分だ)リスナーにとっての入門に最適なのでは。ブラジルっぽい陽気なサンバ、上品なボサノヴァとサイケロックがこの上ないほど上手にブレンドされていて、これはまさにブラジリアンロックって感じ。別に特殊なわけではないけどボサノヴァの優雅さ、ロックの生々しさが入り混じったギターの音色がとにかく好きだ。同時期の欧米のサイケロックとは一線を画す内容で最高。

福居良 / Scenary (1976)

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本作は北海道のジャズピアニストである福居良のデビュー作優しく美しいピアノの旋律と、スウィングするアップテンポの楽曲が楽しめるアルバムで、ジャズの心得を全く分かっていない自分でも心躍る瞬間がたくさんある。M1、M3などはハイテンポなスウィングジャズで、まさにウキウキ、ブギウギな感じで音楽を演る悦びに溢れている。一方で、しっとりとピアノを聴かせるバーカウンターに似合う曲なM2もとても素晴らしい。M6などはアルバムの締めにぴったりな大人な曲で、マッカランでも傾けながら美女と並んで聴きたくなる。ちなみに、本作は海外でも評価が高い。AOTYでは281のRatingで驚異のScore 86だし、Rate Your Musicでも3.74と高得点だ。70年代後半といえばフュージョンジャズが猛威を奮っていた時代なんだと思うけど、日本という辺境の地で王道とも言えるスタンダードなジャズアルバムが作られ、それが海外で受け入れられていると思うと、小学生並みの表現だけど素直に凄いなと思う。

最近はブームが去ったけど、一時期ジグソーパズルにハマった期間があったんですよ。その時はBGMとしてよくジャズをかけていて、中でもこの福居良のアルバムはヘビーローテーションしていた。

The Walker Brothers / Nite Flights (1978)

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ウォーカー3兄弟(実際には兄弟じゃないけど)がそれぞれ曲を書き、歌った曲を集めた彼らのラストアルバム。最重要人物であるScott WalkerはM1-M4作曲、M5-6はドラムのGary Walker作曲、M7-10はギターのJohn Walker作曲となっている。後半の少し野性味あるJohn Walkerの曲も悪くないけど、やはり聴きどころはScott Walker作曲の最初の4曲で、Scottの激渋ボイスとストリングス、電子音楽の組み合わせが、やはりというべきか、妙にマッチしている。時代の流れとしてポストパンク、ニューウェーブに突入している背景も影響しただろう、なかなか先鋭的なサウンドでもあり、元々はアイドルグループ的だった(らしい)彼らのイメージを良い意味で裏切った名盤と言えるのではないだろうか(このアルバム以外を聴いたことがないので適当です)。元々Scott Walkerを知ったのはArctic MonkeysのアレックスがLast Shadow Pappetsの影響源に挙げていたからだったのだが、当時の自分に彼のソロ作は少し高尚すぎた。最近になって少しずつ彼の初期のソロ作も聴き返しており、ようやくその良さが分かるようになってきた気がする。近年〜逝去するまではアヴァンギャルド方面に舵を切っていたようで、そっちもちゃんと聴きたい。いや、それにしてもScott Walkerの歌声はそれだけで稀有な響きを持つね。これはまさに才能。David Bowieが憧れ、彼の「Nite Frights」をカバーするのもわかる。

Penguin Cafe Orchestra / Penguin Cafe Orchestra (1981)

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一聴して「ceroじゃん!!うひょー!!」となった、cero大好きマンです。ceroの1stに収録される「exotic penguin night」がこのアルバムのM4「Cutting Branches for a Temporary Shelter」からきていたのを全く知らなかったので感動。そもそもタイトルにペンギンってしっかり入ってるじゃんって話なんだけど。

