眠気を誘うひとこと

私は高校生になるまで毎日が埋まるほど、たくさんの習い事をしていた。

体操、バレエ、水泳、ダンス、合唱。

そして、一番最初に始めた習い事がピアノである。

幼稚園の年長時に母の知り合いのピアノの先生に習うことになった。

中学校1年生の終わりまで習っていたので、約8年ほど。

しかし、悲しいほどにさっぱり上手くならなかった。

バイエルがやっと終わって、ブルクミュラーの教則本に入ったくらいで辞めてしまった。

人にもよるらしいが、それでも通常の倍以上の時間がかかっていた。


ピアノのレッスンは、レッスン時だけではなく事前に課題が出され、家で練習をしなければならなかった。

だが、私にはそれがどうしてもできなかったのである。

「ピアノの練習をしなさい」

と母に言われると

なぜか眠くなってしまって、いつのまにかピアノのそばにあったソファーで寝てしまうのだ。

だから全然練習しないままピアノのレッスンに行くということを繰り返していた。

当然練習をしていないので、前回から何の成長もなく課題は弾けないままだ。

今思うとそう安くはない月謝を払ってもらっていたのに、もったいないことをしたなと思う。

しかし普段母に

「勉強をしなさい」

と言われたことがない私は、どうしてピアノの練習だけはするように言っていたのかずっと気になっていた。

のちに母に聞いてみると

「そう言うとお昼寝するからよ」

と言われた。

母は私の性格を充分理解した上であえてそう言っていたようである。

この件については、母の方が一枚上手であった。


音楽を聴くのは好きなんですけどね。

自分で弾こうとすると眠くなる。

困ったものである。

自分で弾けたらいつだって生演奏が聴けるのに、

と思うことがあるが、“弾く”と“聴く”とじゃまた違う感覚なのだろうか。

自分で弾きながら聴き入っているのか、はたまた演奏することに忠実な気持ちになっているのか。

人によりますかね。

ということで、

私はこれからも誰かが奏でる音楽をありがたく享受したいと思います。

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