Dubのお勉強 番外編 ダブ入門〜自分が聴いてきた、ダブに影響を受けた音楽たち〜
少し前、日本ではダブ入門なる本が発売されたらしい。めっちゃ欲しい。誰か送ってください。
目次だけ見ると、ルーツレゲエ、UKダブだけでなく、そこから派生したダンスミュージックなどにもかなり言及がありそうで、ますます欲しいなと思った。表紙のアルバムジャケットにも自分が好きなアルバムがいくつも載っている(Kruder & Dorfmeisterがここに載るか!Simon & GarfunkelオマージュジャケのEP好き)。
そう思うと、そもそもダブ要素を含んだ音楽自体は、これまで結構聴いてきたはずであり、その辺りについて適当に整理してみるのもちょっと面白いかもと思い、番外編として自分自身がダブというものを意識するまで、すなわちダブに影響を受けた音楽について簡単に整理しようと思う。
正直、本記事は日記の延長線みたいなものなので、大したことは書いてない(いつもそうじゃん)。一方で、なんか書いといたら誰かの参考になるかもしれないなと思って書いてます。あまり期待はしないでください。
そして、繰り返しですが、今回の記事にいわゆるルーツレゲエ、ダブ作品は一切出てきませんのであしからず!
1. ロック/ポップス
最初のダブとの邂逅は、間違いなくフィッシュマンズ「空中キャンプ」で、M1 "ずっと前"のベースが自分にとってのダブの原体験。当時ダブという単語すら1 mmも知らなかったので、「なんか変だけどかっこいい腹の底に響くベースだ!」というファーストインプレッション以上の感想はずっと言語化できなかった。ただ、「腹の底に響く」というのはダブというものを確かに感じていたんだろうなと思い、それこそフィッシュマンズがダブを自分のものにしていた証拠なんじゃないかなと思う。
(ちなみにフィッシュマンズについては過去にこんな記事を書いてるので、興味があればぜひ。)
あとはThe Clash「Sandinista」ですね。ただ、これは当時の自分にはまだ早かった・・・。LP3枚組で余裕で2時間を超えるボリュームと、パンク、レゲエ、ダブ、ロカビリー、R&B・・・と雑食性の極みとも言える膨大な参照点に面食らってしまい、ちょっと聴いた後は放置、結局「London Calling」ばかりを聴くことに。改めて今このアルバムを振り返ると確かに本格的なダブだし、刺激的なことをやっていたことに気づくんだけどね・・。当時の時点でこれを理解するには自分の修行が足りなすぎた。
他にはPop GroupやPILも外せないだろう。ただ、それらについては今では楽しめるようになったが当時は本当に理解できず、タンスではなくPCライブラリの肥やしになっていたので割愛・・・。
というわけでこの段階ではあくまでダブとの「邂逅」、空中キャンプを聴いたからといって直接ダブやレゲエを聴きに行ったわけではなく、また、「Sandinista」の良さにはなかなか気づけなかったことから、ダブをきちんと聴くのはずっと先になる。
2. トリップホップ
全てのロックリスナーは、名盤リストに必ず載ってくるPortisheadとMassive Attackの作品は避けて通ってはきていないんじゃないだろうか。自分も当然のように必須科目として通ってきており、とりあえず両者のアルバムはそんなに作品の数も多くないしだいたい聴きました。個人的な好みとしてはPortisheadであれば「Third」、Massive Attackであればやっぱり「Blue Lines」が好きかなと思いきや、最近「Protection」の株が強烈に上がっている。トリップホップというジャンル自体に惹かれたかというとそうでもないけど、聴いた中のいくつかはとても好印象を持ったし、強烈な重低音は今思えば間違いなくダブからの影響が強いと言えると思う。もっと言えば、<On-U Sound>の存在がどう考えても大きい。Adrian Sherwoodによる冷たく洗練されたダブがトリップホップだけでなくその他のジャンルにも多大な影響を与えたのはもう揺るぎない事実だ。また、<On-U>文脈でも語れるジャマイカのレゲエシンガーHorace AndyはMassive Attake作品でいくつもボーカルをとっていたり(セルフカバーもあるし)、やはりダブ、レゲエとの親和性が高ったのは間違いない。もちろん、これらのことは最近ちゃんと理解したので、当時そんなことを知っていたかというと全く知らなかったんだけど。
にしてもBeth Gibbonsの最新作は良かったね。
3. ダブステップ
