寓話
あるところに、神さまがいました。
この神さまはとても自分勝手で、ごうまんでした。
人間は生きていくために水が必要なのに、
神さまは意地悪なので、水を落としませんでした。
いったん、水を落としたと思ったら、
それは地面が飲み干せないほどたくさんで、
人間たちは、おぼれてしまいそうになりました。
神さまはたまに、地面をこちょこちょしたので、
地面はくすぐったくて、体をねじらせました。
けれど、地面のいる人間たちにとっては困りごとです。
すみかはぐじゃぐじゃに荒れはててしまい、
地面が浮かんでいたプールからは、どどどど水があふれました。
あまりにも神さまが自分勝手なので、
人間たちは話し合いを始めました。
「神さまがいるせいで本当に大変だ。」
「どうにも神さまは、人間の気持ちを考えられないんだ。」
「神さまがいなければ、I(アイ)たちはこんな思いをしなくていいんだ。」
「そうだ、We(ウィー)自身を守るために、神さまをやっつけよう!」
「そうしよう!そうしよう!」
こうして人間たちは一致団結して、
神さまをやっつける準備を始めました。
神さまは自分をやっつけようと、
向かってくる人間たちを見つけました。
しかし神さまは、何もやり返しませんでした。
そうして神さまは人間たちによって、
やっつけられてしまいました。
人間たちは神さまがいなくなったので、
これで大変な生活から解放される、と思いました。
けれど、生活は変わりませんでした。
干ばつは起こりました。
洪水も起こりました。
地震と津波も起こりました。
今までずっと神さまのせいだと思っていたことは、
実は全くそうではありませんでした。
神さまは人間が、理由を探そうとするいきものであることを
知っていました。
全ての現象が不条理に現出してしまうと、
人間は耐えられないいきものだったので、
神さまは自分を犠牲にして、
自然災害を神さまのせいに思わせていたのです。
ですが、今や神さまはいません。
神さまは死んでしまいました。
殺したのは、人間です。
だから、人間は今も、神さまのかわりを探しています。
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