140字では語りつくせぬ映画愛 第6回「セブン」渋谷の映画バーで聞いた考察
こんにちは。
つい先日「僕映画が好きなんですよ~」と言っている方がいたので一番最近映画館で観た映画を尋ねたところ、しれっと「ファンタスティック・ビーストです」と言われました。ええ、面白かったですよね。私も2回も観に行ってしまいました。
ただ「ファンタスティック・ビースト」は昨年11月公開の映画です。
心の中で「もっと深みに引きずりこんであげなければ」と強く決心した沖津でした。
ところで皆さん「八月の鯨」というバーをご存知ですか?そう、BAR。
びー、えぃ、あーぅ、BAR。
渋谷のセンター街にあるバーなのですが、普通のバーとは少し趣を異にしています。
いや、しかし、まぁ、その雰囲気たるや非常にお洒落です。お洒落に疎い私にも「これがお洒落というやつだな」と一目でわかりました。
ところが外観も内装もカッコよく、それこそ映画に登場しそうなものの、パッと見た感じは特に変わったところはなさそうです。そう、変わっているのはそのメニュー・・・
「フォレストガンプ」「羊たちの沈黙」「卒業」に「カッコーの巣の上で」・・・んん?見覚えありまくりなメニューたち
そうなんですよ~~~。全部映画のタイトルなんですよ~~~。実はこのお店映画をイメージしたオリジナルカクテルを出してくれる映画ファン垂涎のバーなんですよ~~~。ちなみに店名の「八月の鯨」も映画のタイトル。名作。
上記以外にも「風の谷のナウシカ」や「時をかける少女」「プラダを着た悪魔」など、誰でも知っている人気作品のカクテルもたくさんありました。
さらにはメニューにない作品も頼めば作ってくれるので誰でも楽しめるかと思います。
隣の人たちが「アベンジャーズ」たのんでフルーツ山盛りのバカでかいのが来てました。
お洒落だし渋谷だし独特だし都心の学校に通ってらっしゃる男子大学生なんかは気になる女の子でも連れて行けばいいんじゃないですか。そんで得意気に「アナ雪にはラプンツェルも出てるんだぜ」とか誰でも知ってるような映画知識披露したらいいじゃないですか。
都心学生への僻みはさておいて。マスターはもちろん他のバーテンダーの方々も映画に精通しており、私もお店の方との会話がとても楽しく盛り上がってしまいました。普段お酒苦手なんですがその時は好きな映画の味が気になってそこそこ飲みました。
さてそんな沖津のおすすめカクテルは・・・
どん。これ。
「セブン」です。飲みやすくて美味しかった。恐らく女性にオススメ。
ブラッド・ピット主演、モーガン・フリーマン共演のサスペンススリラー。
監督はサスペンスを作らせたら右に出る者はいない、かのデヴィッド・フィンチャー。
退職まで残り1週間となったベテラン刑事サマセットのもとに新人のミルズが配属されます。
↑左ミルズ。右サマセット
そんな矢先通常では考えられない手段で行われる凄惨な殺人事件が連続、サマセットとミルズの2人が捜査を開始します。
やがてサマセット刑事はこの奇妙な連続殺人がキリスト教の「七つの大罪」をモチーフに行われていることに気が付くのです。
銃を突き付けられ、内臓が破裂するまで食べさせ続けられた肥満の男は「大食いの罪」
ちょうど1ポンド分の肉を2日にかけて切り取られた弁護士は「強欲の罪」
ベッドに縛り付けられ一年をかけて徐々に衰弱させられた前科者は「怠惰の罪」
でそれぞれ殺されていました。
2人の刑事は犯人に肉薄しますがいま一歩のところで捕まえられず、その動機や正体は一向にわかりません。
↑凄惨な現場、捜査する2人
また2人は私生活も順調とは言い切れません。舞台となる町は治安がいいとは言えない危険な場所らしく、ミルズの妻は日中家で一人でいるしかなかく、この町に転属になったことに良い感情を抱いてはいません。
サマセットはそんなミルズの妻に「子供を身ごもったがこの町で育てる自信はなく、中絶を考えている。ミルズには言い出せないでいる。」と相談されます。
↑グイネス・パルトロウ演じるミルズ嫁。美人
そんな折、さらに2件の殺人が発生。被害者は「色欲の罪」「傲慢の罪」でそれぞれ殺害されました。