基本的にはポップさを追求した音楽で、パッと聴いたら聴きやすいしとてもオシャレなのでカフェとかにも似合いそう。ただし、よくよく聴いてみると相当に実験的な精神が宿った内容で、ペットサウンズの意思を継いでるなと思う。このアルバムを聴いているとceroもそうだけど、2000年代以降のチェンバーポップ勢(Sufjan Stevens、Grizzly Bear、Fleet Foxes、Father John Mistyとかその辺)を思い出すので、Penguin Cafe Orchestraがこの辺の原点(とまでは言い過ぎだけど)にいたのか、なんて思う。一方で、ライヒのようなミニマルミュージック的な要素もあるので、テクノや環境音楽好きにも響きそう

要は大好きな要素が詰まってるってことです。

Piper / Sunshine Kiz (1984)

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夏の日差し、ビーチパラソル、海、川、山・・・そんな光景とは100億光年離れた現代社会の日差しの入らない一室でこのアルバムをかけて、この文章を書いている。僕らの夏休みはどこにいってしまったんだろうか・・まさか2年連続で引きこもりの夏を過ごすことになるとは思わなかった。せめてプールくらい入りたかった。そんな世の中で、自分はこのアルバムを聴いて今年の夏を過ごした。まさに夏っぽい、日差しがサンサンと降り注ぐプールのジャケットによるご機嫌なシティポップ集は2021年夏の逃避アルバムにピッタリだった。

元々Kankyo Ongakuコンピで有名なLight In the Atticレコードが再発していたことで知り、未だに背景はよくわかっていないんだけど、村田和人バンドのギタリストである山本圭右が率いるバンドらしい。とにかくM4「Hidin' in Your Shelter」が好きでね。腰にくるベース、どことなくブルージーなギターフレーズ、ライトメロウな歌メロと、もう最高。ドライブしながら流してもハマると思う(特に夏のドライブには)。最近別のアルバム(タモリがジャケ写を撮ったらしい)もサブスク解禁されてたので、そっちも聴きます。

R.E.M. / Lifes Rich Pageant (1986)

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大御所バンドR.E.M.の4枚目。R.E.M.はいくつかアルバムを聴いては「うん、結構好きだな〜。以上」くらいの温度感で終わっていて、そこまで深くのめり込んだことは正直無かったんだけど、これはマジで良いぞ。「結構好きだな〜」から「うおおお、めっちゃ良いやんけ・・!」くらいの熱量にはレベルアップした。思えばR.E.M.との出会いは「Nightswimming」で、大人で渋い名曲を聴かせる人たちという刷り込みが強かったんだけど、後から聴いた「Murmur」や「Reckoning」で大分印象が変わり、自分の中ではこの作品で決定打です。晴れて大好きなバンドに昇格しました。
マイケル・スタイプの渋くてスケールの大きいボーカルに惑わされがちだが、このアルバムを聴いてると「R.E.M.の本質ってギターポップだよな」なんて思う。初期のパンキッシュな楽曲から徐々に角が取れ、絶妙な塩梅なギタポになってるのが本作の強みじゃないだろうか。すごくちょうどいい。聴く時期によって当然聴きたい音楽の好みって変動するけど、これはいつでも気持ちよく聴けそうに思う。

FLIPPER'S GUITAR / Three Cheers for Our Side (1989)

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フリッパーズのデビュー作。なぜかこれだけ聴いてなかった・・・。いや〜瑞々しくて良いですね。当時イギリスで流行していたネオアコを大胆に引用して、かつ全編英語歌詞というスノッブさ!これぞ、フリッパーズ!でもシンプルに曲が良い。メロディが良い。キャッチーで耳に残る。ドライブ時とかにかけたら最高で、思わず一緒に口ずさんじゃうね。まあ、コーネリアスやオザケンのソロ作を先に聴いて、フリッパーズについては完全後追いなので、あまり自分が彼らの背景とかについて言うことはないんだけど(そもそも詳しくないし)、ここから始まったのか〜という感慨深さみたいなものはあるな。やっぱり若さって武器だよ。

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年間ベストの時期が近づいてきたというのに旧譜の感想記事がどんどん溜まっているのだが・・・時間・体力・根気・・・・プリーズ!

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