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ヒップホップ名盤を聴く④

ヒップホップ初心者が定期的にヒップホップの名盤を聴いてはその感想を綴る「ヒップホップ名盤を聴く」シリーズ第4弾行きます。

過去のやつはここにまとめてます↓

Ultramagnetic MC's / Critical Beatdown (1988)

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80年代オールドスクールヒップホップはドタドタビートと、シンプルすぎるトラックに正直苦手意識を持っていて今でも十分に拭えているわけではないんだけど、ブロンクスの4人組、Ultramagnetic MC'sのデビュー作はかなり聴ける。もちろん基本はオールドスクールなんだけど何となく90年台の香りもする内容で特に後半の曲は好み。特に感じるのはビートが”強い”ということ。一つ一つのスネア、キックがダイナミックに躍動していてかなりのエネルギーを放っている。そしてKool Keith(Dr.Octagonは彼のソロ名義でガイコツのジャケのやつが名盤扱いされてるね。今は未聴だけどいつか聴く)の圧倒的な存在感ね。かっこいいビートとキレキレのラップさえあればもう無敵ということを証明するような内容で、これが名盤扱いされているのも頷いてしまう。

Redman / Whut? Thee Album (1992)

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EPMDの3rdアルバムに10代で参加しレコードデビューしたRedmanの満を辞しての1stアルバム。90年代という時代を定義するかのようなハードファンクヒップホップで、まさにクラシックな内容。Parliament、James Brown、The Meters・・・と大ネタ使いまくりのキマリまくりで最高だ。いや〜、P -FUNKサンプリングはやっぱりアガるな〜。Ice Cubeの諸作と並べても全く見劣りしないファンキーさで、Redmanの鼻にかかったラップも終始勢いがあり、ファンキーさに拍車をかける。ヒップホップアルバムとしても、ファンクアルバムとしても素晴らしいです。これはRedmanの他のアルバムも聴かなくては・・。

Scarface / The Diary (1994)

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テキサス・ヒューストンからGeto Boysのメンバー、Scarfaceによる3枚目のソロアルバムは、サザンラップとG-Funkの融合という形容詞がピッタリの、ウェッサイブリブリなギャングスタラップで渋カッコいい。Scarfaceのフロウとデリバリーは基本ゆったり、どっしりしており、それがこのイナたいG-Funkサウンドと上手くフィットしている印象。同じ南部出身のOutkastの早口ライミングと比較するとえらい違いだ。サウンド的にはM10「Hand of the Dead Boy」、M11「MInd Playin' Tricks 94」(Geto Boysのカバー)、M12「The Diary」の流れが特に最高。また、代表曲M6「I Seen a Man Die」は、刑務所を出た若い男がより良い生活を求めながらも結局犯罪に巻き込まれ死ぬ様を描写しており、ストリートの厳しい現実を説得力を持って突きつけてくる名曲。

Jeru the Damaja / The Sun Rises in the East (1994)

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全然名前を知らなかったんだけど、このアルバムはヒップホップ名盤として必ず名前に上がるJeru the Damajaによる傑作デビュー作。Jeru the Damajaはブルックリン出身ラッパーで、Gang StarrのFoundationの一員としてのデビューということもあり、プロデュースはDJ Premire。ということで、当然の如く鉄板中の鉄板な内容になっている。強めのキック、あえて微妙に外した絶妙なウワモノ、タフなライミング‥パーフェクトです。人気曲M11「Come Clean (E New Y Radio)」とかめちゃシンプルなビート+謎のマリンバ?水が滴る?みたいな音+ライミングのみでこの存在感。ランニングタイムが40分ってのもリピートしやすくて良い。この辺の時期のブーンバップ最高すぎるだろ。

Big L / Lifestylez ov da Poor & Dangerous (1995)

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D.I.T.C.クルーに所属していたBig Lが弱冠21歳でリリースしたアルバム。これもクラシックの風格が漂いまくっている。Big Lのラップはエミネムほどではないが甲高い声をしており、切れ味が鋭くパンチが効いている。ビートもまさに90年代ブーンバップで思わず足腰頭が動いちゃう。特に好きなのは最初の3曲とM8、M10あたり。なお、Big Lは99年に兄がしたことの腹いせか何かで銃殺されているとのことで、2Pacやビギーといい、なんだかなぁな話だ。生きてたらあとどれだけの作品を残してくれていただろうかと思うと本当にもったいない。

Three 6 Mafia / Mystic Stylez (1995)

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三連フロウの祖といえばThree 6 Mafiaみたいな言説をどこかで見たことがある。そう思うと三連フロウが溢れかえっている現代こそ、改めて見直されるべき存在なのかもしれない。Three 6 Mafiaはメンフィスのラップグループで暴力、殺人、ドラッグからオカルトまでをモチーフにした過激なリリックからはサウスのN.W.A.とも称される。このデビューアルバムの印象としては「なんて不穏でどす黒いトラックだ・・」てなところで、もう完全にホラーの域だ。実際にホラーコアなんてジャンル付けまでされていたりする。プロデュースは中心人物であるDJ PaulとJuicy Jによって全てされており、アルバム通じてその世界観は非常に統一されている。ラップの方はLord Infamousの三連フロウはなかなか印象的で、また紅一点Gangsta Booによるラップも良いアクセントになってるなと思う。

