母の明るさ

父は数年前からある病気を患い、家からほとんど出なくなっていた。

外出は主に通院の時だけ。

そんな父が半年ほど前、しっしんや、あざが身体中に広がり、目にまで症状がでるという謎の病に冒された。

最初は様子を見ていたようだが、それが広がっていくにつれ恐れを覚え、母と病院に行ったのだが、何が原因かがわからない。

いろんな診療科を受診するも原因不明のまま。

1ヶ月以上病名が分からなかったので、父の誕生日の日に検査のための手術をすると連絡があり、
そこで初めてそのことを知った私はとても驚いたし、不安になった。

しかし、ここで母の明るさに助けられることとなった。

家族のグループLINEに送られた父の手術を知らせる文面が、ハートとリンゴの絵文字で締めくくられていたのだ。

LINEやメールは当たり前だが文字で伝えることを目的としているので、
空気感が伝わりにくく、ともすれば冷たい印象になったり、実際とは違ったように受け取られることも多いだろう。

だからそんな母の(おそらく)心遣いに、重苦しい気持ちが少し軽くなった。

そして母に電話した時のこと。

病の原因を調べるために、頻繁に外出するようになった父の姿を見た周りの人が、

『お父さんが外に出ることが減ったから、
近所の人が「旦那さんを見なくなったけど元気?」って心配していたみたいなんだけど、
最近よく外に出かけるを見かけるから「旦那さん元気になったんですか〜?」って聞かれたの。
病気になったのに逆に元気になったのかって聞かれちゃうなんてね〜♪(うふふ)』

と明るく楽しそうに話していた。

父の話をする母はいつも楽しそうである。

つづく。

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