事態はこのあたりで急展開。「嫉妬の罪」と「憤怒の罪」の残り2件を残して犯人がこともあろうか自首してくるのです。
そして自首してきた過去の経歴一切不明の男はミルズとサマセットを同伴に自分をある場所へ輸送させるのですが・・・
↑自首してきた男。顔隠しておきました。
残るふたつの殺人は達成されるのか、ターゲットは誰なのか。
衝撃的という言葉では言い表し切れないラストがこの映画最大の魅力であり、見どころになります。
そんじょそこらのありがちなどんでん返しとはワケがちがいます。。。
と、こんな映画が「八月の鯨」の女性にオススメのメニューというのもどうなんだって感じですが、甘くて飲みやすかったんだもの。今冷静に考えると逆に怖い。。。
ほかのカクテルも美味しいものばかり。映画に興味なくても単にお酒とお店の雰囲気を味わえると思いますので是非行ってみてください。
その時は沖津を誘ってください。
~第1部終了~
さて第2部ですが、「セブン」に関して面白い考察をバーテンの方から伺いまして、それが面白かったのでまとめておきます。
以下盛大にもほどがあるネタバレ。
観てから読むことをオススメします。観てから読んだら面白さ倍増間違いなし。
まずこの映画観終わったらほとんどの方が疑問に感じると思うんですけど、七つの大罪に基づく殺人は完了していませんよね。
3番目の犠牲者「怠惰の罪」は先は長くないでしょうが、厳密には死んでいません。また、「憤怒の罪」であるミルズ刑事にも裁きは下らないまま映画は終わります。
あれほど用意周到な殺人を長い年月をかけて計画した犯人がこんなミスを犯すのでしょうか。ミルズを生かしたままにしたことには、あるいは意味がないとも言い切れませんが、すくなくとも「怠惰の罪」に関してはホントに意味不明。
と、ここでバーテンさんの推理が光ります。
犯人は自らを「嫉妬の罪」としてミルズに殺させるため、ミルズの奥さんを ” 嫉妬に駆られて ” 殺害しましたが、実はこの殺人こそ真の「怠惰の罪に対する裁き」だったのではないか。というのです。
なるほど・・・
ミルズ刑事の奥さんは妊娠を夫に告げませんでした。お腹の子供は二人の子供です。奥さんはミルズ刑事にきちんと報告する「べき」だったかもしれません。妻として。母親として。
その「責務」を ” 怠った ” と言えるのではないでしょうか。なにしろ怠惰=SLOTHには「先延ばし」や「現実逃避」といった意味もあるそうですから。
「怠惰の罪」への裁きはミルズ刑事の奥さんの死を以て完了した。。。
これなら「怠惰の罪」が死ななかった事はクリアできそうです。
では「憤怒の罪」に仕立て上げられたミルズ刑事は何故死なずに生きているのでしょうか。私は最初、ミルズはあの後自殺したのだろうと漠然と考えていまた。奥さんを殺され、自分も人を殺したとなれば可能性はあります。
しかしどうにも腑には落ちない。自殺は確定はしていませんから。そんな不確定要素を計画の内に入れているのはどうも納得できません。
と、ここでバーテンさんの推理が光ります。
皆さん、お気づきでしょうか。「憤怒の罪」であるミルズが死んでいないにも関わらず、今回の事件ではきちんと7人の人間がその命を絶たれています。
肥満(大食い)、弁護士(強欲)、娼婦(色欲)、モデル(傲慢)、犯人(嫉妬)、ミルズ嫁(怠惰)、そして・・・
そうです,,,お腹の子供です。
キリスト教では誰かの子供が生贄に選ばれたり、罪咎を受けるような話がいくつかあります。
神はアブラハムに息子であるイサクを生贄にささげろと命令し、信仰を試しました。また、イエス・キリストは父なる神の子供です。イエスは全人類を代表して十字架に架けられ、処刑されました。
「憤怒の罪」に対する死の贖いはミルズ刑事の妻に宿った子供の死を以て身代わりとされ、完了したのではないか、というのがバーテンさんの推理です。
なるほど~~~~。筋は通っている気がします。今のところ一番納得できる考察です。
みなさんはどう考えますか?
この映画は上記の謎以外にも、犯人の動機やサマセットの最後のセリフなど様々な謎や意味に溢れていて、考察のしがいがあります。
この記事を読んだ皆さんの意見や考察お待ちしております。