Pharoahe Monch / Internal Affairs (1999)

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ニューヨークのレジェンドデュオOrganaized Konfusion(名前は知ってるけど未聴・・)の片割れであるPharoahe MonchのRawkus Recordsからのデビュー盤。まずはなんといってもM5「Simon Says」でしょう。ゴジラをサンプリングしたサウンドはかなり強烈。これはヒットするのも納得で、普通のトラックではない。他のトラックもなかなか粒揃いで、アルケミストプロデュースのM8「No Mercy」、Diamond Dによる割とポップなM11「The Ass」、上品なループが印象的でまさにクラシックな佇まいのM12「The Light」、Common&Talib Kweliとの共演が最高なM14 「The Truth」等と隙がない。こういうアンダーグラウンドなヒップホップは大好物。

Reflection Eternal / Train of Thought (2000)

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ラッパーTalib KweliとプロデューサーHi-Tekによるデュオ、Reflection Eternalの2002年デビュー作。Talib Kweliといえば、Mos DefとのBlack Starで大名盤をリリースしているわけだけど、彼自身に疑いようのない才能があることはこのアルバムを聴けば分かる。高音で独特な声質を持ち、短い間にいくつもの音節を自由自在に詰め込める、唯一無二のラッパーだ。また、Hi-TekによるR&B、ジャズベースの柔剛どちらもいけるトラックがまた素晴らしい。シングル曲であるM4「The Blast」では哀愁漂うディープなジャズトラックに、Talib Kweliの軽やかで早口なフローが乗っかるかなりかっこいい曲で、しかも最後にGil Scott-Heroneがちょっと客演しているのは驚いた。また、M5「This Means You」では盟友Mos Defとの完璧な共演を楽しむことができ、さらにM15「Soul Rebels」ではDe La Soulとの共演ということでギターがうまい具合にフィーチャーされたこれまたダイナミックで堪らない曲もある。そしてラストM21「For Women」(Apple MusicではM20の隠しトラック扱い)はNina Simon「Four Women」のカバーで激ドープな名曲。これはクオリティ高い名盤だと思う。

Cunninlynguists / A Piece of Strange (2006) 

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Cunninlynguistsの傑作3rdアルバム。Cunninlynguistsって多分下ネタからきてる造語で読み方がよくわからん(カニンリングイスツ?)。アトランタ出身の00年代アンダーグラウンドヒップホップの雄で、Rate Your Music等にてかなり評価が高い。で、実際に聴いてみると、もう大好きなやつでジャジー、メロウ、ダークなトラックが本当に絶品。インタールードも複数収録されてるんだけどそれですら完璧で、トータルでOutkastの「ATLiens」をさらに進化させたようなトラックだなと思う(ベタ褒め)。そんな素晴らしいトラックと比較するとラップの方はちょっとサラッと流れてしまう気はするけどそんなのカンケーない。この素晴らしいトラックに身を浸しているだけで大満足できるのだ。フェイバリットはM11「The Gates」

Big K.R.I.T. / 4eva Is a Mighty Long Time (2017)

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8枚目のアルバムの本作は2枚組。1枚目はラッパーBig K.R.I.T.の視点から、2枚目は一市民であるJustin Scott(本名)の視点からのアルバムらしい。Big K.R.I.T.はミシシッピ出身のラップもプロデュースもどちらもできちゃうラッパーでコンシャスラッパーに括られる。基本はサウスっぽいブルージーさとソウルフルなラップの組み合わせで、フロウはテクニカルで淀みなくスムース、そしてフックはキャッチーでやたら耳に残るという「そりゃみんな大好きだよな」な内容がとても好印象。もちろん、トレンドのトラップビートも取り入れており全く抜かりはない。前作などはあまり客演はなかったようだが、今作では積極的にコラボしており、あまりヒップホップに詳しくない自分でも目を引くのがDisc 1のM3の客演にサウスレジェンドT.I.、M6のプロデュースにOutkastで有名なOrganaized Noise、Disc 2のM10にBilalやRobert Glasperが客演し、Kendrick LamarのTPABに参加していたTerace Martinがプロデュースしてる点、あたりかな。かなり幅のある豊かなサウンドはこれら客演の影響はでかそうで、この辺のチョイスなんかはBig K.R.I.T.のセンスの良さを感じる。かなり良い作品で気づいたらリピートしちゃう系統のアルバムだ。


けっこう久しぶりのヒップホップ名盤を聴くシリーズになってしまった‥この記事たぶん最初に手をつけたの3ヶ月くらい前だわ。完全に放置してました。とりあえず今回はここまでです。

知れば知るほどヒップホップというジャンルの深さを感じ取れるようになってきて楽しい反面、そろそろキャパオーバー気味になってきたかもしれない。もう2、3ヶ月くらいは新しいアルバムを聴こうと思うが、そこから年末までは今年の復習期間に当てた方がいい気もしてきた(というか最近は気分的にヒップホップよりもロック、ポップ、エレクトロニックの方の割合が増えてきた)。

それでも、このシリーズは僕がッ 嫌になるまで 書くのをやめないッ!以上!

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