フィッシュマンズらの次に「ダブ」というワードに出会ったのはたぶんBurial「Untrue」。Archangelの衝撃といったらなかった。自分がダンスミュージックに手を出すきっかけにもなったし、これを機にKode 9やSkreamといったダブステップの大御所の作品も聴いた。その中でもBurialは抜けていたし圧倒的だったと思う。大雑把にダブステップは2ステップをベースにエコーやリバーブといった音響処理を施した音楽と言われるが、今思うと「それこそがダブそのものじゃん!」という感じだ。だからダブステップなのねと。
そして、2000年代後半からポストダブステップと呼ばれる新世代のアーティストが登場してくるわけで、James BlakeやMount Kimbie、SBTRKT、The xxなどの素晴らしい作品が登場してくるわけです(一方で、ブロステップと呼ばれるSkrillexを代表とするより攻撃的なジャンルにも派生したけど、こちらは全く聴いてないです)。ちなみに、Mount Kimbieの今年のリリースした完全なるインディロックなアルバムはいい意味でかなり驚いた。良い音鳴らしてるよ。
4. ダブテクノ
ダブテクノといえば、Moritz Von OswaldとMark Ernestusがドイツで匿名で始めたBasic Channel(ベーチャン)であり、彼らが主宰していた<Chain Reaction>レーベル発の音楽ですね。ストイックなビートに霞がかったサウンドスケープを組み合わせたミニマルテクノはシーンに衝撃を与えたらしい。後追いの自分もそのストイックさにガツンとやられた口である。
Basic Channelの二人がよりレゲエの嗜好を反映させたRhythm & Soundもなかなかに衝撃で、こちらの方がよりルーツ・レゲエ、ダブをそのまま踏襲した音楽と言える。深淵・・・。
で、先日記事に書いたとおり、Basic ChannelはUSのレゲエレーベル<Wackie's>の再発仕事に関わっており、<Wackie's>の音楽からは彼らの音楽性のルーツの一部を理解できる。
<Chain Reaction>といえばVladislav DelayやMonolake、Fluxion、Porter Ricks、Shinichi Atobeなども素晴らしいですね。
Basic Channelが蒔いた種をアメリカのデトロイトに持ち帰ってひたすら熟成させ続けているのがRod Modell(Deepchord)であり、<Echospare>レーベルである。代表作である「Liumin」の、まるで宇宙のように広がりのあるダブテクノは眉唾もの。日本でのフィールドレコーディングが使われてるのもの何だか親しみやすい。
2010年代以降のレーベルであれば、UKの<Modern Love>もダブテクノとしては重要。Andy Stott、Demdike Stareは本当に素晴らしい。
5. ダブ×アンビエント
最近だとダブ処理されたアンビエントが非常に多く見受けられるようになっている。その中心はHuerco S.だと勝手に思っていて(最近、当の本人の興味は違う方向に行っている気はする)、昨年以下のような記事を書いた。上述のダブテクノの上澄みを救ってきてグツグツ煮込んだようなサウンドだと自分の中では解釈している。
特にダブアンビエントど真ん中だなと思うのが、Huerco S.改めてPendantのこれ。上記の記事にも書いてるけどガチ名盤。
あと最近また聴き直してて改めて傑作だなと思ったのが、Space Afrika。ダブアンビエント的音響感覚と今っぽい編集センスでの絶妙なコラージュ、マンチェスター行ったことないけど深夜のマンチェスターの路地が浮かび上がってくるかのような音楽性は痺れるね。
ダブアンビエント的な音響とブレイクビーツを組み合わせた傑作をリリースしまくっているのがドイツZenker Brothersによる<Ilian Tape>。自分はダブアンビエントよりも先にこのレーベルのSkee Maskによる「Compro」にすこぶる衝撃を受けた。オールタイムベストの一つとして一生聴き続けるであろう稀有な傑作。
そしてHuerco S.の変名Loidisの新譜、極上のローファイハウス作品だったから聴くんだ。今すぐ。
ぶっちゃけ、ダブテクノとダブアンビエントな音楽が好きでして、これらのアルバムをとりあえず載っけたいがために本記事を書いたみたいなところがあります。こうやって過去を振り返って整理するのも結構楽しい。
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