初めての一人暮らしと両親の愛情に気付いた話
半年ほど前に引っ越しをした。
12年間住んでいた地を離れた。
12年間住んではいたが、残念ながらその家にはあまり思い入れはない。
しかし引っ越し当初の記憶は今でも鮮明に覚えているので、それを残しておこうと思う。
12年前にその家に引っ越すまでは勤めていた会社の寮に入っていたので、
会社を辞めると共に、その寮から去らなければならなくなった。
次の仕事は決まっていなかったが、
せっかく東京に来たのだから東京で一人暮らしをしたい
という思いだけはあった。
(それまでは居候と、寮生活のみ)
引っ越しの予定がなくても物件を見るのが好きという人もいるが、
私は物件探しが大の苦手である。
そして東京に住めるならどこでもいいやと割と軽率に考えていたので、
友人が見つけてくれた物件を紹介している仲介会社に行き、
そこが提案してくれた3軒の中からその日のうちに決めてしまった。
そして最後の仕事が12月30日に終わり、引っ越し日の猶予は12月31日の1日だけ。
バタバタとしながらも、大晦日に引っ越し作業を行い、新しい家に着いたのがお昼過ぎごろであった。
新居に着いてしばらくして外に散策に行き、暗くなって帰宅したときに問題は起きた。
明かりをつけようと電気のスイッチを入れるが反応がない。。
スイッチの音がぱちんぱちんと虚しく鳴るだけである。
おかしいなと思い、上を見上げると本来明るさをくれるはずのシーリングライトそのものがなかったのである。
そう、それまで一人暮らしをしたことがなかった私は、シーリングライトは元から備え付けられているものだと思っていたのだ。
最初は真っ暗な部屋に呆然としたが、引っ越し初日のハプニングにじわじわと一人で面白くなってしまった。
カーテンもまだ買っていなかったので、外から家の中が丸見えにならないようにカーテンレールにシーツを掛けて取り繕った。
そんな中で救世主のような存在のデスクライトの明かりを頼りに、紅白歌合戦を見ながらお蕎麦を食べ(カップ麺)、年を越すというなんとも奇妙な体験をした。
これから初めての一人暮らしにワクワクとした新生活の希望を見るかと思いきや、初日から一人真っ暗な部屋で年を越すという状態にあった自分を客観的に考えると、面白い話だな〜と思い、笑い話くらいにはなるかなぁと軽く考えていた。
次の日、新年の挨拶をするために両親に電話を掛けた。
そこで母にちらっと
「いやー家に帰ってきたら電気がなくてさ、真っ暗な中で年越ししたんだよね」
と昨日起こった話をすると
「大丈夫なの?!明日お父さんを東京に送るから必要なもの全部一緒に買ってもらいなさい。」
とものすごく心配されてしまい、私は動揺した。
そして本当に次の日父が東京にやって来たのである。
笑い話として話そうとしてたのに、母の予想もしていなかった反応に驚き、
それまで色々あって私はあまり両親に愛されていないんだと(勝手に)思っていたので、わざわざ次の日に駆けつけてくれた父の姿に、
初めて、
あれ、私って二人に愛されているのかも
と思った瞬間であった。
その時の衝撃は今でも忘れない。
まぁそうとはいってもそれからもしばらくの間ひねくれてたんですけどね。
そこから10年以上経ってやっと素直にそう思えるようになりました。